Jinsen's パイプ

パイプタバコの製造 -2

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 イギリスにタバコ喫煙が始まるのは1560年頃、船乗りが伝えたが、1580年頃には広く社会に浸透した。当時のタバコはスペインから輸入され、これは30センチほどの長さのローブタバコ、砂糖、ラム、モラレスなどでたっぷり味つけされたうえに色づけもされていたという。その後1607年にバージニアに植民、タバコ栽培に成功し、初めての"バージニア葉"がロンドンにつくのは1614年だがこちらは乾燥した葉を樽詰めにしていた。以後ロンドン子はスペイン物に見切りをつけ、バージニア葉の流行となる。

 17世紀。イギリスでタバコ産業がまたたくまに成長する。パイプ製造とパイプタバコ製造である。パイプ(当時はクレイパイプ)は前世紀までは手作りだが17世紀には型どりで量産された。1619年のロンドンには62軒のパイプ製造会社があり、パイプタバコを扱う店は7000軒を数えたと記録される。

 樽詰めのバージニア葉は初めは喫煙者が自分で刻んでパイプに詰めた。しかしまもなく販売業者が手をくわえた。パイプ用に裁断した葉はルーズカットと呼ばれ、葉脈は砕かれて嗅ぎタバコに、また一部は加熱圧縮してケーキ状にし、あるいはこれを撚ってロープタバコとした。ルーズカットのパイプタバコを入れるために喫煙者はタバコボックスを必需品とし、これは主にオランダ製で真鍮や銀で精緻な細工を凝らした。

 しかしやがてイギリスタバコの伝統製法となるのはバージニア葉を加熱圧縮してケーキ状にしたものだった。葉を裁断しただけのルーズカットと違い、バージニア葉は加熱圧縮することで味と風味がますし、ケーキ状なら保存・輸送にも適した。ケーキタバコは手頃な大きさにカットしてプラグと名づけて販売した。しかし大きなプラグはバーとも呼ばれ、これはタバコ店の店頭で顧客の好みの大きさに裁断して売り、そのためにプラグカッターという裁断機があった。
 イングリッシュケーキと呼ばれるこのイギリス伝統製法はバージニア葉の味と風味をますために加熱圧縮したものだが類似の製法にキャベンディッシュというのがある。たぶんかなりあとに普及し、オランダやデンマークが発祥地と思われるが、キャベンディッシュという名称は考案者のイギリス人、トーマス・キャベンディッシュ卿(1560-1592)の名にちなむとされる。1585年、リチャード・グレンヴィル卿のバージニア探検のときに彼は船長で、その帰路、タバコ葉を樽詰めする際、砂糖水に漬けたところこのタバコが旨いと評判になったという逸話が残る。しかしこの逸話はマユツバで、この航海の頃はまだバージニアにタバコが栽培されない探検時代だし、バージニア植民地からタバコ葉が船積みされる1614年には彼は世を去っている。百歩譲ってバージニア以外の寄港地でタバコ葉を樽詰めにしたとしてもすでにこの頃はスペイン人がタバコ葉を砂糖やラム酒に漬けて樽詰めしていた。これはぼくの想像だが、例によってイギリス人の貴族気質が我国の貴人の考案といわせたのではないかと、ちょっと微笑ましくなる。

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by jinsenspipes | 2010-05-25 21:30 | Comments(0)