Jinsen's パイプ

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ガーウィズ・ホガース:  カーリーカット ( Curly Cut )

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 YouTubeにマクバレン社の工場見学の動画があり、カーリーカットたばこの製造過程が見られる。
 カーリーカットはスリーナンズやエスクードなどコイン状のたばこだがその動画を見ると作るのは簡単。まずタバコ葉をプレスして長方形の薄い板を作る。日曜大工売り場にいくとコルクの薄い板を売ってるがちょうどあれみたいだ。それをくるくると丸めてのり巻き寿司のようにするがこれは専用の機械がやる。つぎに輪切りにするがこれも専用の機械がある。
 ぼくの知るかぎりでは昔はこうではなかった。カーリーカットはロープたばこから作ったはずである。ロープたばこはもっとも古いたばこ保存方法で船乗りが帆船のロープ作りに倣い、たばこ葉を撚ってロープ状にした。たばこ産業が成立したのちもこのやり方は踏襲され、現在でもtwist、pigtail、ropeなどの名称でわずかながら生産されている。ロープたばこは喫煙者が必要量をナイフで切り、パイプたばこや噛みたばこにしたがやがてロープを輪切りにしカーリーカットとしても売り出された。
 ガーウィズ・ホガース社のカタログにはこのロープたばこが各種掲載され、そのうち3種はすでに紹介した。ところがカタログにはカーリーカットも載っていて「Kendal curly cut sliced roll pipe tobacco」とあるのでどんなものか注文してみた。商品名にしてもその解説を読んでもまぎれもなくロープたばこの輪切りである。
 かなり崩れてわらわらになっているがわずかにコイン状の輪切りも見える。直径1cmほど。解説によるとふつうのロープたばこはラッパーとフィラーで葉が違うがこちらはラッパーに使うブライトバージニアだけを撚り、ためにマイルドになっているとある。
 火をつけてみると、ウム、甘みと酸味があり、充分熟成したいわゆる熟成臭もある。ハテ。この味はどこかで体験したゾ、と記憶をたぐってみると、スリーナンズだった!
 どういうことなんだ? スリーナンズはバージニアとペリクの銘品だがぼくはいまのオーリック社製には不満があり、ペリクをやりたくなるとほかのたばこを選んでいる。ガーウィズ・ホガースのカーリーカットはペリクを含まず、バージニアのみだが喫味がじつに似ている。ただし甘みと熟成臭はそっくりだがペリクがないので酸味とコクに欠ける。
 ネットで調べてみてびっくり。海外のたばこレビューを読むとこのたばこの評者が口をそろえて「ペリク抜きのスリーナンズである」と書いている。さらに驚いたのはTobacco Blending.comというパイプたぱこのブレンドを書いたサイトではこれをスリーナンズの代用として紹介していた。
 Three suns ( substitute for the old Three Nuns )
 4oz Gawith Hoggarth Curly Cut
 5% Long Cut Perique
 Let ingredients marry for at least two weeks.
 とある(ブレンド名のスリーサンズというのが笑えるネ)。
 そうだったのか! ぼくがいまのオーリック社製スリーナンズに不満なのはロープたばこを輪切りにするのでなく、板を丸めて作る製造法に問題があるらしいのだ。じつはオーリック社のカーリーカット製造法は確認してない。ただドイツのコールハス社の製造法は同社のサイトに写真があり、やはり板にプレスした物を手巻きで巻いているとあり、ロープたばこからではない。たぶんオーリック社も大同小異ではないかと想像される。
 海外のパイプ喫煙者の味覚の鋭さにも驚いたし、これにペリクを加えてスリーナンズの代用とするという執着心の強さにも驚いた。
 ぼくが体験した昔のスリーナンズ(およそ1970年代頃)はちょうどこのカーリーカットのようで1cmほどのコイン状、しかも半分くらいは溶けかかったというか形を失っていた。かなりじくじく湿気があり、強い熟成臭が鼻についた(その臭いはダンヒルの965に似ていたようにも思う)。かなり長期間、じっくり熱と圧力を加えて熟成させた結果である。しかも手間ひまかけてロープに撚りあげてから輪切りにした。いまのオーリック社製は熟成期間も短く、しかも板を丸めて輪切りにしている。出来上がった商品の形状はおなじだが似て非なるものである。
 考えさせられるものがある。いまの世界的嫌煙風潮のもとで、しかも需要は微小なパイプたぱこで手間のかかる昔の製造法をつづけろというほうが無茶だろうし会社は機械化、能率アップを考えるしかないだろう。またハイプ喫煙者のすべてがいまのスリーナンズに不満というわけでもないように思う。と考えると、やはりこれは老人の愚痴ということになるんだろうな。
 またしても。
 しかしそれと別に頭がさがるのはガーウィズ・ホガース社である。どうかいつまでも古式の、手間のかかる、儲からないパイプたばこを作りつづけてください。

