Jinsen's パイプ

マクレーランド: 2020 メイチャードケーキ ( McClelland: 2020 Matured Cake )

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 第三弾である。5100、2035でバージニアの単体を2種、堪能したのでこんどは伝統的イギリスブレンドに手をのばす。イギリスはごく近年までたばこの着香を抑止していた。そのかわり、バージニア葉に、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉をブレンドして味わいを広げた。これらの葉はイギリスたばこの着香剤だったのだ。
 とりあえずオリエント葉に目をつけ、マクレーランドのバルクのカタログからバージニア+オリエントの典型を探した。それが2020である。ぼくの読んだ同社の紹介文では、
「よく熟成したバージニア葉の甘さと味に、オリエント葉の独特の香りとやわらかさ、ゆたかさ、木の実風味をブレンドしました」
とある。
 やってみた。
 2020はブロークンフレークのようで2035ほど固くなくしなやかなので丸めて詰められた。火つきがやや悪い。やはり少し乾燥させたほうがいいかもしれない。
 火をつけると、ウウウ、これはまたとびきりやわらかい、ふっくらした味わいがきた。やや油っぽい、いわゆるオイリーという感じ。かなり強い酸味があり、茎茶のような独特の味わい、それにプラスして、英語だとearthyという形容詞があるが、春の野にでたときのかすかな土の匂い、そんな感じ。バージニア単体とはかなり違い、これがオリエント葉の味わいかと思う。そして、ああ、ラタキアが香るではないか。ふとこれもオリエント葉の属性かと思ったりしたが、じつはラタキア入りだったのだ。
 前に書いた2020の紹介文はある通販会社に載っていたものだが、別の通販会社を見るとまったく別の紹介文がのっていた。
「レモンバージニア葉とオレンジバージニア葉、それにオリエント葉のクサンチとラタキアをケーキに圧縮して熟成させ、このすばらしい、しかもヘヴィでない、特別やわらかく、滅多に味わえないゆたかなフレーバーをひきだしています」
 この2つの文章をくっつけて紹介文としているところもある。まあ、相反する内容でもないから、両方ありとして、やはりラタキアは入っていたのだ。
 この解説から改めて葉組を紹介すると、バージニア葉はいわゆるブライトリーフで2035と同等。オリエント葉はもっとも有名なクサンチ(Xanthi)葉で「たばこの女王」とされるもの。クサンチ葉はいまのギリシャ北部のイェニジェ(Yenidje)地方のものが最良といわれ例のバルカンソブラニーに使われていた。マクレーランドはバルカンソブラニーの再現にはとくにご執心でこのおなじ葉を使ったグランドオリエンタルズシリーズには「イェニジェ・シュープリーム」と「イェニジェ・ハイランダー」、2種のクサンチたばこがある。2種の違いはラタキアが入らないの(前者)と入るの(後者)である。このシリーズもベースにバージニア葉を使っているから、ぼくが買ったバルクの2020は「イェニジェ・ハイランダー」とほぼ同等なんじゃないかと想像した。
 しかし、すばらしいたばこである。ぼくのバージニア+オリエント+ラタキアのイメージは軌道修正しなければならなくなった。
 前に書いたレビューでSG社の「コモンウェルス」と「スクワドロンリーダー」、ここでラタキア入りがこんなにふっくらやわらかいものかとぼくは感動した。この種のたばこはそれまでダンヒル965がぼくの常喫で、これはかなり粗く、つんつんしている。バージニアの味はわかるしラタキアは独特の匂いでわかるので、この粗さはオリエントのせいだろうと思いこんでいたのだがまるで見当外れだった。
 2020でわかるオリエントの属性は、オイリーなこと(これはとくにクサンチ葉に特有のようだ)。茎茶と書いたが、茶葉の新芽の茎の部分を使ったお茶はやや硬質で独特の味わいがあり、それに似た味わい。それとやや近いが、春の野の土の香り。そしてとりわけふっくらとやわらかい味わい。そんな感じがあり、どれをとっても965の粗い感触はない。
 SGで感動したときもっと深く読みとるべきだった。しっかり熟成し、葉の味を最大限ひき出せばこのふっくらしたバラエティにとんだ味が出るし、それがもともとオリエントやラタキアの属性だったのだ。
 同時に遠い記憶が甦った。ぼくがパイプたばこを始めた頃、shopが紹介するまま買ったのが965だったが、いま考えると当時の965はマレー社製の後期のもの、まだダンヒル社のシリア製ラタキアのストックが残り、しかも職人肌のマレー社は熟成にも時間をかけて念入りに作っていたはずだ。その昔の965のオリエント+ラタキアの香りと味わい、まるで夢見心地で、ふっくらやわらかいなかに革製品の匂いと外人がいうラタキアが優雅に香った。その後しばらくしてオーリック製のいまの965をやったときはちょっと拍子抜けしたが、マ、こんなものかと思っていた。しかし、SG社のラタキア物やマクレーランドの2020を知るにつけ、ぼくは本物のオリエント+ラタキアを昔から知っていたことに気づかされた。
 しかしそれにしてもマクレーランドのたばこは驚嘆に値する。世のパイプ喫煙者が語り草にするバルカンソブラニーはこの2020を越えたブレンドの妙、熟成の妙があり、さらにすばらしい味わいがあったのだろうと想像できる。ぼくは今、オリエント葉とラタキア葉、その真価を知るほんの入り口に立ったばかりだ。

