パイプタバコの製造 -4
前世紀までのパイプタバコはプラグあるいはロープタバコである。イギリスのタバコ会社は新大陸から樽詰めできたタバコ葉を加熱圧縮してケーキ状にし、大きめに裁断した「バー」、あるいはこれを撚った「ロープ」タバコとして販売店に収めた。これは今日でいうバルク販売で、タバコ店の店頭では顧客の好みの分量にカットして売られた。当時のパイプ喫煙者はこのプラグやロープタバコにそれを刻むナイフ、また着火用に火打石と火口や付け木を必需品としたからずいぶん手間がかかった。
19世紀に様子は一変する。マッチが発明され、着火は楽になった。カッター機の改良でケーキを細かく裁断し、刻みタバコを作ることが可能となった。そもそもパイプタバコがイギリスに普及した17世紀には樽詰めのタバコはナタで刻まれ、シャグと名づけた刻みタバコを計量して販売していた。しかし18世紀には上に書いたようにケーキ状のブレスタバコが一般的になっていたから新製品の刻みタバコは歴史を逆戻りしたことになる。
刻みタバコの登場はタバコのパッケージ販売をうながした。刻みタバコはバルク販売でなく少量を缶に入れて売られた。さらにこの頃になるとタバコ葉のバラエティがふえた。これまでのタバコ葉はすべてバージニア葉で、ただ産地がバージニア、メリーランド、ケンタッキーあるいはブラジルなど異なるだけだったが19世紀になると新種のバーレー葉(とくにホワイトバーレー種)、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉などが輸入された。そして「ミクスチャー」があらわれる。異なるタバコ葉をミックスして味わいをますミクスチャーはそれまでは喫煙者が自分で調合したが、会社がこれに目をつけ、異種のタバコ葉をまぜて加熱圧縮したケーキを作り、これをカットして会社独自のミクスチャーとしてパッケージ販売し始めた。
ざっとこんなところだが、詳しい製造の現場はまた次回に。