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by jinsenspipes | 2011-05-26 23:41 | ガーウィズ・ホガース | Comments(26)

ガーウィズ・ホガース:  ルイジアナペリクフレーク ( Louisiana Perique Flake )

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 海外通販会社のカタログで見つけて試し買いしてみた。バルク買いで1オンスから買えるし、ビニール袋だから缶と違って送料も安い。貧乏人にはありがたい。とりあえず1オンス(約25g)。紙巻きたばこ1箱よりちょい高いていど。
 サミュエル・ガーウィズはアメリカ市場は全滅状態。日本でもかなり品薄になってきたが兄弟会社のガーウィズ・ホガースはあいかわらず品揃えがいい。じつはこれ、ペリクの単体だと思い、目にとまったのは縁だから試してみようと買ったのだが、違った!
 ご覧のように長いフレークでややブロークンである。マーリンフレークもこれだがダンヒルのように整然としてないほうがじつは詰めやすい。適当に分量だけちぎり、くるくると丸めてボウルに詰めればいい。
 火をつけると、ムムム、これは旨い。凄く味のいいVaPerだった。葉組はバージニアとペリクのみとされるがぼくはごく少量のバーレーを含むと思う。ケンダルたばこ独特の軽さと甘さに包まれ、しかしバージニアの味とペリクの甘酸っぱさがしっかりくる。
 Vaperではぼくはジャーマインのペリクミクスチャーとサミュエル・ガーウィズのセントジェームスフレークが一番好きだ。どちらもやや退廃の、舌に媚びる甘酸っぱさがあり、ぼくはそれがVaperの神髄と思いこんでいる。しかしこちらはもっと軽く、もっと明るい。あちらがセントルイスの夜のイメージならこちらは昼のイメージ。「朝日のあたる家」という娼婦の歌があるが南国のまばゆい陽光をあびた娼家というアンパランスなイメージがある。
 いや、それはいいすぎかな。やはりこのたばこはイギリスの湖水地方、ピーターうさぎが飛びまわる牧歌調のイメージにアクセントとしてペリクの退廃をちりばめた。そのほうが当たっているかもしれない。
 しかしいいたばこと出会えた。アメリカの通販会社のカタログだとガーウィズ・ホガース社のバルクたばこは45種ものっている。イギリスの通販会社はもっと多く、50種以上、しかもアメリカでは買えない名作エナーデールのバルクまである。どちらも1オンスからの秤売りだから送料も割安。しばらくカタログに目を凝らせて何種かまとめ買いしてみるといい勉強になりそうだ。
 追記
 不思議なことがあってルイジアナペリクフレークはイギリスの通販会社だとルイジアナフレークになっている。違うたばこかと思ったが類似のものはほかに無く、どうやら名前が違うらしい。アメリカ向けだけ名前を変えてるんだろうか。

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by jinsenspipes | 2011-05-19 22:20 | ガーウィズ・ホガース | Comments(12)

ダンヒル: ナイトキャップ ( Nightcap )

