Jinsen's パイプ

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エソテリカ: ドーチェスター ( Esoterica: Dorchester )

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 ときどきコメントをいただくtango6さんがこのたばこを最大級の賛辞とともに推薦された。すぐ注文しようとしたがあいにく欠品つづき、ようやく手にすることができた。tango6さんもVaPer好き。きっと旨いゾ。
 缶をあけると、バージニアの明るい葉がたくさん、そこに、あれ! 梅の香りがする。この香りはジャーマインのブラムケーキそっくりでぼくの大好きな香りだからかまわないがちょっと意外だった。
 火をつけると、う、香り高いバージニア味にやはり梅の香がただよう。どうやらこのたばこ、トップフレイバリングに梅の香りをスプレイしてあるようだ。ぼくは一瞬プラムケーキを吸ってる気になってしまった。
 これはたいへんおいしいバージニアたばこである。社の説明では6種のバージニアを配分しているという。そこまではぼくにはわからないが、ブライトの青臭さから甘いダーク葉まで、じつに複雑なバージニア味がする。そしてどうやらペリクはほんの少量でもっぱらバージニアの引き立て役にまわっている。ぼくの好きなVaPerはペリクが強いのが多く、その強烈な酸味と甘みが前面にくるのばかりだがペリクはもともとバージニアを際立たせる役目だからこれでいいのだろう。
 当然だがペリク味は希薄で、そこを梅の着香が埋めている。つまり年増女のようなしなだれかかるペリク味のかわりにさわやかな乙女のあるかなしかの体臭が香るというところだ。
 このたばこにはケンタッキー葉がまったく匂わない。というのはいまのペリクはすべてアカディアンペリクなので当然ケンタッキー葉が匂う。このたばこにしてもまさか純正ペリクのはずはないが、それが匂わないのは少量であり、さらに梅の着香で匂いを消しているのではないか、そんなことも想像した。
 梅の着香はさすがに中盤以降は影が薄くなり、かわってペリク本来の酸味と甘みがくるが、それもごく控えめで、むしろバージニア葉の旨味が全面をおおっている。それとバーレーが若干まじるらしく後半は木の実味がでてくる。
 バージニア葉の深い味わい、そこにかすかに梅の香りとうっすら酸味がのる。じつに優雅なたばこであった。
 ところで一つ訂正がある。
 前にエソテリカのダンバーを紹介したとき、エソテリカは著名パイプ作家、ビュテラのレシビと書いたがこれは間違いだった。エソテリカはアメリカのたばこshopと、バルカンソブラニーを世にだしたソブラニー社のレシピで現在はジャーマイン社が製造する。
 こういう歴史がある。
 アメリカのコロンバス市にSmokers' Havenというたばこshopがあり、1950年代から70年代にかけて全米一といわれるほど隆盛した。このshopはハウスブレンドにも熱心で、自家製たばこがたくさんあるが、すべてソブラニー社に製造委託していた。ところが1978年、ソブラニー社が廃業したので後継にジャーマイン社に委託したが、1983年にはこの店じたいが代替わりし、ほとんど廃業寸前にまで縮小、ハウスブレンドも市場から姿を消した。
 当時、ジャーマイン社のたばこのアメリカ代理人だったSteve Richmanがこれを残念に思い、ジャーマイン社が作るSmokers' Havenのハウスブレンドの名を変えてシリーズ化することを思いついた。これがエソテリカ(正確にいうとEsoterica Tabaccianaで訳せば「秘伝の古たばこ」となるか)である。
 しかしそののちSteve Richmanはエソテリカのすべての権利をビュテラに売却したのでそれ以後はビュテラのエソテリカシリーズということになったのだ。前のぼくの記事はビュテラのインタビューを参考にしたがそのときビュテラは詳しい事情を語っていないのでてっきり彼のオリジナルレシピと思いこんでしまった。お詫びして訂正します。

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by jinsenspipes | 2012-08-28 21:01 | エソテリカ | Comments(15)

ピーターソン: ユニバーシティフレーク ( Peterson: University Flake )

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 こんどはアイルランドのたばこである。
 パイブメーカー、ピーターソンの名はそのユニークな作りで知られる。ぼくも初心者の頃1本買い、しばらく愛用していたが、煙が上に抜けるあのシステムがうっとうしくなっていまは出番がない。
 アイルランドのダブリン市の老舗で、自社ブランドのパイプたばこもあるがそちらはおなじダブリン市のマレー社に製造委託してきた。パイブのピーターソン社、たばこのマレー社、並んでダブリンの名企業として成長したのだ。マレー社はのちにダンヒルたばこを委託製造し、また銘品、エリンモアも送りだすがお決まりの資本戦争に台無しにされていまは廃業している。現在のピーターソンたばこはドイツのコールハス社が作るが缶の包装にはピーターソン社のマークがあるからさぞ厳密な検査を受けて市場にだされていると想像したい。
 缶をあけると、3cm x 7cmのしっかりしたフレークが2列に並ぶ。4つ折りにしてボウルに詰め、火をつけると、わずかな甘みとあるかなしかのイギリス着香にまじっていいたばこの香りがきた。バージニア味をバーレーが丸くしている。着実にスローバーニングするたばこで吸いやすく、マイルドだ。
 日頃やってるバージニア・フレークほど強い個性はなく、とりたてて旨いというほどではない。いわばごくふつうのたばこというところである。しかし、吸いつづけるうちにぼくはこのたばこのよさがわかってきた。
 余談だが、ぼくの学生時代、常喫したシガレットは「いこい」だった。両切りで20本入り40円。もっと高価なたばこに香りのいいピースがあるし安いたばこなら新生がある。「いこい」はごくふつうの手頃なシガレットだった。シガレットはニコチンの補給が第一だし、まだたばこの味もよくわからない頃だから、適当に安価、吸えばたちまちニコチンが体内をまわるこれは手放せないたばこだった。

