Jinsen's パイプ

カテゴリ:サミュエル・ガーウィズ( 18 )

サミュエル・ガーウィズ: ウェストモーランドミクスチャー ( Samuel Gawith: Westmorland Mixture )

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 毎年、春先になると、手がでるたばこがある。甘い香りの着香たばこ、去年はジャーマインのプラムケーキ、今年はSGのグラウスムーアにした。プラムケーキの甘酸っぱさもいいしグラウスムーアのうららかさもいい。
 思い出したのはコメントをいただくmifuneさんがブログにウエストモーランドを紹介されて「フルーツタルトのような甘い香り」と書かれたことである。で、さっそく注文した。
 缶を開けると、お、お、お、その通りすばらしい甘い香りがあり、そのまま皿に盛ってフルーツケーキとしていただけそう。シナモンの香りまで漂っている。火をつけると、しかしこれはトップフレイバリングとしてスプレイしてあるらしく、たばこには香りはほとんどない。ときたま忘れたようにやってくるのと、シナモンが微かに香るていどだった。
 SG社の紹介文にはこうあった。
「ケンダル市長コレクションの一つです。軽いたばこで、バージニア葉と、まさに適量のブラックキャベンディッシュ、わずかに暗示させるラタキアがブレンドされてます」
 じつは昨夜、夕食後にダンヒルのヨットをやり、濃厚なミルクと蜂蜜味、奥深いバージニア味に感動したところである。そして今朝これをやると拍子抜けするように軽い。ふっくらやわらかいバージニア味にわずかな、まさに適量のブラックキャベンディッシュの甘み、ラタキアはほとんど感覚できない。ときおりシナモンがフッとやってくる。
 いろんなたばこを好奇心のおもむくままとっかえひっかえ吸っているジャパニーズとしてはとりえがみつからなくて物足りない。しかし、吸いながら考えた。これはケンダル市の市民がこよなく愛する常喫たばこなのではないか。シガレットだって一番好まれるのは際立つ香りがなく、適度のニコチンを補給できる平凡な品種だろう。SG社はケンダル市の地元たばこ会社として成立し、今では世界に知られるブランドになったが、地元のジイさんやおっちゃん、兄ィにとってはたばこはこれで充分なのではないかと。

 ところでウェストモーランドという名前だが、これは県の名でケンダル市はウェストモーランド県にあった。それが1974年、イギリスの行政改革でウェストモーランド県と近隣の地域を合併してあらたにカンブリア県と改名された。だからいまではカンブリア県ケンダル市になるのである。ウェストモーランド県は19世紀から使われてきた県名だから地元のかたにはさぞかし思いいれがあることだろうと想像できる。
 たばこレビューのサイトにイギリスのある評者がこういう評文を寄せている。
「このたばこの命名はあきらかにイギリスの旧ウェストモーランド県へのオマージュである。ケンダル市にあるSG社のたばこはウェストモーランド県の名物だったからだ。しかしもしあなたが現在の湖水地方を旅してもあなたはSG社のたばこを土産物屋でみかけることはないだろう。かわりにあなたがみるのはケンダル・ミントケーキである」
 ケンダル・ミントケーキはケンダル市の名物菓子で登山や山歩きのエネルギー補給用として世界的に知られるものだそうだ。ケーキといってもチョコバーみたいな甘い砂糖菓子である。
 もう一つ。このたばこは「ケンダル市長コレクション」の一つになっている。「ケンダル市長コレクション」はSG社の創設者、サミュエル・ガーウィズが1863年にケンダル市長に選ばれたのを記念して作られたシリーズらしい(アメリカのたばこショップ、Iwan Reis社の記事によると)。チョコレートフレークが第一弾、サムズフレークが第二弾。そのあとウェストモーランドがコレクションに追加された(第三弾かどうかの明記はないが)。年代を推測するとこのたばこの発売は19世紀後半か20世紀前半と思われるのでまだ県名は昔のまま、つまり、このたばこはケンダル市のある県の名前をとったものである。日本でいえば「東京」とか「山梨」という名のたばこになるのだろう。いや、あるいは「江戸」とか「甲斐」なのかもしれない。

 好奇心旺盛なジャパニーズは世界のたばこを旅し、どんな珍奇な品種があるかと目をぎらぎらさせているが、このウェストモーランドは初心に還った気分である。地元に住むまじめで朴訥な市民がささやかに毎日たのしむおだやかなたばこ、と思いたい。トップフレイバレングのあのどぎついフルーツケーキの香りはひょっとしたら海外に輸出する際のお飾りなのだろうか。それともイギリス人のユーモアの所産なのだろうか。

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by jinsenspipes | 2013-03-30 21:22 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(8)

