Jinsen's パイプ

<   2012年 10月 ( 3 )   > この月の画像一覧

ロバート・マッコーネル: スコティッシュフレーク ( Robert McConnell: Scottish Flake )

a0150949_20502115.jpg
 ひさしぶりのマッコーネルたばこである。
 前にも書いたが、マッコーネル社はロンドンの老舗で1848年の創業から100年を越す年月、銘品を送り出してきた。自社ブレンドだけでなくダンヒルの紙巻きを作っていたこともあるし1980年以降はラットレーたばこを外注生産する。1980年代といえばロンドンのたばこ会社は壊滅状態で、マッコーネル1社のみ、この地のたばこshopのハウスブレンドまで一手に引き受けていたが、1989年、時代の波には勝てず廃業。設備一式はドイツのコールハス社が買い上げたのでその後はマッコーネルたばこも、またマッコーネルが作っていたラットレーなど全商品がコールハス社の製造となった。
 ぼくはこれまでマッコーネルたばこの「スコティッシュケーキ」「マデュロ」「グレンパイパー」を紹介してきたがこのスコティッシュフレークは、フレークたばこであること、通販会社などに掲載された紹介文によると数種のバージニア葉を独自の工法で熟成させたとあるので興味が沸いた。つまりバージニアフレークだというのだ。
 ところが実際に吸ってみると紹介文とは大違いだった。
 缶をあけると、強い酸味と甘い香り、ぼくはりんごを連想したが、ラム酒のようである。あれ? 着香してあるのか。フレークにはまちがいなく、4cm x 6cmでこれがとても薄い。ふつうのフレークの半分くらいの薄さである。
 火をつけると、あ、これは、ペリク入りだった! バージニア+ベリクで、ケンタッキー葉の香りもあった。バージニアのベースにペリクの酸味と甘み、それをラム酒が強調し、とろんとした感触。さらにケンタッキーが腰を強めている。なんとぼく好みのたばこだった。バージニア葉にちょっと特徴があり、青臭さはもちろんだが何か異種の味もまじる。そのあたりが複雑な味わいをみせてなかなか奥が深いたばこである。
 初めてのたばこを買うときは通販会社の紹介文やネットのレビュー記事を参考にするが、そのどこにもペリクやラム酒の記載はなかった。アメリカのレビューもいくつか読んだが、みなさん紹介文につられてバージニア葉のあれこれを論じるだけ。いったいどうなってるんだと思っていたら、一人のレビュアーが、この紹介文はおかしい、製造元のコールハス社のサイトの文が正しいと指摘していた。そこでコールハス社の記事を読むと、あった! 「ダークバージニア葉とスパイシーなケンタッキー葉、それにわずかのペリクをフレークにプレスした。ラム酒で着香」。ちゃんとペリクとラム酒が記載されてる。じゃ、通販会社の紹介文はどこから引用したんだろう? またアメリカのレビュアーの大半が誰もそれに触れてないのはなぜだ? またまた薮の中である。
 ところで同社には類似のたばこでスコティッシュケーキがある。これは前に紹介したが葉組はバージニア+ペリク+ケンタッキーでこれとおなじである。ただラム酒の着香はない。
 このケーキというのはイギリス(スコットランドも)たばこの伝統製法の工程でまずすべてのたばこ葉はプレスされて板状にされる。大昔はこのケーキ板をたばこshopに売り、お店が客の要望でこれをカットして販売した。これがカットプラグと呼ばれるものである。しかしその後、製造段階でケーキを細かく裁断し、いまでいうリボンカット状にしたものが好まれることとなり、また製缶技術の発達で裁断した葉を缶詰にパッケージして出荷されるようになる。そうなると初期段階でケーキを作るまではない、最初から裁断しちゃえば楽だというのでイギリス以外の国ではケーキは作られなくなったのだ。
 いっぽうフレークはケーキを薄くスライスしたので、イギリスの製法では、ケーキはフレークにするか、細かく裁断してリボンカットにするか、わかれる。マッコーネル社のスコティッシュケーキは、じつはケーキを手でほぐしたブロークンフレークで、このたばこは伝統製法にのっとりケーキから作られてますと宣言したものである。またスコティッシュフレークのほうはケーキをスライスしてフレークにしたものだが、両社のもともとのケーキは、別物だとぼくは思う。
 スコティッシュケーキとスコティッシュフレーク、葉組は似ているが、使われるバージニア葉は異なる。で、ケーキのほうはどちらかというと単純なバージニア葉、フレークはバージニア葉のカクテルで味の違う葉をブレンドしてあるようである。
 どちらもぼく好みのペリク入りバージニアである。いま手許にケーキのほうはないので厳密に比較はできないが、チャンスがあれば吸い比べてみたいと思っている。

