Jinsen's パイプ

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ニーメイヤー: セイル ( Theodorus Niemeyer: Sail )

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 アンフォーラと並ぶオランダのキャベンディッシュたばこの銘品。ニーメイヤー社は1819年創業、コーヒー、茶、たばこを輸入製造する老舗だが、1990年にRothmans社に買収された。当時のRothmans社はダンヒルを買収しパイプたばこ界に君臨していたのだが1999年にBAT社に併合。セイルもBATの製品となる。
 たまたまぼくはネットで1970年代のアンフォーラの雑誌広告をみつけた。「アメリカの輸入たばこでNO1のベストセラーです」とキャッチフレーズにあり、オランダのキャベンディッシュたばこがいかに優れているかをしつこいほど謳っている。かつての航海王国オランダが世界中から良質のたばこ葉を買い集め、樽づめのまま数年熟成、真似できない加熱圧縮技術でケーキに仕上げたのが当社のキャベンディッシュたばこ」ですと自信満々だ。
 ところがセイル社も負けていない。アメリカの雑誌プレイボーイに広告を載せ「オランダのもっとも質の高いパイプたばこ。その理由は、1世紀にもわたる秘密のレシピ、世界から集めた良質のたばこ葉にあり」と書き「とくにこのマイルドな味わいは20代の若者に最適です」ときたもんだ。ハハハ。
 アンフォーラはオランダのダウエグバーツ社の逸品で、この会社は創業が1753年と古く、やはりコーヒー、茶などの輸入業者だったらしい。1860年に名作アンフォーラを送り出すが、1998年にたばこ部門をImperialに売却、現在はオランダ最高のコーヒー製造会社として世界に知られている(ダンヒルがたばこ部門を切り離し、高級服装飾会社として生き延びたのと似ているネ)。
 アンフォーラとセイル、オランダたばこを二分するこの傑作もいまは製造会社が移り、ぼくの買ったセイルはオーリック社製とあった(アンフォーラもたぶんオーリック製と思う)。
 さて。前置きが長くなったが、セイルである。
 ポーチ入りで、開けると、おや、アンフォーラによく似た香り、カットも昔のアンフォーラに似てリボンというよりブロークンフレークに近い荒めだ(いまのアンフォーラはカットが細かいが1970年代のはもっと荒かった)。
 火をつけると、ありゃ、アンフォーラにそっくりだ。甘いチョコレートの香り、それにミントをまぶしたような清涼感がある。ぼくはヨーロッパの住宅や建築に入ったときの独特の雰囲気を連想してしまう。なるほどこれがDutchキャベンディッシュ共通の香りなのか。イギリスたばこは石鹸臭があるといわれる。オランダたばこはこの香りであるらしい。
 しかし、待てよ。もう一種、アンフォーラと違う味がある。それは、この甘さをシラケさせる味というか、喩えていえば甘いスイカを食べるときの塩、甘いお汁粉にまぜる塩味、甘さを強調するための錘りとなるもう一つの調味料。
 と、ここまで連想して思い出したのがGH社のボブズチョコレートだった。あれにはラタキアが入っていたナ。チョコレート味にラタキアは、スイカやお汁粉の塩味にあたるらしいゾ。やはりそうだった。セイルの葉組を読むと「ごくわずかのラタキア葉がこのレシピを忘れ難き味に仕上げています」とあった。
 おなじDutchキャベンディッシュだが、アンフォーラはストレートに甘口、セイルは塩味を効かせた大人の味、やはり個性が違っていたのだ。
 しかし、共通するこの甘い香りはしっかり記憶した。Dutchキャベンディッシュの感触はおさえたとぼくは満足である。

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by jinsenspipes | 2011-11-28 11:57 | ニーメイヤー | Comments(24)

ラットレー: ダークフレグラント ( Rattray's Dark Fragrant )

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 ブラックキャベンディッシュの最高傑作とされる。
 ロバート・マッコーネルのマデュロで書き忘れたが、あれもブラックキャベンディッシュの傑作で、この二つは並べて語られることが多い。
 缶を開けるとこちらも真っ黒な葉。マデュロとそっくりで区別つかない。やや湿り気のあるところもおなじ。やはり熟した果実の甘酸っぱい香りがあるが、マデュロはラム酒で着香されるがこちらはバージニア葉そのもの、しかしわずかにペリクで甘みと酸味にアクセントをつけている。
 しかし基本の味は最良のバージニア味で、これだけ料理しても青臭さを失わないし、ヘイタイプのややぴりぴりする感触はまったくなく、ひたすらマイルド、じつに旨いたばこだ。
 ここのところぼくはキャベンディッシュに目覚めたのである。ちょっと深入りしたくなり、まずは典型を舌に憶えこませようとこれを選択した。キャベンディッシュはバージニア葉を加熱圧縮し、いわばじっくり煮こんだ料理あるいは深煎りしたお茶というところである。葉の持つ味わいを最高度に抽出しつつ味をマイルドにする。ヘイタイプのバージニアは料理でいえば刺身か塩焼き。手をくわえず素材の生の味をのこそうとする。しかしキャベンディッシュはじっくり火を入れ、たっぷり時間をかけ、素材の隠れた味を引き出したものである。イギリスの伝統技術が生んだ最高の料理だ。
 じつはぼくはDutch & Dane ( オランダとデンマーク )のキャベンディッシュに興味がわいたのだった。キャベンディッシュは国により作り方が異なり、イギリスはバージニア葉のみを使い原則として着香料は加えない。しかしDutch & Daneはバージニア葉、バーレー葉、その他の香味たばこを自由に混在し、ふんだんに着香料をかけ、甘口のとろりとした独特のキャベンディッシュに仕上げる。その最高傑作がオランダのアンフォーラだし、デンマークのマクバレン社製バニラクリームもじつにユニークな味をだしている。ただバニラクリームがデンマーク・キャベンディッシュの典型かどうかはぼくはまだ不明。マクバレンのほかのたばこやボルクムリーフも試してみたいと思っている。
 ほかに現代のキャベンディッシュの傑作にアメリカのレーン社製キャプテンブラックがある。ぼくはこのたばこ、1990年代に初めてやり、ベタ甘だが旨いと思ったことがある。ところが5、6年前、また買ってみると、とにかくPG味が強く、たばこを吸ってるんだか化学薬剤吸ってるんだかわからなくてがっかりした。この会社はダンヒルパイプたばこのアメリカの代理店で自社ブレンドにも定評があるんだがひょっとしていまは外注製造しているのかと思う。つい最近レーン社はデンマークのSTG社に買収されただがそうなるとこんごのキャプテンブラックはオーリック製になるんだろうか。マ、それは別としてこのたばこには数種の銘柄があり、PG味が強くないものもあるらしいからいつか再挑戦してみたい。
 横道にそれちゃったがラットレーのこのたばこは評判通りの逸品だった。バージニア葉を時間かけて丹念に料理し、持ち味のすべてを全開させている。イギリスのキャベンディッシュの一番おいしいところを味わい、さて、つぎにオランダやデンマークは何をたばこに求めようとしたかのか、先に進んでみたい。