サミュエル・ガーウィズ: スキッフミクスチャー ( Skiff Mixture )

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 いわゆる「イングリッシュミクスチャー」、ひさしぶりに堪能した気分である。
 SG社の現行ミクスチャーたばこ12種のうち典型的な「イングリッシュミクスチャー」といえるのは2種、これと「スクワドロンリーダー」である。葉組はバージニア+オリエント+ラタキア。そして無着香たばこである。ここのところ着香物やフレーク、ケンタッキーたばこといろいろ手をのばしてきたのでなぜかホッとした気分になった。
 缶を開けると、やや湿り気のあるリボンカット、明るいバージニアからダークなラタキアまで各種の葉が混じり、ラタキア臭はさほど強くなくオリエントの香りにかなりな熟成臭がくる。うん。これだ!
 火をつけると、ああ、なんとまろやかなたばこか。つんつんしがちなラタキアがやや隠れ、スパイシーなオリエントとベースのバージニアがまるでとろけそうにからみあっている。とろんとした味のなかにひと刷毛、ラタキアの風がなで、オリエントが騒いでいる。これこそまさにSG社のたばこだ。
「イングリッシュミクスチャー」の定義はぼくはよくわからないが「熟成」というのがキーワードのようである。
 識者によると、たばこの熟成は3段階にわたるという。ブレンド以前のたばこ葉の熟成、製造過程での熟成、缶に詰めてから出荷までの熟成である。まずたばこ葉の状態で充分熟成され、つぎに製造過程でたっぷり熟成して製品となり、さいごに缶に詰めたあと出荷までにさらに熟成する。アメリカのたばこ会社は缶に詰めたらさっさと出荷するが、マクレーランド社だけは伝統的イギリス製法に倣い、缶に詰めてから出荷まで2年寝かして熟成しているという記事を読んだことがある。
 イギリスでは1986年までパイプたばこに添加剤をまぜることを禁止していた。オランダやアメリカがふんだんに着香剤を使い、あざとい着香たばこを作っているのにイギリスの会社はそれができない。そこでたばこ葉をたっぷり熟成させたり、煎ったり焼いたりすることで味わいをだしてきた。これが「イングリッシュミクスチャー」の正体である。素材の味を最大限ひきだすこと、また時のわざで素材の味が変容するのをじっくり時間をかけて実践すること、おおらかな時代のおおらかな産物である(禁止ではなく制限だったとする説がいまは有力のようだが)。
 イギリスたばこといってもダンヒルやラットレーはいまはデンマークやドイツで製造している。本来の熟成技術が踏襲されているかどうかは「?」である。アメリカのマクレーランド社が頑固にイギリス製法に固執しているのはそういう時代風潮にたいする反逆なのだろう。しかしイギリスの寒村の小さな、小さなSG社などは、たばこ産業界の資本競争や権力闘争とは無縁に、技術革新とも無縁に、200年にわたる古式製法を守り博物館に収まりそうな機械でたばこを作っていることを考えると、そのたばこは仏壇に飾って拝みたくなるくらいありがたい。
 このたばこはまさにその熟成の成果である。バージニアとオリエントとラタキアが時間をかけて優雅に溶け合い、単体ではあり得なかった霊妙な味わいをだしてくる、これこそイングリッシュミクスチャーの神髄を見る思いがする。
 さて。
 本来ならここで「スクワドロンリーダー」との比較を書かなくてはいけないのだがそちらはちょっと記憶が曖昧である。ただ漠然と感じるのは、スキッフミクスチャーのほうがラタキア色が薄く、オリエント葉がやや強くでているようである。
 さいごに「スキッフ」はいまでは船外エンジン付きのレジャーボートを指すが昔は、缶の絵が示すように、一人乗りの三角帆のヨットで閑人が釣りなどに使ったらしい。「スクワドロンリーダー」の複葉機とおなじで、このたばこは缶の絵をみているだけで心が晴れ晴れしてくる。

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by jinsenspipes | 2013-01-15 21:50 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(12)

サミュエル・ガーウィズ: ブラッケンフレーク ( Bracken Flake )