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by jinsenspipes | 2013-05-22 18:01 | マクレーランド | Comments(10)
Commented by 2号 at 2013-05-25 18:53 x
バルク2035が届いたのでやってました!
ダークスターと比較しましたが、全くといっていいほど一緒(笑)
ダークスターのほうが、甘味や香りがややしっかりしてる気がします。
しかし不思議なものでバルク2035は再注文する気にはならず、ダークスターは常喫したいと思い再注文しました。
普段はロイヤルヨットとFVFを溺愛しているのですが、ダークスターも溺愛の対象に収まりました!
ぜひ、ダークスターのjinsen さんのレビューを拝見させて頂きたいです!
Commented by jinsenspipes at 2013-05-25 22:27
>2号さん
2035とダークスター、比較したコメント、たいへん参考になりました。
ありがとうございます。
(しかし2号さんも勉強熱心ねェ)
ダークスターのほうが味がしっかりしてる、これはとてもよくわかります。
というのは、缶入りは封入後じっくり熟成してから出荷し、バルクは完成後はまったく熟成せずに出荷してます(agingです)。
せいぜいお店に並んでから売れるまでの日にちが熟成期間です。
なので好事家はバルクのばあいはジャーに移して少なくとも半年や1年は寝かせているようです。
ぼくも2号さんもバルクをすぐやったのでやはり缶入りのほうがおいしく感じられたんでしょう。
手間ひまかけることをいとわなければ2035をじっくり寝かせてみたらいいですね。たぶん目がさめるほどおいしいはずです。
あ、2号さんとぼくの好みはまったく一致ですね。
ぼくもロイヤルヨットとFVFはほとんどきらさないように心がけてます。
はい。
ぜひともダークスターをやってみたいです。
Commented by 2号 at 2013-05-26 21:05 x
勉強熱心なんて、とんでもない!(笑)
ただ、ひたすら美味しい煙草を求めて蜃気楼の中をさ迷ってるようなもんです!
いや~、それにしてもパイプとは危険な世界ですね~(笑) どっぷりとはまっちゃいました!
これからも、ヨチヨチ歩きですが、jinsenさんの後を歩いていきますんで末永くよろしくお願いします(笑)
Commented by jinsenspipes at 2013-05-26 21:35
>2号さん
いやいや、ダークスターをやっててすぐ2035も注文するなんて、勉強熱心ですよ。
そう、もちろんおいしいたばこを求めるあまりですよね。
危険な世界。そうかも知れません。
なにしろ昼飯代くらいの金額で、世界中のたばこが買える。
しかも、うまくすると、とんでもない美味に出会える。
こんな安あがりの贅沢はほかにないですもの。
ヨチヨチ歩きはまったくぼくもそうです。
とくにマクレーランドを知ってからは目の前に広大な未知の領域がひらけました。
かたはしから齧っていくほかありません。
おたがいに情報交換、よろしくです。
Commented by 信一郎 at 2013-06-08 21:52 x
始めまして
いつも楽しく読ませて頂いております。

私はパイプを始めてまだ2カ月のペーペーですが
すっかりラタキアの虜になってしまいました。
パイプの方も5本目にして念願のダンヒルのオームポールを手に入れる事が出来ました。

今後とも参考にさせて頂きますので
何卒宜しくお願い致します。
Commented by jinsenspipes at 2013-06-09 00:17
>信一郎さん
やあ、はじめまして。
ありがとうございます。
えっ。始めて2ヶ月でパイプ5本。それでダンヒルのオームボールですか。
すばらしい。
ぼくなんかウン十年やってて安物ばかり20本ほどです。
うらやましいです。
この2020のラタキアはほんの香りていどです。
ラタキアだと何がいいのかなァ。ちょっと迷いますね。
ぼくは今、オリエントにめざめて、マクレーランドのオリエントをしばらく探求するつもりです。
これからもときどきお寄りいただいて、コメントよろしくです。
Commented by shino at 2013-07-20 11:46 x
こんにちは。
エリンモアが切れるのが怖くて?追加注文、一緒にマクレーランド、
悩んで2020と2035を少しずつ頼みました。2~3週間後の到着が
楽しみです。綺麗なお写真を参考に100均で保存瓶も見つけまし
た。
いずれご紹介いただいている全て+アルファのマクレーランドいっ
ちゃいそうです。
Commented by jinsenspipes at 2013-07-20 17:12
>shinoさん
あ、2020と2035ですか。
どちらも絶品です。
2020はオリエントの味と香りがほんとに素敵。
2035は果物を食べているようなおいしいバージニアです。
ハハハ。
ぼくもねェ。あんなに毛嫌いしてたマクレーランドがいまは大のお気に入りになっちゃいました。
Commented by shino at 2013-08-16 22:16 x
2035に続いて2020やりました。これまた複雑な絶妙な味わいですね。そして一呼吸ごと!「土の香り」を楽しんでます。
それから、マクレーランド特有?の熟成臭や重みが病みつきになりつつあります。
普段はバージニアNo1などシンプルな味のタバコですが、物足りな
くなってついついマクレーランドに手を伸ばしてしまいます。
Commented by jinsenspipes at 2013-08-17 10:58
>shinoさん
ぼくとほとんどおなじ感覚をお持ちですね。
shinoさんのコメントはどれも納得です。
いまオーリックのゴールデンスライスドをやってますが、
これもshinoさんのバージニアNo1の感触とおなじで、シンプルさがいいけど、やや物足りない。
マクレーランドのバージニアの奥深さは類がありませんね。
ただ、これもたまたまSGのBBFが空いてます。
これはマクレーランドの2035同等で、やはり奥があり、たいへんおいしい。
イギリス物はマクレーランドがモデルにしただけあって一日の長があると思いました。
でもオリエント葉を使った2020については同等品がないですね。
マクレーランドの独壇場です。