Jinsen's パイプ

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マクバレン: ソレントミクスチャー ( Mac Baren: The Solent Mixture )

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 またまた傑作と出会えた。
 このところぼくが一番気になっているのがデンマークのマクバレン社である。イギリス物、オランダ物はだいたい見当ついてきたがデンマークたばこがいまいちわからない。しかしこれまでやった同社のバージニアNo1、バニラクリーム、バーレーロンドンブレンド、いずれも逸品だった。
 マクバレン社の歴史は1887年まで遡るが、社名をマクバレンとして再出発したのが1950年、その最初の商品がこのソレントミクスチャーである。さしづめこのあたりをやったらデンマークたばこの奥行きがわかるかもしれない。
 100g缶を空けると、かなり強くラタキアが香った。しかも、なんと昔のダンヒル965にあった甘い熟成臭もあって期待が高まる。
 火をつけると、ウム、これは!
 バージニア葉の香り + ラタキアの燻製臭、それもしっかり熟成され、ややじくじく湿った臭いがある。プラスしてキャベンディッシュの甘みと酸味がきた。これはまるで干しぶどうの感じ。どうやらバーレーもまじるらしく、バージニア葉の鋭さを丸くしているしやや木の実の味もある。そのいろんな味わいがどッといちじにやってきてじつにカラフル。しかも全体はまろやかで軽快。や、これは素敵なたばこだ!
 葉組は想像通り、バージニアにシリア製ラタキア、キャベンディッシュ、バーレーとある。シリア製ラタキアは昔のダンヒルもラットレーもそうだったが、1970年代に輸出禁止になり、各社、キプロス製に切り替えたはずである。近年また輸出再開になったようだがマクバレンは禁止時代をどう乗りきったのか。知りたいところである。ぼくはこのラタキアに熟成臭を感触したが、マクバレン社の解説を読むと、どうやらフレイバリングにラム酒を使っているせいらしいとわかった。熟成臭と思ったのは間違いらしい。しかしこのラタキアは965のような強い刺激がなくマイルドでじつに爽やか。もっとも965はオリエント葉の配合が多いのでラタキアが強調されているかとも思うが。
 初盤はいろんな味と香りのハーモニーをたのしんだが中盤以降になるとそれが渾然一体となった。ラタキアは最初ほど強く主張せず、かわりにバージニアとキャベンディッシュが全面にきた。甘みと酸味が強く、前に書いたが干しぶどうの感触がある。ラベルの解説にオリジナル・マクバレン・キャベンディシュと書かれているが、やはり俗説通り、Dutch & Daneの特色はこのキャベンディッシュにあるのだろう。DutchのアンフォーラのキャベンディッシュとこのDaneのキャベンディッシュ、いい対称である。それに比べるとラットレーのダークフラグラントのあの無骨なキャベンディッシュなど、イギリス気質丸出しの感がある。
 さきに書いたがマクバレン社は1887年創業のデンマーク一の由緒あるファミリー会社で、その子息が20世紀初頭にアメリカで修行し、帰国後、マクバレンの商標で新製品を発売する。第一号がこのソレントミクスチャーである。やはりアメリカ市場を狙ったものと思われ、缶のラベルには「English Mixture」と書かれ、ダンヒルやラットレーの愛好者に的を向けているようだ。アメリカ人の評価もおおむね良好で、軽いEnglish MixtureあるいはマイルドなEnglish Mixtureという評が多い。
 しかし日本人のぼくとしてはやや異なる感想をもった。イギリスたばこは直球一本槍、バージニア葉にしろ、ラタキア葉にしろ、その極限をつねに追求しているようにみえるが、デンマークたばこはむしろブレンドの妙、香りや味の重なりぐあいをたのしんでいるようにみえる。その繊細な配慮が日本人のぼくには親近感がわく。しかもイギリスたばこといってもダンヒル、ラットレーはいまは自社製造ではなく、創業以来の伝統を保持しているのはサミュエル・ガーウィズ、ガーウィズ・ホガース、ジャーマインの3社だけである。マクバレンはそれに匹敵する歴史をデンマークという国で背負っているのだ。
 イギリス物よりマイルド。しかしたばこ葉の味はしっかり出し、加工技術は繊細にして精緻。80人のオーケストラが全員でピアニシモを奏でる、その満々の体力を秘めつつ、音はやわらかくやさしい。マクバレンのいろんなたばこをやってみたくなった。