[PR]
by jinsenspipes | 2012-10-28 20:53 | ロバート・マッコーネル | Comments(28)

エソテリカ: ティルベリー ( Esoterica: Tilbury )

a0150949_214173.jpg
 ときどきコメントをいただく天邪鬼さんがブログでこれを絶賛してらした。信頼おけるかたの賞讃ならきっと旨いに違いない。さっそく注文してみた。
 缶をあけると、おや、ダンヒルのロイヤルヨットに似た熟成臭。ますます期待がたかまる。シャグに近い細かいカットでたまたまヨットが空いていたので比べてみると、ヨットよりさらに細かいカット。明るい葉と暗い葉が半々に混じり、これもヨットに似ているがヨットより明るい葉が多い。これはゴールデンバージニアと、たぶんストーブドバージニアの混合と思える。
 火をつけると、ああ、ゴールデンの青臭さとストーブドの熟成臭がどッときた。じつに旨いたばこだ。ヨットと似ていると書いたがヨットは熟成臭が圧倒的に強く、ためにやや脂臭い、ミルクのような独特の味になるが、こちらはもっと淡白である。バージニア葉の新鮮な味が支配的でそこに熟成臭がやや香る。そのバランスがたまらない。このゴールデンバージニアはトーストされてる気がする。ごくかすかだが葉巻の香りを感じることがあるのだ。
 じつにクールに燃焼するたばこだ。よく味わってみると、バージニアの甘みに塩味がまじっていた。G.L.ピースは塩をいれないたばこは無いといっているが塩味を実際に感じることはめったにない。しかしこのたばこはあきらかに塩味がある。このクールな感触は塩味と関係するのかもしれない。
 もうひとつふしぎな香りがあり、最初はそれが何かの着香かと思ったが、やっているうちにバーレーの香りと気がついた。チョコレートを連想させるような木の実のうっすらした香りである。そう思って吸うと、全体に丸みがあり、これはバーレーのおかげだろう。
 ジャーマイン社の説明によると、葉組はバージニアとごくわずかのバーレーとあり、100年の歴史をもつ当社の熟成プロセスで仕上げてこのユニークな自然の香りをひきだしたとあった。「圧倒するたばこ、目のくらむばかりの喫味」と、自信たっぷりである。たしかにこの宣伝文句にはうなづけるものがある。
 ぼくはダンヒルのヨットやフレークが好きでいまもその二つは空き、常喫している。ダンヒルもオーリック製になってから質が落ちたとする識者が多いがだいじな要所はおさえているように思う。ただ、ぼくがレーン社製ダンヒルを体験したのは965だけで、その記憶ももうすっかり薄れているが、たしかに今の965より含み味というか、味全体のふくらみが大きかった。要所はおさえているがそれ以上のサムシング、隠し味というか、それは今の965にはない。
 ロイヤルヨットも、想像してみると、ただストーブドバージニアの熟成味だけでなく細部にもっと含み味がきっとあったのだろうし、体験者はその不足を嘆いているのだと思われる。しかし一方、ジャーマイン社のこのティルベリーにはじつに複雑な「目のくらむばかり」の喫味があちこちに顔を出し、吸うたびに発見があったりする。
 ジャーマイン社のエソテリカシリーズはもともとアメリカのたばこショップ、スモーカーズヘイヴンとロンドンのソブラニー社の共同開発商品だったことは前に書いた。それをおなじイギリスのジャーマイン社が引き継いだのだが、そこには歴然とイギリスたばこの伝統が生きづいているとぼくは思う。デンマークのオーリック社がダンヒルのレシピでおなじたばこを作っても肝心の伝統部分は欠落しているのとは大違いである。
 これからしばらくはティルベリーを吸い、「100年の歴史をもつ熟成プロセス」はじっくり味わってみたいと思う。
 またまたいいたばこと出会えて、天邪鬼さんには感謝しないといけない。

