Jinsen's パイプ

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ガーウィズ・ホガース:  バルカンミクスチャー( Balkan Mixture)

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 社の説明によると、葉組はバージニア、ラタキア、オリエント、トルコ葉とある。トルコ葉はいまはオリエント葉とほぼ同意語に使われるがダンヒルやラットレーの古いカタログではとくにトルコ葉と指定されることがあるのでなにやら期待感がたかまる。ただし社の説明によるこのたばこについては「真の古典的スタイルのパルカンタイプブレンド。ラタキアと特選バージニア、そしてオリエントのミックス」とあるのみである。
 缶をあけると、GH社おなじみ、ビニールに包まれたたばこ葉は細かくやや湿り気がある。火をつけると、おっ! やわらかい甘みとかなりの酸味をともなうまるい味がきた。これはバージニアとは違う。ラタキアの香りは初めからあるが、ごく軽めで背景にかくれる。前面にくるこのまるい味、これがオリエント+トルコ葉なのだろうか。
 海外のレビューでオリジナルのバルカンソブラニーについて書いたある記事が印象にのこっている。そのレビュワーはバルカンソブラニーの葉組にあるたばこ葉のあらゆる組み合わせを吸ったがついに元の味には出会わなかった。で、結論として、こう書いている。
「バルカンソブラニーの秘密は、Yenidje葉とラタキア葉を調合した際の絶妙な相互作用、そこからのみこの味が出てくるといわざるを得ない」
 Yenidje葉にもない、ラタキア葉にもない味がこの二つを調合することによって出てくる、というのだ。
 ぼくはオリエント、トルコ、ラタキアを区別できるほどの感覚を持ちあわせないが、ふつうのラタキアブレンドはバージニア葉とラタキア葉がそれぞれを主張しつつ混じりあっているのはわかる。しかしGH社のバルカンミクスチャーのボディはバージニアともラタキアとも違うsomethingであり、もしこの評者の仮説が正しければ、まさしくオリエント+トルコ+ラタキアの相互作用が作りだした極上の味、といえるだろう。
 では、バージニアは? というと、気をつけるとときどきヘイタイプバージニアのやや青臭い味はちゃんとのこっている。これが終盤近くになるとやや濃くなり、つまりバージニアが前面に出てくる。しかし喫煙の全体に支配的なのは、その、やわらかい甘みとかなりの酸味に包まれた、ふしぎな丸い味なのだ。
 これがじつに複雑な味を含み、ときにクリーミー、ときにフローラル、一瞬、ミントのような清涼な香りがよぎるかと思うと、つぎにカカオ味がしたり千変万化する。まったくふしぎな味だ。これに比べると含みの多いバージニア葉もしょせんはヘイタイプのあの青臭さか、ストーブドタイプのミルク味+動物性の脂肪味、なんと単調なことかと思われたりする。
 ある好事家が書いたネットの記事にこういう描写があった。
「19世紀末、イギリス紳士のたばこの好みに変化があらわれた。オリエンタルミクスチャー、すなわちバージニア葉にトルコ、マケドニア、ギリシャ、シリアなどの葉を混ぜたものがたちまち上流社会に流行した。芳醇かつ煙量ゆたか、さらに中東のエキゾチックな芳香に満ちたこの新種はやがてバルカンソブラニーという傑作に集約され、ロンドンのたばこ街、セントジェームス地区のクラブに集まる将校や外交官たちの好むものとなった」
 たしかにダンヒルの965などはおなじ路線をねらったものだったろうし、ぼくの記憶にあるマレー社製965(1970年代のものでダンヒル社が秘蔵し熟成していたシリア産ラタキアのさいごの葉を使ったもの)はこの記事の通りのものだった。しかし965はあきらかにラタキア色が濃いがバルカンソブラニーは独自の調合で別種の、しかも同社にしかできない味を創造したと思われる。
 前に紹介した「Yenidjeとラタキア葉の絶妙な相互作用」と書いたレビュワーは現行たばこではこのGH社のバルカンミクスチャーがもっとも出来がよいとしている。また同意見の他のレビュワーのなかには、いいがややマイルドすぎると評する人もいる。ということはソブラニーはさらに複雑かつ大胆、微妙な味わいがあったということになるだろうか。
 しかし、ぼくとしては大満足。いいたばこに出会えたとうれしがっている。

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by jinsenspipes | 2011-07-11 16:51 | ガーウィズ・ホガース | Comments(9)

study: バルカンソブラニー ( Balkan Sobranie )