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 SG社の現行フレークたばこ12種の、ぼくが未体験のさいごのたばこである。これでぜんぶやったことになる。
 缶を開けるとFVFとほぼおなじ。大きさがまちまちの黒い長方形フレークのたばこ。しかし香りが違う。かすかな熟成臭におなじみの甘いケンダル芳香がありそれにまじってもう一種、どこかキリッと締まる香りがある。いい感じ。湿りぐあいはFVFに似ていて摘むと指にじとっとくる。
 ぼくのパイプは浅いのが多いので手頃な1枚をとり、縦2つ折り、横3つ折りにして詰めてちょうどいい。火つきも火持ちも抜群によかった。
 火をつけると、あ、これは! ケンタッキー葉の味がどーんときた。FVFはもろバージニア味でやわらかい感触だがこちらはケンタッキーの強い香りと味わいで剛健な感触。男性的といおうか、紳士的といおうか、これと比べるとFVFは女性的なたばこと一瞬思ってしまう。海外のレビューでピーターソンのアイリッシュフレークを思わせるというのを見かけるがなるほどとも思う。酒にたとえると辛口、チョコレートならビター味である。
 SG社のカタログによると、葉組はケンタッキー葉+dirk-firedバージニア葉とある。このdirk-firedバージニア葉は同社の1792に使われている葉で、またSG社のブラックキャベンディッシュはすべてこの葉から作られているらしい。ガーウィズ・ホガース社のカタログにもdirk-fired葉の記載があってそこには煙をあげる火の上にぶら下げて乾燥させると注釈があった。バージニア葉はflue-cured (熱風乾燥)が通常とされているからこれは特殊なバージニア葉らしい。SG社のこれはタンザニア産、GH社はマラウィ産である。しかもブラッケンフレークのこの葉はかなり入念に蒸したりオーブンで焼かれたり、いわばこってり料理されているようである。またケンタッキー葉だがカタログでみるかぎりSG社のケンタッキー葉はこのブラッケンフレークにしか使われていない。ぼくのラスト体験たばこは数あるSG社の製品のなかでも特異なものであるらしい。
 火持ちがいいので終盤まで再着火なしてやっているとケンタッキー味がますます優勢になってきた。
 ぼくは数年前までケンタッキー葉をよく知らなかった。これじゃいかんと思い、GH社のケンダル・ケンタッキーを勉強のつもりで買ってみた。これはバルク売りだけのたばこだが着香してあって吸いやすい。ケンタッキー葉はもともとバーレー種だが火力乾燥させていわばくせをつけたたばこでラタキアやペリクと並ぶ香りづけたばこである。ぼくが単体で吸った印象は、バージニア葉を青臭い草の感じとすると、こちらは樹木の皮のような、やや硬質な味わいだった。かなり独特なスパイシーな香りがある。これを知ったあと常喫のアンフォーラをやっているとときどきその香りが漂うことがあった。アンフォーラにはケンタッキー葉も使われているらしく、しばらくたつうちにおなじみの香りになってきた。
 じつはバージニアたばこの腰を強くするためにごく少量のケンタッキー葉をまぜるということもあるらしく、この味を知ってからはそういう調合ぶりもわかるようになった。しかしブラッケンフレークのケンタッキー味はモロである。バージニア葉とのブレンドぐあいが抜群なのかもしれないが、スパイスたばことしての嫌味はまったく感じさせず、ひたすら特異ながら心地よい香りがたのしめる。コモンウェルスが意表を衝いてバージニア、ラタキア半々にしながらじつに吸いやすいたばこになっているように、どうやらSG社は常識に反抗するチャレンジ精神というか冒険心というか、旺盛な会社のようである。

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by jinsenspipes | 2012-12-26 21:22 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(30)

サミュエル・ガーウィズ: サムズフレーク ( Sam's Flake )

