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Jinsen's パイプ

読み物: マッチ

読み物: マッチ_a0150949_236122.jpg
 パイプの火付け道具については、マッチ派、ライター派、わかれるが、ぼくはマッチ派。これがぼくの火付け道具である。もう何十年もこれを使っている。
 写真の左上がマッチの大箱、その下が携帯用のアルミ製の小箱、大箱の多量のマッチを小箱に移して使う。
 このアルミのマッチ箱は黄燐マッチを入れて売っている、黄燐マッチは、ラベルに書いてあるが、どこで摺っても火がつくマッチで摺り板(ストライカー)はいらない。西部劇映画などでこのマッチを酒場の柱や長靴、ズボンの尻などでチャッと摺って点火するシーンがよく見られる。黄燐は毒性があるのでいまは硫化燐マッチらしいが、日本では製造禁止で、これは輸入品である。ただパイプたばこを置いてあるたばこ屋ならどこでも買える。入れてある黄燐マッチを使いきったら大箱のふつうのマッチを詰める。アルミ製なので耐久性があって長持ちする。
 ふつうのマッチだと当然摺り板が必要で、写真の右上がその摺り板である。じつはこれはマッチの大箱に貼付けてある摺り板を切り取ったものである。使いきった大箱をバラし、4面にある摺り板だけ切り取る。これを写真の左下にあるほどの大きさに切り取り、1枚をアルミの小箱にマッチ軸とともに収める。写真の右下がタンパーで、これもアルミ製の安物だがぼくには一番使いやすい。
 いまの若いかたはほとんどライター派のようだが、マッチでもライターでも優劣はない。ぼくはマッチが使い慣れているだけのことである。だいぶ昔、ロンソンのパイプ用ライターがカッコいいので買ったことがあったが結局マッチに戻ってしまった。
 識者にいわせると、ライターは一度にドッとたばこ全面に着火することができ、片燃えが防げていいそうだ。たしかにマッチで着火するとドッと全面というわけにはいかない。マッチの火を近づけるとごく一部にしか火がつかないので、ここに着火し、つぎにその隣りというぐあいにマッチの火をちょんちょんと動かす。けれど、この火がついたごく一部、そこがポッと赤くなり、つぎにたちまち白い灰になる瞬間にすばらしい味がくる。とくに朝一番のバージニアたばこは新鮮で一本のマッチが燃えつきるまで、ちょんちょんと着火しつづけるときがたまらない。
 マッチの着火は二度つけるのが常識になっている。最初の着火はcharring(炭化)またはfalse(偽)着火といい、たばこの表面を炭にしてしまうためである。そしてタンパーでならしてたいらにし、細かい炭状になったところに二度めのマッチの火をかざすとこんどは一挙に、ドッと全面に火がつく。これがfalseではない本物の着火である。ごくゆっくり吸うとたばこの表面全体がポッと赤くなり、片燃えせず、下に燃えひろがっていく。
 これは一般的な着火法だが、ロングスモーキングの競技のときなどはこれではいけないらしい。
 渡辺純夫さんという、ロングスモーキングの大家がこう書いている(この記事は柘パイプのサイトに掲載されています。とても参考になるのでぜひご覧ください)。

「マッチの火を広く全体につけ吸いつづければ安定はしますがたばこの消耗も早く、長くても70〜80分くらいで吸いきるだろうと思います。一点着火といい、マッチの頭くらいの火を理想としますが、この火種をつぎつぎ転がすのは至難のわざで、成功率は非常に低いようです。
 一般的にはたばこ表面の1/3から1/2、理想的には1/4くらいに火をつけるとよいでしょう。火は吸い口に近いほどたばこの燃焼を早くしますので、着火は吸い口に離れているボウルの前方にします。ただし片燃えになる恐れがありますので注意してください。」

 なるほどそうなのかと思う。昔から火種の大きさは小豆(あずき)ほどに止めるのがいいといわれていて、これはボウボウ燃やして過燃焼させる戒めでもあると思われる。ぼくはロングスモーキングに興味はないが、火種は大きくせず、消えかかった頃にゆるく吸い、火種のあたりがあたたまるていどで吸ったときにいい味がくるようである。

by jinsenspipes | 2015-03-14 23:09