 ユニバーシティフレークはそんな位置にあるパイプたばこに思える。アイルランドのネットショップを見るとパイプたばこはピーターソン、ダンヒルのほかは自社ブレンドと見知らぬブランドが2種、それだけしか載ってない。価格はダンヒルが1割がた高い。ピーターソンはこの国のもっともふつうの、誰でもやるたばこではないかと想像する。価格についてはアメリカのショップもやはりダンヒルより1割がた安く、手頃な価格である。アイルランドたばこはニコチンがきついと聞いたのでもっともマイルドと評判のこれからはじめてみたが、それでもニコチンはかなり強い。フレークなので屋外でも吸いやすく、ニコチンの補給も充分、価格も手頃、まずは気安いたばこだった。しかも味はきわだってはいないがしっかりしているのだ。
 これを買ってから朝の一服はこれになった。今朝、試しにオールドゴーリィをやってみると、やはりその存在感は抜群で、香り高いバージニア味に恍惚となった。しかしユニバーシティフレークにはべつのよさがある。たばこの味はさほど主張してこないがゆっくりふかしているうちにニコチンが心地よく体内をめぐり、夏の陽射しにきらきら光る庭の木立がきわだって美しく見えてくる。感覚がひらき、心がうごきはじめる。おだやかでつつましいたばこである。
 アイルランド人というと気性が激しく、アメリカに移民した当初はニューヨークの警官や消防士はみなアイルランド人だったそうだが、このたばこをやっていると、じつは心のやさしい、質実剛健、自然と調和するおだやかな時間の経過をなによりとする愛すべき人たちなのではないか。そんなことも考えた。

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by jinsenspipes | 2012-08-14 20:42 | ピーターソン | Comments(12)

マクバレン: バニラクリームフレーク ( Mac Baren: Vanilla Cream Flake )

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 マクバレンのポーチ入りバニラクリームは昔からぼくのお気に入りだがそのフレーク版がとてもおいしいと教えてくださったのはmifuneさんだった。前からやってみたかったところ先月の海外オーダーでようやくこれを追加できた。シガレット1箱ぶんほどの小ぶりな大きさで見るからにシックなたばこである。
 缶をあけるとかなり強いバニラの香り。この小さい箱に2.5cm x 7cmのフレークが2列に収まるがこれがかなりワラワラで摘もうとするとホロッと崩れそうである。さて、どのパイプに詰めたものかと迷ううちにサビネリの920番、トップが開いた朝顔型でやってみることにした。慎重に1枚とり出し、縦長に4つ折り、詰めてみると高さはちょうどいいが上が開いているのですかすかである。返すとポロッと落ちそう。頭をピックでちょいと崩したがそれでもゆるゆるだった。しかしこのフレークはこのやわらかさが身上のようなので押しこめるのは止め、すかすかのままで火をつけた。
 なにしろリボンカットならゆる詰めもいいとこなのでおそるおそる吸ってみる。うん。いい感じ。懸念した強いバニラの香りはスプレイしただけのようで火をつけるとさほどこない。ゆっくりふかしていると、酸味のきいたおいしいバージニア+バーレーのやわらかい味がくる。そこにわずかにバニラが香り、じつに優雅。このやわらかさはちょっと尋常ではない。酸味があるし、かすかにマクバレンお得意の蜂蜜の甘みがあるのでまるで果物の桃を食べているよう。バニラの香りに桃は不似合いだがこの香りづけはごくわずからしいのでむしろ果物の甘さのような感触に思えてくる。やわらかく優雅なたばこである。
 じゃ、ポーチ入り、ルーズカット版とどう違うかというと、どうやら違いは詰め方と吸い方によるらしかった。ポーチ入りのほうが吸ったときのバニラの香りが強いのはやや硬めに詰め、やや強めに吸いこんでいたようである。なのでフレーク版のなんともやわらかい感じはあまりなかった。このあたりがフレークのよさで、これは固形なのでただボウルに収めるだけ、あとはたばこの燃焼速度にあわせて吸っていればいい。その燃焼速度はフレークにプレスするときメーカーが計算しているはずである。
 シガレットはくるんだ紙のせいで放っておいても燃えつづけるがパイプたばこは放っておくと消えてしまう。だから適当に空気を送りこまなければいけないといわれている。しかし、乾いた草なんだからそう急には消えない。あるていど燃えつづける。そこで自然に燃えてるあいだは放っておき、消えそうになったらわずかに空気を送ってやる。フレークの吸い方はそれでいい。一方、ルーズカットは自分で詰めるから硬さを調整できる反面、メーカーが想定した燃焼速度と大幅にズレてしまうことがある。うんと硬詰めにして強く吸う人もあり、ゆる詰めにして軽く吸う人もいる。たばこによって詰め方、吸い方を調整するのもベテランのたのしみの一つになっているようだが、ぼくのようなものぐさはメーカーが計算した速度で吸えばいいフレークのようがよっぽど楽だ。おまけにルーズカットは詰め方を均一にするのがむつかしく、途中で何度も消えてしまうが、フレークは最初の着火さえしっかりすればまずまず最後まで消えることはない。
 マクバレンのバニラクリームは長いこと吸っていたが、これほど繊細で優雅なたばこと知ったのはフレーク版だった。mifuneさんに感謝しなくちゃいけないですね。

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by jinsenspipes | 2012-08-04 21:45 | マクバレン | Comments(4)