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 これはmifuneさんからおいしいとコメントいただいていた。ところが欠品が続いてなかなか買えない。ようやく手にはいったので遅くなってしまった。
 SG社の現行たばこのうちでフレークは12種あり、ぼくは10種を体験ずみ、このあとブラッケンフレークを残すのみになった。そちらもすでに発注してあるので、よちよちながら全制覇になる。ミクスチャーのほうはやはり12種、カタログに掲載されているが、ぼくが吸ったのは4種のみ、しかしこちらはレイクランドとかクリスマスミクスチャーとか市場でみかけないものもあって全制覇はむつかしい。SG社はなにしろ200年もたばこ一筋に歩んできた老舗だからそのたばこを徹底的に味わってみればおのずからたばこというものの正体が知れてくるに違いない。ぼくが知らない世界が見えてくるはずだ、と、マァ、思うわけである。
 さて。サムズフレークだが。
 缶を開けると、ヤ、この湿りよう! じくじくと濡れていた。まるで昆布の佃煮みたい、不揃いなフレークがペチャッと折り重なっていて1枚剥がすのに苦労するほど。ぼくの知るたばこではジャーマインのペリクミクスチャーがやはりそうだったが、もっとという感じ。後日談になるが翌日になったらじくじく感はぬけ、FVFくらいになり、数日後にはちょうどいい乾燥ぐあいになった。缶入りたばこは開けるとこんなに早く乾いてくるものなんだな。
 甘い、いい香りがある。これは1792とおなじトンキン豆らしい。火をつけると湿っているわりに火つきがよく、おいしいストーブドバージニアの味わいにトンキンの香りと甘さ、かすかな酸味、もう一種、別の葉がまじっているらしい。
 海外のレビューのなかにこれは焼きたてパンの味だというのがあった。うまい表現である。ふっくらやわらかく、わずかに甘い香りが漂う。ぼくはふと和菓子を食べてるみたいと思った。トンキン豆の甘さがやわらかい煙とともに口にひろがりそう感じさせるのである。
 紹介文によると「バージニア葉とトルコ葉をブレンドしたあと熱いオーブンのなかで圧縮し、裁断したのち軽く着香しました」とあった。そうか。トルコ葉が入っているのだ。バージニア葉のほかに何かあるなとは感じていたが。
 このたばこは火つきも火持ちもいい。むしろよすぎてうっかりするとどんどん下に燃え進んでしまうから吹き戻しをしっかりしないといけない。これはトルコ葉のせいかもしれない。また日にちがたち、乾燥してくるにつれて燃焼も早くなるようである。最初の濡れぐあいはむしろそれにブレーキをかけているのかとも思った。気むづかいしいたばこではある。
 ぼくはこのたばこで勉強させられたことが一つある。これは特別際立った味があるわけでなく、シンプルで軽いストーブドバージニア味である。しかし吸っているとじつにいい気持にさせられるのだ。焼きたてパンというのはまさにそれで、濃い味がなくてもこのやわらかい、ふっくらした、甘い香りを吸っているだけで清涼な、晴れた朝のような幸福感をおぼえる。こういうたのしみもまたパイプ喫煙の要素の一つなのだと思い知らされた。
 このたばこはケンダル市の市長さんお気に入りだそうだが、いいセンスですね。ピーターラビットがとび跳ねる湖水地方ののどかな光景が目にうかんでくるようである。

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by jinsenspipes | 2012-12-05 16:41 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(6)

サミュエル・ガーウィズ: チョコレートフレーク ( Samuel Gawith: Chocolate Flake )

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 このブログにコメントをくださるmifuneさんが「SGのチョコレートおいしいですよォ」と書いてくださった。じつはぼくもいまやってて、空けたのはペーター・ハインリヒのカーリィと一緒、ただそちらを先に書いた。
 前にGH社のボブズ・チョコレートフレークがとてもおいしく、比べてみたくなったのだ。
 あいかわらずのSG社フレークで開けると熟成バージニアの匂いにチョコレートの香りがまじる。火をつけると、ウムム、丸い味だ。バーレー葉の丸い味わいがバージニア葉とうまくミックスされ、バージニア葉特有の匂いやヒリヒリ感をやわらげている。ちょうどいまはFVFも空いていてそれと比べると特徴がよくわかる。FVFはバージニア葉のあらゆる特徴をフルに発揮するから青臭さもあり、ちょっと口内を刺激する強さもあり、ふしぎなお花の香りが漂ったりする。こちらは喫味がひたすら丸く、やや物足りない気もしないではないが吸っていて心地よい。さらに甘いチョコレート風味がのり、これがまた心地よい。飽きのこないたばこだ。
 ではGH社のボブズ・チョコレートフレークとどう違うかというと、ぼくには差異は感じられない。どちらも少量のラタキアを隠し味でいれ、これが喫味をクールにしている(ラタキア自体は感覚できない)。それと比べるとFVFはホットなたばこといえる。このクールネスが心地よさに通じるのだと思う。
 このたばこの缶に「ケンダル市長コレクション」とあり、社の解説には「これは『サミュエル・ガーウィズの一番』コレクションに最初に収められたたばこです」と書かれている。カタログを探すとこのコレクションにはほかにサムズフレーク、ウエストモーランドミクスチャーが収まる。何が基準かはわからないがどれもマイルドで吸いやすいたばこ、やはりこのあたりが常喫に適ということになるのだろうか。
 このチョコレート風味だが、ぼくが好きなマクバレンのバニラクリームもバニラ風味が強くて手がでないときがある。香りを前面にだした着香たばこはときとして嫌味になるがこのたばこのチョコレート風味はごく薄く、海外のレビューでも「どこがチョコレートなの?」というのがあって笑っちゃう。人によっては感覚できないていどなのだ。しかしこのたばこもGH社のボブズチョコレートもともにフレークたばこでミクスチャーではない。フレークはことのほかクールスモーキングでゆっくり吸うものだからじっくりやってるあいだに唇のあたりにわずかに甘さがのったり、漂ったりしてくる、そのていどの着香で、これがまた気分いい。
 ぼくはまだ修行がたりなくて、バージニア葉の味わいをフルに発揮したFVFや、ストーブドバージニアに蜂蜜とミルク味を加えた奇蹟ともいえるロイヤルヨットなどに心酔しているが、ほんとのパイプ吸いはこのたばこの軽み、かすかなチョコレート風味、ゆったりした喫味、これこそパイプの楽しみだというかもしれないとふと思ったりする。それが「ケンダル市長コレクション」に真っ先に加えられた理由なのかも。
 パイプたばこは奥が深い。ヒトの本性を教えてくれる。ぼくはまだひよっ子だと反省した。

