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Jinsen's パイプ

ダンヒル: ロンドンミクスチャー

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 じつはこれ、初体験である。ダンヒルはつい965やフレークに手がでてしまいこれはやったことがなかった。
 早く吸ってればよかったと悔やまれるたばこである。
 社の説明では葉組はバージニア+ラタキア&トルコ葉でこれは965と似ている。喫味も似ていて、965を軽くしたイメージがある。ラッキーなことにたまたま965があったので比べてみた。缶をあけた香りは、965のほうがラタキア臭が強く、ロンドンミクスチャーはやや角がとれて丸い。吸い比べると、965はラタキアの香りが前面にきてそのバックボーンにバージニア・キャベンディッシュの甘みがひろがっている。ロンドンミクスチャーはラタキアが弱いかわりにキャベンディッシュでないストレートなバージニア葉が香るのだが、さて、ここに一つ問題がある。
 じつはぼくはここにベリクを感じてしまった。ペリクについては、社の説明にも、またネットの記事にも見当たらないが、海外のタバコレビューを読んでいたら少数だがペリクの存在を衝いた記載があった。やはりおずおずと「……感じてしまう」などと消極的だがしかし毅然として「オレは確信する」という態度を崩していない。むつかしいところである。世の通説を信じるべきか、自分の味覚を信じるべきか。いつも迷う。
 ロンドンミクスチャーは喩えてみると高音部にラタキアの香りがあり、中音部にバージニアがひろがり、低音部をペリクの甘酸っぱさが固めている。965も甘さはあるがこれはキャベンディッシュの甘さなのでややblur、つまり低音域が欠けるのだ。といってもこれは比較したときの話で、965は965の抜群のバランスがあるからこれで充分であるし、ラタキア物としての使命を果たしている。こちらロンドンミクスチャーはラタキアはやや弱くし、かわりにバージニアをペリクで補強して完璧な世界を構築している。いいたばこに出会った。
 ダンヒルたばこの現存するブレンドでもっとも古いのはロイヤルヨットで1912年に登場するがロンドンミクスチャーは1928年である。じつはこれはダンヒル社の廉価版たばことして発売され、同時に出たスタンダードミクスチャー(こちらはラタキアの含有度合いによりマイルド、ミディアム、フルの3種類があった)と並んで安価だった。イギリスの通貨はわかりにくいので当時のアメリカの価格をみると、ロンドンミクスチャーは1ポンド当り5ドル(1ポンドは450gだから50g缶8個以上になるネ)なのに歴史の古いロイヤルヨットは倍の10ドルもした(1920年代)。当時はダンヒル社が世界のトップブランドに躍りでる時期でもあり、もともとオーダーメイドの「マイミクスチャー」からスタートしたダンヒルが専門マイナー会社から普及品ビッグブランド会社に転換する際の目玉商品がこれだったのではないかと推測できる。廉価版とはいえ内容は充実し「ロンドン」と気負った命名もあってこれぞダンヒル!という自信満々の商品だったのだろう。
 ぼくとしてはダンヒル銘柄のなかではもっともバランスいい、中庸の素敵なたばこを発見できたと満足している。

by jinsenspipes | 2010-12-03 21:37 | ダンヒル