Jinsen's パイプ

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サミュエル・ガーウィズ: ネイビーフレーク ( Samuel Gawith: Navy Flake )

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 これもまたユニークなたばこである。
 缶をあけるとSG社にはめずらしい、1インチ x 3インチの整然としたフレークが2列に並んでいた。そして熟成したバージニアの脂っぽい匂いに、強いアルコール(ラム酒)の香りと香辛料の香り、いわゆるペパリーというやつでこの香辛料はフルバージニアフレークに共通する。
 さっそく1枚を4つ折にしてボウルに詰め、火をつけると、ああ、やはりラム酒の香りが強かった。甘く、やや饐えた香りがつねに漂う。ぼくが吸ったラム酒入りたばこのなかでは一番である。バージニア葉にやや葉巻の味がする。それで思い出したのはガーウィズ・ホガースのロープたばこ、カーリー・カットで、あれは葉巻に使うラッパーを巻いたたばこなので当然葉巻味がする。SG社もロープたばこは製造しているからやはりラッパーか、あるいはブライトバージニア(バージニア葉の先端部分だけを使ったもの)ではないかと想像した。もっともぼくはバージニア葉の種類や部位を識別できるほどではないからほんの妄想にすぎないが。
 前に書いたゴールデングロウがのこっているので交互にやっているが、比べると、あちらはほのあたたかい煙がくるがこちらはじつに涼しい煙、クールスモーキングできる。じつは隠し味があるのだ。ラタキアをごく少量含んでいる。GH社のチョコレートフレークで書いたが、わずかのラタキアがたばこをクールにする。吸っていてまずまず気づかない、いわゆる隠し味で、もしかしたら葉巻味と書いたのもラタキアのせいとも思われる。このあたり詳しいかたにうかがいたいところだ。
 このたばこがnavyと名づけられたのはふしぎである。そもそもnavyたばこの原型はスリーナンズやエスクードなどのコインたばこだった。たばこは船員のあいだでまずひろまったが、大航海時代の船員はたばこ葉をロープに撚り、ラム酒をびしゃびしゃかけて乾燥させ、ポケットに入れた。吸うときはナイフで必要量を削りとるのである。それを製品化したのがコインたばこで本来のこれはまずたばこ葉をロープに撚り、そのあとコイン状に切り出した。しばらくしてプレス機械が登場し、手間ひまかかるロープたばこよりブレスし、箱型にしたケーキを適当な大きさに裁断したプラグたぱこ、さらに薄切りにしたフレークたばこが商品化され、それにつれてnavyたばこもフレークたばこをさすようになった。その頃になるとはじめからたばこ葉を細かく裁断したリボンカットや、手巻きたばこ用にうんと細かくしたシャグカットもあらわれたから、塊をぶった切ったようなプラグやフレークは、マ、乱暴な船員御用達と見なされたんでしょうね。
 しかし船員用のnavyたばこは本来バージニア葉オンリーのもので商品化したスリーナンズやエスクードはそこにペリクをまぜたところに商品価値を付加した。ましてやラタキア入りのnavyなんて聞いたことがない。SG社のこれをnavyとするのはラム酒をふんだんに使ったという一点のみで、ラタキアを混入し、味わいを一層複雑にしたこれをnavyたばことするのは不当だとする愛好家も多い。たしかにそれも一理ある。またそういう議論がでるところが嗜好品のおもしろいところですね。
 しかしラム酒の香りをまき散らしながらコクのあるバージニアをぷかりぷかり、大航海時代に思いを馳せるのはたのしいものである。ちょっと異質なバージニアたばことして記憶にのこしておきたい。

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by jinsenspipes | 2012-01-29 16:46 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(12)

サミュエル・ガーウィズ: ゴールデングロウ ( Samuel Gawith: Golden Glow )

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 サミュエル・ガーウィズ社の近年の作である。サイトのカタログにも「new!」印がついているがぼくの記憶では5、6年前には載ってなかった気がする。海外のあるレビューに2008年のシカゴ市のパイプ展示会で知り、初めて喫煙したという記事があるのでそのあたりなのかとも思う。18世紀に創業し、200年の歴史がある会社の最新作、21世紀の作という興味もある。
 ブレンド名に「ゴールデン」とつくのはイエロー・バージニア葉を使っているからである。バージニア葉は熱処理の度合いによりイエロー、レッド、ダークと色が濃くなっていく。イエロー・バージニアはもっとも軽く、明るい黄色で青臭さや酸味、甘みともに一番強い。しかしさらに熱処理したレッド・バージニアに比べるとコクや深みがやや欠けるし、バージニア葉特有の舌焼けもあるのでふつうは数種のバージニアをミックスして仕上げている。ことさらに「ゴールデン」と命名するのは長所も短所もあるイエロー・バージニアでいい味をだしているという自信作にほかならない。
 じつはつい最近までフリボーグ&トレイヤー社の「ゴールデンミクスチャー」を吸い、その黄金色に輝くみごとな葉と、イエロー・バージニアの味を毎朝、堪能していた。それが空き、いまはGH社のペリクミクスチャー、SG社のコモンウェルス、ラットレーのダークフレグラントがそれぞれ少量のこっているが、バージニアのストレート物がない。そこでこれを買ってみた。
 缶を開けると、ウム、やはり黄色葉のブロークン・フレークだった。レディラブドほど細かく裁断せず、いわば手でこそげ剃ったようなわらわらフレークで、かなり湿り気がある。これは適量をつまみ、丸めてボウルに詰めればいいから楽である。リボンカットのように詰めぐあいを吟味したり、端切れが散らばったりステムにもぐりこんだりしないから快適。パイプをくわえると目の前に黄金色の葉が山盛りされていていい感じ。その名の通り「ゴールデングロウ(黄金の輝き)」である。
 火をつけると、おなじみの青臭さ、酸味、かなりの甘みがとびこんできた。本来ならかなり舌にヒリヒリくるはずだがそれもほとんどなく、マイルドで、じつに吸いやすい。火つきもいいし、火持ちも抜群。再着火するまでもなくさいごまできれいに吸いきれる。なるほどこれがSG社が世に問う最新作なのか。
 フリボーグ&トレイヤーの「ゴールデンミクスチャー」のときも感じたが、このたばこも若いパイプ入門者向けなのだと思う。SG社のラインナップにはコクと旨味ではひけをとらない銘品がずらりと並ぶが、いずれも重厚、2時間かけて沈思黙考しつつたのしむには絶好だがシガレット感覚で気軽にやるには重すぎるかもしれない。またそれだけ時間をかけて深みを追求する余裕もいまの若い世代にはないかもしれない。
 マイルドだがバージニアの旨さは充分、ニコチンも弱め、火もつけやすいし、火持ちもよくて手軽に扱える。時代の要求に応えた良品だとぼくは思う。
 しばらくは朝の一服をこれでたのしみたい。

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by jinsenspipes | 2012-01-15 20:06 | サミュエル・ガーウィズ | Comments(41)