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by jinsenspipes | 2012-02-20 20:35 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(80)

サミュエル・ガーウィズ: ネイビーフレーク ( Samuel Gawith: Navy Flake )

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 これもまたユニークなたばこである。
 缶をあけるとSG社にはめずらしい、1インチ x 3インチの整然としたフレークが2列に並んでいた。そして熟成したバージニアの脂っぽい匂いに、強いアルコール(ラム酒)の香りと香辛料の香り、いわゆるペパリーというやつでこの香辛料はフルバージニアフレークに共通する。
 さっそく1枚を4つ折にしてボウルに詰め、火をつけると、ああ、やはりラム酒の香りが強かった。甘く、やや饐えた香りがつねに漂う。ぼくが吸ったラム酒入りたばこのなかでは一番である。バージニア葉にやや葉巻の味がする。それで思い出したのはガーウィズ・ホガースのロープたばこ、カーリー・カットで、あれは葉巻に使うラッパーを巻いたたばこなので当然葉巻味がする。SG社もロープたばこは製造しているからやはりラッパーか、あるいはブライトバージニア(バージニア葉の先端部分だけを使ったもの)ではないかと想像した。もっともぼくはバージニア葉の種類や部位を識別できるほどではないからほんの妄想にすぎないが。
 前に書いたゴールデングロウがのこっているので交互にやっているが、比べると、あちらはほのあたたかい煙がくるがこちらはじつに涼しい煙、クールスモーキングできる。じつは隠し味があるのだ。ラタキアをごく少量含んでいる。GH社のチョコレートフレークで書いたが、わずかのラタキアがたばこをクールにする。吸っていてまずまず気づかない、いわゆる隠し味で、もしかしたら葉巻味と書いたのもラタキアのせいとも思われる。このあたり詳しいかたにうかがいたいところだ。
 このたばこがnavyと名づけられたのはふしぎである。そもそもnavyたばこの原型はスリーナンズやエスクードなどのコインたばこだった。たばこは船員のあいだでまずひろまったが、大航海時代の船員はたばこ葉をロープに撚り、ラム酒をびしゃびしゃかけて乾燥させ、ポケットに入れた。吸うときはナイフで必要量を削りとるのである。それを製品化したのがコインたばこで本来のこれはまずたばこ葉をロープに撚り、そのあとコイン状に切り出した。しばらくしてプレス機械が登場し、手間ひまかかるロープたばこよりブレスし、箱型にしたケーキを適当な大きさに裁断したプラグたぱこ、さらに薄切りにしたフレークたばこが商品化され、それにつれてnavyたばこもフレークたばこをさすようになった。その頃になるとはじめからたばこ葉を細かく裁断したリボンカットや、手巻きたばこ用にうんと細かくしたシャグカットもあらわれたから、塊をぶった切ったようなプラグやフレークは、マ、乱暴な船員御用達と見なされたんでしょうね。
 しかし船員用のnavyたばこは本来バージニア葉オンリーのもので商品化したスリーナンズやエスクードはそこにペリクをまぜたところに商品価値を付加した。ましてやラタキア入りのnavyなんて聞いたことがない。SG社のこれをnavyとするのはラム酒をふんだんに使ったという一点のみで、ラタキアを混入し、味わいを一層複雑にしたこれをnavyたばことするのは不当だとする愛好家も多い。たしかにそれも一理ある。またそういう議論がでるところが嗜好品のおもしろいところですね。
 しかしラム酒の香りをまき散らしながらコクのあるバージニアをぷかりぷかり、大航海時代に思いを馳せるのはたのしいものである。ちょっと異質なバージニアたばことして記憶にのこしておきたい。

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by jinsenspipes | 2012-01-29 16:46 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(12)

サミュエル・ガーウィズ: ゴールデングロウ ( Samuel Gawith: Golden Glow )