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 パイプたばこのブレンドに「バルカン」タイプというのがある。TobaccoReviews.comのブレンド一覧で調べると、現行パイプたばこで「バルカン」を名のるのがなんと19種もあった。
 博識のG.L.ピースによると、バルカンブレンドといい出されたのは1990年代から、火元は当時の銘品、バルカンソブラニーのおかげだという。いまは市場から姿を消したバルカンソブラニーはかくも名声を博し、その味を忘れかねたファンのために各社がバルカンブレンドを発売することになった。残念ながらぼくは未体験だが、現行バルカンブレンドからその銘品ぶりを知りたくなり、とりあえずその前にバルカンソブラニーについて調べてみた。
 バルカンソブラニー(Balkan Sobranie)はRedstone一族が経営するSobranie House社の製品で20世紀のいつ頃か不明だがロンドンに登場した。Redstone一族はロシアのユダヤ人で一時期バルカン半島に移住し、たぶんここでこの銘品が誕生、のちにイギリスに移住して事業を拡大したのだろう。葉組はバージニア葉とラタキア葉にマケドニア産のトルコ葉を入念にミックスしたものといわれる。しかしこのブレンドは1968年7月、イギリス最大手のギャラハー社に買収され、同社はこの複雑なミクスチャーではとても採算がとれないので製造工程を簡略化し、70年代、80年代と売りつづけるが1995年、製造を断念した。
 バルカンソブラニーをアメリカに輸入していたのはJames Russell社だが、製造中止を知らされたRedstone一族のIsasore Redstoneは同社を口説き、再発売を試みるが"ソブラニー"の商標権はギャラハー社が所有するので使えず、かわりに「バルカンサシエニ(Balkan Sasieni)」の新命名で発売する。しかし肝心のオリエント葉の調達が難問でオリジナルの味わいとはほど遠いものだった。さらに数年後、バルカンサシエニはデンマークのオーリック社に買収され、現在はオーリック傘下のヴィレガー・ストーカビー社の扱い商品としてアメリカ市場に出ている。またギャラハー社が製造を断念した1990年代以降、さきにG.L.ピースが指摘したように各社がバルカンブレンドを世に送り出すことになった。
 バルカンソブラニーの葉組は、このたばこのキーポイントがトルコ葉で、バルカン半島南部から小アジアにかけて産出されるものである。このたばこの名称はまさにバルカン半島の地名からきているし「ソブラニー」は現地語で議会を意味するそうだから、マ、「バルカン議会」というところか。またラタキアはもちろんシリア産でいまのキプロス産と違いタールの臭いが強いのにこのたばこにはそのタール臭さが少なく、メローな味わいだったそうだ。
 ラタキアの「タール臭い(tarry)」という形容詞はぼくは初めて知ったがなるほどと頷けた。マレイ社製の昔のダンヒル965がまさしく「タール臭い」たばこでいまのオーリック製にはほとんど感じない(着火した直後にわずかに匂うことはあるが)。ぼくはこれまで堆肥の臭いと書いてきたがこれは「タール臭い」+熟成臭がわかりやすい表記かとも思う。
 さらに詳しくこのたばこの葉組を書いた記事を引用しておく。
「バルカンたばこの香りはトルコ葉による。トルコ葉はバルカン半島南部と小アジアで産出され、良品はギリシャ、マケドニア、トルコのヨーロッパ側、イズミル(旧スミルナ)のものである。さらにほかに黒海沿岸部、クリミア、シリア、以前はエジプトでも栽培された。トルコ葉という名の由来は現在のトルコでなく昔のオスマントルコ帝国の支配地をさすものである。
 バルカンソブラニーの葉組はマケドニア産の"Yenidje tobacco"を芯にしている。マケドニアはかってオスマントルコ帝国に領有されていた。"Yenidje tobacco"は現在ギリシャでは"Giannitsa"、マケドニアでは"Yannitsa"と呼ばれているがどちらも海外では手に入らない。代用品はトルコのヨーロッパ側で栽培される葉である」
 参考までにバルカンソブラニーの缶に記載されたこのたばこの説明は下記である。
「この伝統あるミクスチャーはバージニア葉とラタキア葉それにYenidje葉によるソブラニー社のもっとも古いブレンドでマイルドでありながら芳醇な味わいを秘めています。クールスモーキングを約束し長く吸っても飽きることがありません」
 では現行の「バルカン」ブレンドでバルカンソブラニーに近いものは何かというと、これはもう百花斉放、人さまざまだが、バルカンサシエニはどうやら失敗作らしく評価は低い。信頼できるレビュアーの記事を読むと、やはりサミュエル・ガーウィズ社のバルカンフレーク、ガーウィズ・ホガース社の「バルカンミクスチャー」あたりらしい。しかしSG社のバルカンフレークにはトルコ葉は含まれないようである。なのになぜ類似するのか。
 このあたり葉組だけではない別の要素もあるようだ。この2種は手に入り安いので試してみようと思う。

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by jinsenspipes | 2011-07-01 21:23 | Comments(10)