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 オーリック社製のいまのダンヒルは8種あるが、3種は未体験だった。DeLuxe Navy Rolls、Standard Mixture、ナイトキャップの3種でどれも日本では入手できない。なかでも海外通販会社で人気の高いナイトキャップは売り切れが多くたまたまみつけたのでうれしくなって注文した。
 缶を開けるとラタキアの匂い、しかし965などと比べるとやや薄い感じ。火をつけると、ああ、やっぱり! ペリクが底にあるので全体がマイルドになっていた。葉組はバージニア、ラタキア、ペリク、オリエントでその混じりぐあいがじつにいい。ペリクは舌に甘酸っぱくからみ、ラタキアはもっぱら香り、そして口内にはバージニアのふくよかな感触。そのすべてが渾然と混じりあいしかし密やかに主張してくる。ダンヒルの傑作レシピである。
 ダンヒルたばこにはバージニア葉の味わいを追求したフレークがあり、充分料理したストーブドバージニアのロイヤルヨットがあり、ラタキアとバージニアの配合の妙の965がありと、どれもくっきりした特徴をもつが、ペリクをブレンドしたものは少なくて現行商品ではナイトキャップとDeLuxe Navy Rollsだけである(後者はバージニアとペリクのみのいわゆるVaPerだがぼくは未体験だ)。なのでナイトキャップはペリクを含む貴重なレシピになる。
 じつはオリジナルのダンヒルたばこにはElizabethan MixtureというやはりVaPerがあったがオーリック社製のラインナップにはない。古いダンヒル社のカタログによるとこのたばこはエリザベス一世女王統治時代(17世紀初頭)に開拓されたアメリカの最も古い植民地で栽培されたバージニア葉を使っているとある。ただぼくの記憶では数年前にマレー社製らしいこのたばこが日本のショップに入荷したことがあったが買いそこねた。
 たまたま965を常喫していたので比べてみた。どちらもラタキアの香りと甘さがある。しかし965の甘さはキャベンディッシュからくるからやや乾いた感じ、ナイトキャップはペリクからくるので甘酸っぱく湿っている。ラタキアは強烈な個性をもつスパイシーたばこなのでその強さを発揮するほど多量に使いつつなお味わいをマイルドにするにはそうした中和剤がいるのだろう。
 ナイトキャップの発売は1951年でダンヒルの商品としては遅いほうになる。さらにElizabethan Mixtureになると1971年発売だからすでにダンヒルはCarreras社に買収されまもなく自社製造を断念してマレー社に移管する(DeLuxe Navy RollsについてはダンヒルのHistory Bookには無く、よくわからない)。ペリクを含む商品の開発が遅いのは不思議だが、じつはダンヒルのMy Mixture(顧客のオーダーによるブレンド)は1917年からペリク入りがカタログに載っている。それをFactory Blend(自社製造オリジナル商品)にしなかったのはペリクの葉が入手難だったからではないかと想像している。前にあげたダンヒル社のカタログを読むとナイトキャップとElizabethan Mixtureの説明に「高価なペリクを加えてます」とある。バージニアやラタキアには「高価な」という但し書きはないから、ペリクは実際に高価、つまり入手困難だったのではないか。極端なペリク愛好者は別としてふつうのパイプスモーカーならラタキアの中和剤はキャベンディッシュの甘みで充分、あえてペリクを必要としなかった。と、まァ、これはまったくのぼくの妄想だが、そんなことも考えてしまった。
 しかし、ダンヒルがあえて発売したペリク入りナイトキャップがいまは965と並ぶベストセラーになっている! 
 このあたりは嗜好品の宿命で、価値を決めるのはユーザーということ、おもしろいネ。
 追記: ぼくはオーリック社製ロンドンミクスチャーにもペリクを感覚する。しかしオリジナルにはペリクの記載は無く、これはオーリック社独自の裁量だと思う。オリジナルのもつ甘みや熟成感をだすために微量のペリクを入れるのはよくあることだからだ。しかしこれはまったくぼくの独断であるいはペリクは入ってないかもしれない。

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by jinsenspipes | 2011-05-16 11:49 | ダンヒル | Comments(19)