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 サミュエル・ガーウィズ社の近年の作である。サイトのカタログにも「new!」印がついているがぼくの記憶では5、6年前には載ってなかった気がする。海外のあるレビューに2008年のシカゴ市のパイプ展示会で知り、初めて喫煙したという記事があるのでそのあたりなのかとも思う。18世紀に創業し、200年の歴史がある会社の最新作、21世紀の作という興味もある。
 ブレンド名に「ゴールデン」とつくのはイエロー・バージニア葉を使っているからである。バージニア葉は熱処理の度合いによりイエロー、レッド、ダークと色が濃くなっていく。イエロー・バージニアはもっとも軽く、明るい黄色で青臭さや酸味、甘みともに一番強い。しかしさらに熱処理したレッド・バージニアに比べるとコクや深みがやや欠けるし、バージニア葉特有の舌焼けもあるのでふつうは数種のバージニアをミックスして仕上げている。ことさらに「ゴールデン」と命名するのは長所も短所もあるイエロー・バージニアでいい味をだしているという自信作にほかならない。
 じつはつい最近までフリボーグ&トレイヤー社の「ゴールデンミクスチャー」を吸い、その黄金色に輝くみごとな葉と、イエロー・バージニアの味を毎朝、堪能していた。それが空き、いまはGH社のペリクミクスチャー、SG社のコモンウェルス、ラットレーのダークフレグラントがそれぞれ少量のこっているが、バージニアのストレート物がない。そこでこれを買ってみた。
 缶を開けると、ウム、やはり黄色葉のブロークン・フレークだった。レディラブドほど細かく裁断せず、いわば手でこそげ剃ったようなわらわらフレークで、かなり湿り気がある。これは適量をつまみ、丸めてボウルに詰めればいいから楽である。リボンカットのように詰めぐあいを吟味したり、端切れが散らばったりステムにもぐりこんだりしないから快適。パイプをくわえると目の前に黄金色の葉が山盛りされていていい感じ。その名の通り「ゴールデングロウ(黄金の輝き)」である。
 火をつけると、おなじみの青臭さ、酸味、かなりの甘みがとびこんできた。本来ならかなり舌にヒリヒリくるはずだがそれもほとんどなく、マイルドで、じつに吸いやすい。火つきもいいし、火持ちも抜群。再着火するまでもなくさいごまできれいに吸いきれる。なるほどこれがSG社が世に問う最新作なのか。
 フリボーグ&トレイヤーの「ゴールデンミクスチャー」のときも感じたが、このたばこも若いパイプ入門者向けなのだと思う。SG社のラインナップにはコクと旨味ではひけをとらない銘品がずらりと並ぶが、いずれも重厚、2時間かけて沈思黙考しつつたのしむには絶好だがシガレット感覚で気軽にやるには重すぎるかもしれない。またそれだけ時間をかけて深みを追求する余裕もいまの若い世代にはないかもしれない。
 マイルドだがバージニアの旨さは充分、ニコチンも弱め、火もつけやすいし、火持ちもよくて手軽に扱える。時代の要求に応えた良品だとぼくは思う。
 しばらくは朝の一服をこれでたのしみたい。

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by jinsenspipes | 2012-01-15 20:06 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(41)

サミュエル・ガーウィズ:  スクワドロンリーダー ( Squadron Leader )