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by jinsenspipes | 2011-11-16 21:21 | ラットレー | Comments(23)

フリボーグ&トレイヤー: ゴールデンミクスチャー ( Fribourg & Treyer: Golden Mixture )

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 マッコーネル社製のつづきになる。このたばこはロンドンのたばこショップ、フリボーグ&トレイヤーの依頼で作った。
 フリボーグ&トレイヤー店は1711年にロンドン市に開店したもっとも古いたばこショップの一つ。当時は嗅ぎタバコ全盛期で国王ジョージ4世もこの店の嗅ぎタバコご愛用だったそうだ。ロンドン市内に3店舗を持ち、とくにヘイマーケット地区に1720年に開店した店はロンドンの観光案内に名物店として紹介されてきた。
 ぼくがこのたばこに興味を持ったのは理由がある。海外のたばこレビューを読むうちにおもしろい評があった。
「みなさんは1980年代、ごく短期間だがマッコーネル社が発売したエレファント&キャッスル(EC)という銘柄をご存知だろうか? じつに良心的銘柄でロンドン子に喝采で迎えられたが、その銘柄のThe Roanokeはじつはフリボーグ&トレイヤー(FT)のゴールデンミクスチャーだった。FT店のたばこは長くロンドンでは定評だったがこのゴールデンミクスチャーだけはどういうわけか絶版になっていた。EC社の発足時、マッコーネル社のケン・マッコーネルはそれを惜しみおなじレシピをEC社のThe Roanokeとして発売することにした。これはロンドン子には衆知のことでEC社のThe Roanokeはベストセラーとなった」
 なんかそそられますよね。
 FT店のたばこもEC社のたばこもマッコーネルが廃業する1989年に姿を消すが、FT店のたばこはその後ドイツの会社が復刻版を出すことになった。もっともFT店は嗅ぎたばこのほうが有名で復刻版の話題はもっぱらそちらのほうが繁盛しているようだがパイプたばこも出ている。当然コールハス社製と思ったがどうやらプランタ社製らしく、そのあたりの事情はよくわからない。
 というわけで海外通販で買い、期待して缶をあけると、おっ、黄色葉のバージニアがびっしり。文字通り黄金色である。
 火をつけると、ムムム、マイルド! じつにやわらかい煙。しかしバージニアの甘み、酸味はしっかりくる。青臭さはほとんど無いがバージニアの旨味は充分ある。うーん。こういうバージニアもあるんだ。
 海外レビューのこれの評は良好で、しかも評者の多くは1980年代にロンドンでこれを吸ったかあるいはアメリカで輸入品をやったかたに限られているようだ。ドイツ製になっても味は変わらないという評価がうれしい。つまり初体験のぼくもほぼ当時の味わいをたのしめるわけだ。
 ダンヒルにしろラットレーにしろバージニア物はこの葉からいかに最良の味を引き出すかに専念しているように見える。たまたまSG社のFVFも空いているがこれもまたしっかり熱処理しながらバージニア葉の青臭さ、甘み、酸味をイヤッというほど出しきっている。しかしこちらは逆なのだ。バージニア風味は背後にのこしながら喫味はじつに軽く、まるで紙巻きを吸ってるよう、しかしやはりどこかにまぎれもないバージニア味が漂う。
 ぼくはこれが1980年代のロンドンの「粋」なのではないかと思った。バージニア風味? そんなのはわかりきってる。わかりきったことをくどくどやるのは野暮というものだ。このたばこをやってご覧。風のように軽いだろ。シティボーイはこうじゃなくちゃ。通りの若者をみてご覧。いまはブレークダンスの時代なんだから。アハハ。
 マッコーネルという会社はそんな会社だったのではないか。1980年代といえばダンヒルはすでに行方不明、ラットレーもマッコーネルに移管され、マレー社も青息吐息、パイプたばこの行く末も先が見えている時代である。まもなくアメリカのレーン社がブラックキャベンディシュの傑作キャプテンブラックを発売し世界一の売上を誇ることになる。そんな時代のバージニアなのである。
 ロンドン一の名たばこショップだったフリボーグ&トレイヤー店は今は廃業し、お店だったところはスーベニールショッブになり絵葉書やら土産物やらを売ってるそうな。

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by jinsenspipes | 2011-11-01 22:48 | フリボーグ&トレイヤー | Comments(21)