Jinsen's パイプ

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ロバート・マッコーネル: グレンパイパー ( Robert McConnell: Glen Piper )

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 じつはネットで1974年頃のこのたばこのパンフレットの写真を見たのである。新発売とあった。たばこの発売年はまずまずわからないのがふつうだが、このたばこは1970年代初頭に出たようである。
「ロバード・マッコーネルが5年かけて開発したマイルドでほどほどにアロマチックなたばこ」
「伝統的イギリスたばこにちょっとひと味違うものがほしい、しかしフルアロマチックには抵抗あるという喫煙者に最適」
「最高級のバージニア葉に自然な果物の香りがしますが、この香りづけはたばこ葉に移されたあとすべてとり除いてあります」
「軽く加熱圧縮したあと手でほぐしました」
「香りは素敵だし、まわりのお友達にもよろこんでもらえます」
 パンフレットにはそんな言葉が読める。
 マッコーネルの着香物ってどんなんだろうと興味がわき、海外通販で買ってみた。
 缶をあけると甘く熟した果物の香り。やや湿っている。フムフム。期待通り。葉っぱは明るいバージニア葉に黒いキャベンディッシュがまじり、レディラブドとコースカットが半々という感じ。
 火をつけると、ああ、やはり甘い香りが漂う。レーズンだろうか。いやもっと熟した果物ような香り(あとでラム酒がまじるとわかった)。酸味もかなりある。しっかりしたボディはバージニアでほんのり甘いのはキャベンディッシュだろう。やはり極上のアロマチック・イングリッシュたばこだった。
 念のためコールハス社の記載を読むと「バージニアフレークを手でほぐしたものとブラックキャベンディッシュをミックス、少量のペリクとケンタッキーを加えた」とあり、着香については「ラム酒とチョコレート」とある。ぼくはペリクは感知できなかったがこの甘みと酸味はそうなのかと思うし、ケンタッキーについては例によってアカディアンペリクを漬けた葉でわざわざことわるあたりはいかにもドイツ人の几帳面さを感じさせる。
 この表記とオリジナルのパンフレットを比べると、やはりもともとはバージニア+キャベンディッシュ、それに独特の着香、その味をだすためにコールハス社はラム酒とペリクをくわえたのだろうと想像できる。
 さて、着香物というとぼくはアンフォーラが好きだがこれはオランダ・キャベンディッシュの傑作である。イギリスのキャベンディッシュはバージニア葉だけを加熱圧縮するが、オランダはバージニア、バーレー、ケンタッキーなど多種の葉を調合し着香物をふんだんに加えて加熱圧縮する。そこであの甘口の、マイルドな味わいが出てくる。もともとの葉の味は失われるがそのかわりおいしいケーキを食べるような味覚になる。
 1970年代というアンフォーラの全盛期である。アメリカが輸入するパイプたばこの筆頭がアンフォーラだったし、おそらく世界で売上NO1だったのではないだろうか。その頃イギリスたばこというとダンヒルのようにバージニア葉の魅力のみで勝負していたからマッコーネルとしてはアロマチックではあるがイギリス伝統のバージニア味はしっかり守ってますというつもりでこれを作ったのではあるまいか。事実、グレンパイパーの魅力はやはりバージニア+イギリス・キャベンディッシュの旨味にあり、そこに熟した果物の香りが加味されているという印象なのだから。
 P.S. この缶のラベルだが、オリジナルもそうだし海外通販のネットカタログの写真も、横缶で凝ったイラストが描かれている。ところが着いたのは縦缶でご覧のように素っ気ないラベル。これ、ちょっと不満です。クレジットはMade in Germanyだし、アメリカの輸入業者もXyz Direct社でこれはコールハス社の正規の代理店だからまちがいない品物と思うが、それともコールハス社が手抜きしたのかなァ。

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by jinsenspipes | 2011-10-22 17:26 | ロバート・マッコーネル | Comments(16)

ロバート・マッコーネル: マデュロ ( Robert McConnell: Maduro )

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 このたばこは同社のブランドのなかでもとりわけ有名でこれを常喫してきたロンドンの年配喫煙者は数多いようだ。
 ところがそういうかたにかぎっていまのコールハス社製は不評で「似て非なる物」とケナす人が多い。なにしろつい20年前までは本家のC.E.マッコーネル社のマデュロが吸えたわけだからそれももっともかもしれない。ぼくは本物は吸ってないのでそれを頭にいれてコールハス社製を買ってみた。
 缶を開けると真っ黒な葉っぱ。強いアルコールの匂いがきて湿り気がある。葉組はバージニア+ペリクで、ラム酒で着香しているのである。吸ってみると、う、やはりラム酒の匂いは強い。それとペリクの甘みと酸味がくわわり、ラム・ケーキを食べたときのようにお酒と甘みのまじった感触が心地よかった。バージニアの香りは薄く、特有の舌焼けもなく、とにかくクールに吸える。甘いたばこといってもいいと思う。悪くないじゃない。
 ブレンド名の「マデュロ」はスペイン語で英語なら「mature」つまり「熟成」である。この言葉は葉巻のラッパー葉によく使われていて特別の葉を高温でじっくり発酵させた物をさしている。このたばこもたぷん充分熟成したバージニア葉を使い、そのおかげで真っ黒なんだろうと思うが、それにしてはバージニア葉じたいの旨味に乏しい。おそらくオリジナルはダンヒルのロイヤルヨットのような独特の味わいをもっていて、年配喫煙者はそれがないのでコールハス製はだめだとするのではないか。もしこのたばこがロイヤルヨットのような深い味わいをもっていたらと想像すると、ああ、オリジナルを吸いたかったとため息がでる。
 いまのマデュロは、お酒とペリクの甘みでとろりとした、舌焼けすることもなくクールスモーキングできる吸いやすいたばこというところである。
 ところでつい20年前までこれを作っていたC.E.マッコーネル社は老舗中の老舗だった。1848年創業で1989年まで一貫して極上のたばこを生産してきた。1980年以降はラットレーたばこを外注生産し、ダンヒルの紙巻きを作っていた時期もあり、一説によるとダンヒルのパイプたばこがアイルランドのマレー社に外注される前後にマッコーネル社もそれを作っていたという。ピカ一のブレンダーだったが自社ブレンドのロバート・マッコーネル製品はダンヒルやラットレーほどの国際評価は受けなかった。つまりご商売が下手な職人気質の会社だったと思われる。1989年に廃業し、プラントはすべてドイツのコールハス社に移され、いまも稼働中とのことである。1989年といえばほんの20年前だ。その頃のイギリスではたばこ製造会社はほとんど廃業し、アイルランドのマレー社とロンドンのマッコーネル社、この2社だけといっていいくらいだった。したがって1980年代のイギリスのパイプたばこ、とくにロンドン製のパイプたばこはみなこのマッコーネル社が下請け生産していた。もちろん零細企業のサミュエル・ガーウィズ、ガーウィズ・ホガース、ジャーマインなどは零細のゆえに大企業の争奪戦をまぬがれ、生き延びたわけだが。
 ぼくはなぜかこのロバート・マッコーネルに愛着がわいている。職人気質の会社らしいという横顔もいいし、ほんの20年前まで生き延びた長命ぶりも素敵である。もう一種、マッコーネル物を買いこんであるのでつぎにそれも紹介したい。

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by jinsenspipes | 2011-10-16 17:56 | ロバート・マッコーネル | Comments(14)