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 この銘品もぼくは初体験だった。おいしいたばことは承知しつつ、ごく一般的な葉組なのでつい目新しいもののほうに目が向いてしまっていた。初めてやって期待をはるかに越える逸品とわかった。
 SG社は缶のデザインがたのしいが、この缶の図柄は一次大戦で活躍したイギリスの複葉戦闘機、ソッピース・キャメル(Sopwith Camel)。たばこの製造も当時でイギリス空軍を称えたものという説もある。ブレンド名は「飛行中隊長」。軍隊用語ではスコードロンリーダーと表記されるが階級が空軍少佐になるので日本では「イギリス空軍少佐」の別名でも知られる。
 葉組はバージニア、ラタキア、オリエントで、缶を開けるとオリエント葉の香りが強くラタキアとバージニアを圧倒する。火をつけると、うっ、これは旨い! すばらしい味わい。
 バージニア、ラタキア、オリエントの壮麗なハーモニーというか、いっそtutti(全奏)というか。オリエント葉のスパイシーでやや刺激の強い味わい、ラタキアの脂っぽい燻製臭、バージニアの青臭い匂い、それがどっと口内にひろがり、それぞれがしっかり主張して止まない。まぎれもなく最高級のイギリスブレンドである。
 初盤はそんな感じだが、中盤、終盤になるにつれて3種が微妙にまじりあい、甘みと酸味を増し、しっくり溶けあってくる。このあたりが一番おいしいところである。さて、この甘みと酸味はおそらく3種の持ち味の総合なんだろうがほかのどのたばこより強く感じた。
 同種のミクスチャーだとダンヒル965がそうだが、ぼくの昔の記憶ではマレー社製965はこれをさらに甘口にし、エッジをぼかした感じでラタキアの香りが圧倒した。965はキャベンディッシュが甘みをつけているからだ。いまのオーリック社製はそのマイルド感がないからこれに似ているともいえるがそれぞれの葉のコクの深さは比較にならない。SG社の200年の歴史は伊達ではないのだ。
 一つ思いついたことがある。この葉組はいわゆるバルカンブレンドとおなじだ。だとすると、それとこの手のイギリスブレンドの違いは何だ? というおなじみの疑問がわく。たまたま前に買ったGH社のバルカンミクスチャーが少しのこってたので吸い比べてみた。うむ。やはり違う。バルカンミクスチャーはマイルドでおだやか、全体がアマルガム化しているが、こちらはそれぞれの葉がはっきり主張しつつ、大きなまとまりを作っている。おそらくバルカンソブラニーがそうだったのだろうし、各社のバルカン商品はそれに追従したという説は正しいように思える。
 おなじSG社のバルカンフレークはどうなんだというと、これはぼくの独断だが、もしそれがかなり後期の商品とすると、SG社としてはおなじ葉組でスクワドロンリーダーという傑作がすでにある。そこでSG社はわざとオリエント葉を外し、バージニアとラタキアだけでマイルドなたばこを仕上げ、バルカンブレンドとして市場に送り出した。などと想像してみたのだが、いやいやこれはおいしいたばこでヤワになった頭がでっちあげた妄想、というとこですかナ。
 しかし、なんと旨いたばこだろう。みなさんが絶賛されるのももっともである。

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by jinsenspipes | 2011-09-13 22:17 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(39)

サミュエル・ガーウィズ:  バルカンフレーク ( Balkan Flake )

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 ガーウィズ・ホガース社の「バルカンミクスチャー」につづくバルカン物である。
 缶を開けるとフルバージニアフレークによく似たフレーク。さっそく1枚をまるめてダンヒルの2番のビリヤードに詰めてみた。この小ぶりなパイプだと1枚でちょうどいい。
 火をつけると、ムムム、GH社のにそっくりじゃないの。甘みと酸味がかなり強く、マイルドな味わいにわずかにラタキアが香る。そのベースがやはりGH社のに似てバージニア+オリエントのアマルガム、つまり調合して変質した独特の味、といいたいのだが、しかし、待てよ。GH社の葉組はバージニア、オリエント、ラタキアだがこちらはバージニアとラタキアのみ。オリエントはないはずなのだ。
 これはどういうことだ!
 通説によると、バルカンブレンドはオリエント葉を配合した独特の味とされている。バージニアにラタキアとオリエントを配合するのはふつうのイングリッシュブレンドもおなじだがGH社の「バルカンミクスチャー」を吸った印象ではやはり一線を画している。イングリッシュブレンドだとラタキアとオリエントはあくまで香りづけの添加物だがバルカン物は調合の過程でバージニアとオリエントがたがいに影響しあって変質する、アマルガム状になるとぼくは推測した。GH社のはまさにそれだ。
 しかしこちらはオリエント抜き、それでおなじ味わいがあるとすると、考えられるのはフレークのせいかもしれない。GH社のはミクスチャーだから変質は熟成の過程でおきるがこちらはフレークなのでバージニアとラタキアを加熱圧縮する過程でおなじアマルガムがバージニア=ラタキア間でおきるのではないか。いや、これは素人考えにすぎないけどね。
 ラッキーなことにGH社のがまだのこっていた。しめしめと比べてみると、がーん! やはり違うのだ。比べて初めて気づいたがGH社のベースはやはりオリエントの香りがのこっていた。こちらは、それと比べると、バージニア色が濃い。しかし同時に吸い比べないかぎりその違いは感覚できない。どちらもマイルドで心地よい、わずかに漂うラタキアの香りがじつに涼しい。
 バルカンブレンドと呼ばれるたばこ、それがいつ頃から、どんなタイプに命名されたかは日本人には謎だが、GH社、SG社老舗のたばこから推測すると葉組よりこの喫味にあるようである。葉組がおなじでも、ヨーロッパ大陸に腰をすえたイングリッシュブレンドはあくまでもバージニア葉をたのしむたばこでオリエント、ラタキア、ペリクは調味料にすぎない。バージニアの味と香りがしっかりしてないとイングリッシュブレンドとはいえない。
 いっぽうバージニア葉の強烈な味をやや隠し、そこにわずかにラタキアの燻製臭を漂わせる。喫味は甘口、マイルド、涼しく、ラタキアがアクセントになるがさほど強くない。さらにSG社のバルカンフレークだと後半に果実の香りのような心地よい甘い匂いが漂って気持いいったらない。このあたりがバルカン物の存在理由なのではないかと推測した。
 ぼくはこのバルカンフレークが気に入ったが、フレークというのも利点の一つである。おなじたばこならリボンカットよりフレークのほうが断然吸いやすい。ゆる詰めもかた詰めも関係無し、板状だから二つ折りか四つ折りにして詰めれば会社が計算した通りの詰めぐあいになる。煙道に葉が詰まることもなく、タンパーなんていらない。自然に燃えるままにしておけばいい。ただ板の一端に火をつけるわけだから最初の着火がめんどうでマッチ4、5本は必要。吹き戻しを多めにして火をたいらにまわしてやればあとはひとりでに燃えてくれる。それもゆっくりネ。フレークをほぐして吸うなんて話を聞くことがあるがわざわざ旨いたばこをまずくしてどうするんだろ。気がしれない。
P.S
 このたばこの缶にはバルカン半島の地図がうっすら見える。あいにく警告表示に隠れているが、背景の地図帳と見比べてください。SG社はこういう遊びもたのしい。

