Jinsen's パイプ

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サミュエル・ガーウィズ: フルバージニアフレーク

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 ひさしぶりに買った。半年ぶりくらいになるだろうか。やはりこのタバコは旨い。
 甘みと酸味が深いところから香ってくる。かすかに果物の香りも。深く吸うとバージニアの青臭さがくるが、充分加熱圧縮されているのでふつうは感じない。コクの深さは比類がない。
 バージニア葉の味わいにわずかに甘みと酸味がまじるところ、これを味わうとラットレーの甘みはやや人工的だと再認識される。それはそれでおいしいけれどバージニア葉本来の甘みはこちらにある。
 しかしこのタバコ、ぼくにとってひとつ難点がある。ぼくはフレークはほぐさずそのまま吸うが、このフレークは重いのだ。SG社のバージニアフレークにはもう一つベストブラウンフレークがある。識者の説によると、この2種は元はおなじバージニア・ケーキでこれをフレークに再加熱圧縮する際の工程が違うそうだ。ベストブラウンフレークはやや軽く、フルバージニアは重い。そしてベストブラウンはフレークのままボウルに詰めて問題ないが、フルバージニアやや火持ちに難がある。
 これは想像だが、日本人のドロー(吸い)は外人に比べて弱めなのではないだろうか。試しに少し強くドローすると、火持ちはよくなるが味がきつすぎるし、吸い終わって口内がやや荒れた感じがする。SG社のほかのフレークや、ラットレー、ダンヒルなどはぼくのふつうのドローで、ほとんどドローを意識せずに吸いきれる。日本人のドローは弱めで(ぼくだけかもしれないが)これは少し重いフレークなのである。
 もちろんほぐせば問題ないが、フレークをほぐして吸うのはぼくには抵抗ある。ダンヒルの古いブロシュアの「ライトフレーク」の解説にこのタバコは「戸外に適し、とくにスポーツマン向き」とある。リボンカットだと、タバコポーチにパイプの頭をつっこみ、指先で葉をかきよせなければいけないが、フレークなら1枚を二つ折りしてボウルに差しこめばいいだけだから楽チン。しかもダンヒルのフレークは小型の平缶でポーチいらず、このままポケットに入れればいい。その目的で作られたんだからやはりほぐさずに吸いたいところである。
 じつはフルバージニアを買ったときラットレーのマーリンフレークもあったので比べてみた。ぼくは缶を開けると永くても一ヶ月で吸いきるようにしている。G.L.ピースは、缶タバコは2oz缶でストックするのがよく、開けたらできるだけ早く吸え、どんどん変質して味が落ちると書いている。だいたい2oz缶はふつうのパイプスモーカーで一週間に吸いきる量を想定して作られたものだから一ヶ月でも永すぎるくらいである。余談になったが、そういう理由で常時あいた缶は(ジャーに移してあるが)せいぜい6、7缶ていどに止めている。しかしこのところ朝一番の一服は桃山でなくマーリンフレークにしているので買い置きがあり、そこで、両者を比べてみると、コク、バージニア味、ともにフルバージニアに旗があがる。しかしこの重さはちょっとヘビーで、昼間、ひょいと吸うときはマーリンフレークに手がでる。たっぷりした夕食後、いわば正座してじっくり味わおうか、というときはフルバージニアである。
このあたり、微妙だナ。

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by jinsenspipes | 2010-06-27 18:12 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(16)

パイプタバコの製造 -4

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 19世紀になると嗅ぎタバコ熱は去り、つぎに葉巻が流行するが、手巻きで作る葉巻は高価な贅沢品でむしろこの時代はパイプ喫煙の再流行期になった。

 前世紀までのパイプタバコはプラグあるいはロープタバコである。イギリスのタバコ会社は新大陸から樽詰めできたタバコ葉を加熱圧縮してケーキ状にし、大きめに裁断した「バー」、あるいはこれを撚った「ロープ」タバコとして販売店に収めた。これは今日でいうバルク販売で、タバコ店の店頭では顧客の好みの分量にカットして売られた。当時のパイプ喫煙者はこのプラグやロープタバコにそれを刻むナイフ、また着火用に火打石と火口や付け木を必需品としたからずいぶん手間がかかった。

 19世紀に様子は一変する。マッチが発明され、着火は楽になった。カッター機の改良でケーキを細かく裁断し、刻みタバコを作ることが可能となった。そもそもパイプタバコがイギリスに普及した17世紀には樽詰めのタバコはナタで刻まれ、シャグと名づけた刻みタバコを計量して販売していた。しかし18世紀には上に書いたようにケーキ状のブレスタバコが一般的になっていたから新製品の刻みタバコは歴史を逆戻りしたことになる。