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by jinsenspipes | 2012-04-28 15:44 | マクバレン | Comments(20)

ペーター・ハインリヒ: ダークストロングフレーク ( Peter Heinrichs: Dark Strong Flake )

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 また新しい味に出会った!
 ハインリヒ社のスベシャルカーリィがおいしかったので別のも試したくなった。これは葉組がバージニア葉とケンタッキー葉とあり、ぼくはケンタッキー葉の旨味がいま一つわからなかったのでその興味もあった。
 缶を開けると、甘いお酒が香る。ワインをふりかけたという感じか。小さなフレーク、幅1cm x 長辺4cmくらい。ややブロークンで崩れたものも混じる。あきらかにこのたばこはケーキたばこを作り、それをスライスしたものである。
 吸ってみると、まず強い甘み。チョコレートの味もまじる。それと酸味。これはお酒のせいか。そしてバージニア葉の味がここではやや異質に感じるのはケンタッキー葉のせいである。
 前にぼくはケンタッキー葉の味わいを知りたくてガーウィズ・ホガースの単体ケンタッキーを試したことがある。ケンタッキー葉はバーレーの一種だが、バーレーは自然乾燥なのにケンタッキーは火力乾燥、いわば炙りたてて香りを出し、バーレーなのにややバージニア風の味わいがあった。そしてバージニアは青臭い草の匂いがあるがケンタッキーはむしろ樹木の生木を裂いたときのような強い匂いがする。
 ダークストロングフレークの香りがそれでしかもややtoastあるいはroastしたような焦げ味があり、それが心地よい。いや、これはぼくにとって新しい体験だった。その強い樹木の匂いにブラス、甘みと酸味、ときおり果物の香りが漂うときもありじつに奥が深い。ケンタッキー葉がこんな広がりを持つたばこだったとはつゆ知らなかった。
 フレークをよく観察してみると、茶色のところと黒いところが層をなしている。つまりバージニア葉とケンタッキー葉を交互に重ねてブレスし、まずケーキを作り、それをスライスして切りだすという手間をかけているようだ。
 さて。識者によると、このたばこはオーリック社のダークストロングケンタッキー ( Orlik: Dark Strong Kentucky )と同じ製品なんだそうだ。そちらは以前から根強いファンがいたが、2006年、名称をダークケンタッキーと改名、たぶんストロングという言葉が似つかわしくないというのでカットしたらしい。ところが何故かこのたばこは2007年にアメリカ市場から姿を消し、これを常喫していたファンは困惑してあちこちのフォーラムに記事があふれた。そのうちが情報が流れ、ハインリヒ社のこれがまったく同製品だというのでファンは一斉にこれを吸いだしたという事情がある。
 ハインリヒ社はパイプたばこを自社製造しないのでオーリックに委託製造しているとも考えられるが、ある識者は、いや、そうではない。中味はオーリックのダークケンタッキーそのもの、いわば包装が違うだけだという。このあたりどうなっているのか。どうもバイブたばこ界の事情はミステリアスでよくわからない。
 ところでまたぞろアメリカにそっくりさんが出現した。G.L.ビースのジャックナイフブラグ ( G.L.Pease: JackKnife Plug )である。これは昨年1月にまずブラグたばことして発売され、そのあとレディラブドも出ている。葉組もおなじ、バージニア葉とケンタッキー葉を層をなしてプラグ(イギリスでいうケーキ)にしたところもおなじだ。ぼくはまだ未体験だが、もし試されたかたがいらっしゃったらぜひ感想をお寄せください。

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by jinsenspipes | 2012-04-12 20:46 | ペーター・ハインリヒ | Comments(41)