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by jinsenspipes | 2011-08-03 17:02 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(10)

サミュエル・ガーウィズ:  ファイアーダンスフレーク ( Fire Dance Flake )

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 SG社の着香たばこの銘品である。イギリスではつい最近(1986年)までパイプたばこの着香を禁止していた。パイプたばこはバージニア葉の味と香りをたのしむものされてきたのだ。ただ若干の甘味料、たとえばリコリスは古来より使われているし、トンキン、バニラなども許容範囲内だったと思われる。添加着香料のかわりにイギリスでは異種のたばこ葉を香りづけに使ってきた。ラタキア葉、ペリク葉など異種たばこ葉をブレンドして香りや甘み、酸味にバラエティをつけるのがイギリス流の「着香たばこ」だった。だからファイアーダンスはやや異色商品だし、社の説明に「このたばこはアメリカのある女性喫煙者の要請で開発された」と但し書きがあるのはもしかしたらいいわけじゃないかと、つい勘ぐってみたりする。
 缶をあけると強烈な木いちごジャムの香りである。ぼくはベリー種の知識は皆無で特定できないが社の説明によるとブラックベリーとあり、海外のレビュアーもそう特定している。はい。強烈なブラックベリーの香りであります。
 かなり湿り気のあるフレークで例によって四つ折りに詰めて火をつけると、ムムム、やはり強い木いちごの香り、それとワインのようなお酒の匂いが微かにあり、また上品な甘みがある。お酒、甘みともに特定できないが、これも社の説明ではブランデーとバニラであるとのこと。ブラックベリー、ブランデー、バニラ、うーん、ヨーロッパの豪壮な建造物の室内を思わせますなァ。それとご愛嬌で、例のケンダル芳香、ちょっと石鹸臭い匂いも漂う。
 しかし吸いつづけるとブラックベリーの香りは急速にフェイドアウト、ブランデーの香もぬけ、かわりにバージニア葉のしっかりした味わいが前面に出てきた。火が弱まったとき少し強めにドローすると微かにブラックベリーが香るていど。バージニア葉にわずかに漂うブラックベリーの匂い、このあたりがおくゆかしい。
 また社の説明にもどると、このたばこは同社のベストブラウンフレークをベースにし、3種のフレーバリングをほどこしたというから中盤以降はほとんどベストブラウンフレークをやってることになる。しかし単体のこの葉はもう少し味が濃く、かつ柑橘系の酸味もあった気がする。こちらはおなじ葉らしいがおとなしい味で、やはりフレーバリングにより変質するのだろう。味が悪いのではない。マイルドなのだ。
 後半になるとバニラの甘みが主張してきた。ここまでくるとぼくにもバニラとわかる。それも鼻に香るのでなく舌に甘くからみついてくる。ブランデーはほとんど消えたがブラックベリーはやはりドローが強いとうっすら香る。バージニア葉を味わううちにバニラとブラックベリーがふっとくる感じが好ましい。おそらくお部屋には木いちごとバニラの芳香が漂っていることだろう。
 あきらかに着香たばこではあるが、着香とはいい難い1792のトンキン豆の香り、グラウスムーアのケンダル芳香に共通する繊細なフレーバリングでぼくは気に入った。やはりSG社の製品には気品がある。
 追記
 掲載した写真の缶はじつはフェイクだ。買った缶の警告ラベルが興ざめなので3年前に空けた缶を代用した。この頃はバーコードが印刷されてたのネ。

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by jinsenspipes | 2011-06-14 15:34 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(13)