 刻みタバコの登場はタバコのパッケージ販売をうながした。刻みタバコはバルク販売でなく少量を缶に入れて売られた。さらにこの頃になるとタバコ葉のバラエティがふえた。これまでのタバコ葉はすべてバージニア葉で、ただ産地がバージニア、メリーランド、ケンタッキーあるいはブラジルなど異なるだけだったが19世紀になると新種のバーレー葉(とくにホワイトバーレー種)、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉などが輸入された。そして「ミクスチャー」があらわれる。異なるタバコ葉をミックスして味わいをますミクスチャーはそれまでは喫煙者が自分で調合したが、会社がこれに目をつけ、異種のタバコ葉をまぜて加熱圧縮したケーキを作り、これをカットして会社独自のミクスチャーとしてパッケージ販売し始めた。
 さいごにDutch & Daneタバコの普及がある。ヨーロッパのタバコ産業界にDutch & Dane(オランダとデンマーク)タバコが急速に普及した。これはキャベンディッシュタバコと新種のホワイトバーレー種の登場に関連する。イギリスタバコはバージニア種のみの無添加プレスタバコで、じつはイギリスは法律でタバコ製造の際に水以外の添加物を厳禁していた。キャベンディッシュはプレスタバコと同様にタバコ葉を加熱圧縮して作るが、Dutch & Daneはそのときふんだんに添加物を加え、甘みや香りをました。また新種のホワイトバーレー種を多様したがこれは添加物によくなじむ品種だった。Dutch & Daneキャベンディッシュタバコはマイルドでエキゾチックな香りづけでパイプ喫煙者に歓迎された。

 ざっとこんなところだが、詳しい製造の現場はまた次回に。

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by jinsenspipes | 2010-06-22 16:28 | Comments(0)

サミュエル・ガーウィズ: コモンウエルス

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 50%バージニア、50%ラタキア、ノー・モア。じつにすばらしいタバコ! 社の説明によるとこれは200年にわたって売れつづけてきたタバコという。ムムム。そうなのか!
 缶をあけると赤っぽい葉と黒い葉が半々。バージニアは充分ストーブされた葉らしい。おなじみのラタキアの香りが強い。ごく細かいリボンカットでやや湿り気がある。ボウルに詰めるのも楽だし、最初の着火ですぐ火がまわり再着火の必要なし。さいごまでゆっくりたのしめる。
 味は? これがじつにマイルドなんだ。このラタキアはまろやかで甘みがあり、もちろん香りが高い。ラタキアはこんなにマイルドだったかと考えて思いあたったのはふつうはオリエントで腰を強くしている。こちらはオリエント葉なしなのでラタキア味がストレートにくるんじゃないだろうか。ときどき熟れた果実の香りがくる。
 むしろバージニアがやや隠れてしまった感じがある。イングリッシュブレンドのラタキアの配量は最高でも30%といわれるからこれは異例なんだろう。ラットレーだったらここにバージニアのブライトをちょっと足してバージニア風味をつけたかもしれない。しかしガーウイズ社はあくまでもまっとうに、やや杓子定規に、初志貫徹したんでしょうね。そういえばほんの一瞬、ガーウィズ社おなじみの石鹸臭がくることがあってニンマリする。ガーウィズ社の石鹸臭、マクレーランドのケチャップ臭、どちらもいかにもという感じで微笑ましい。
 おなじラタキア物の人気タバコで、ダンヒルの965、ラットレーのブラックマロリー、レッドラパリー、マクレーランドのフロッグモートンと比べると、ダンヒルはオリエントが強すぎる。ラタキアの香りはいいけど味を消している気がする。ラットレーはかなりいいが熟成度の点でいまいち。マクレーランドは甘さとマイルドさが近いがぼくの心は違うゾ、違うゾといい続ける。マクレーランドのマイルドさは添加されたもので奥がなく、10分もすると飽きるが、コモンウエルスは吸いこめば吸いこむほど味わいがある。本来の葉の味が沁みでてくるのだ。
 その奥の深さという点だが、これと比べるとダンヒルもラットレーもいまのブレンダーの底の浅さがみえてしまう。オーリック社もコールハス社もいい仕事をしているが、ブレンドの熟成度に格段の差がある。コモンウエルスには巨体の偉丈夫が無骨な手で可憐な花束を持つやさしさがあるが、一方には小学生のやさしさ、そりゃやさしいには違いないがいかにもおさない、満身の力をためたやさしさが感じられない。200年の歴史は伊達じゃない。
 しかしぼくは(いつもしかしがつくが)ダンヒル、ラットレー(いまのブレンダーの)に親しみを覚えるときがある。たしかに熟成度の低い、青臭いブレンドだが、それだけにシャープで新鮮な閃きも感じる。それこそぼくのような年寄りの迷いで、昔を懐かしみつついまの世の中に生きている証拠なのかもしれない。

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by jinsenspipes | 2010-06-10 17:16 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(6)