[PR]
by jinsenspipes | 2012-10-14 21:07 | エソテリカ | Comments(54)

ピーターソン: アイリッシュフレーク ( Peterson: Irish Flake )

a0150949_21205798.jpg
 ピーターソンたばこで最初にやりたかったのがこのアイリッシュフレークである。なにしろアイルランドの名たばこである。もともと同郷のマレー社の製造で、いまはドイツのコールハス社が作るが、ピーターソン社のシールも貼ってあるし会社のサイトには我が社のたばこと宣伝されているからよほど厳しいチェックを受けていると思いたい。ならば「アイリッシュ」と銘うったたばここそ本命だろう。
 ところが海外のレビューを読むと、いずれもこれはニコチンがきつい、おそらくもっとも強いたばこだとあるのでので二の足を踏んだ。外人が強いというなら脆弱な日本人は目がまわるかもしれない。そこで前に書いたがまずユニバーシティフレークから始めた。そちらは際立った特徴があるたばこではないが、一度やるとつづいて手がでる。あっというまに缶があいた。どこかしらふしぎな魅力があるのだ。そこで、いよいよ本命に手をだした。
 缶をあけると、2cm x 7.5cmの細長いフレーク。ややスパイシーな、甘い香料の香りがあり、いい感じの熟成臭もあって期待がつのる。火をつけてみると、あ、これは、なんとたばこらしいたばこであることか!
 葉組はバージニア、ケンタッキー、バーレーである。ユニバーシティはバージニアとバーレーで、バーレーがすっかりバージニア味を丸めていた。しかしこちらはバージニアの青臭さ、ケンタッキーのスパイシーな香り、バーレーの木の実味、すべてがくるが、とくにケンタッキーの風味が強くでていかにもたばこらしい。最初に感じた甘みはずっと持続する。おそらく甘味料がいくぶん加えられているらしい。舌に甘みは感じつつ、全体としては質実剛健、ザ・たばこという感じ。
 たまたま常喫のダンヒルフレークとヨットが空いていて比べてみた。ダンヒルフレークはさすがにバージニア葉の王者、青臭さから酸味、ほのかな甘み、フッとお花の香り、バージニアの特徴がすべてくる。草原の丘にたってひろびろした光景を俯瞰しているようなたのしみがある。こちらアイリッシュはそういう広がりはなく、もっぱらたばこをたのしんでる、ニコチンの酔いに心地よく身をまかせているという感触。ただし、ニコチンは予想したほど強くなかった。
 ダンヒルのロイヤルヨットはやはりワン&オンリーの秀逸なたばこだ。ストーブドバージニアの、やや脂臭いようなねっとりした味にミルク味と蜂蜜の甘みがかすかにのる。このミルク味だがこれはバージニア葉を充分ストーブしたためにでてくるようである。バージニア葉だけからこれだけの旨味をとりだせるなんて奇蹟に思える。
 そういうダンヒルたばこと比べると、ピーターソンは直球一筋という感じだな。ユニバーシティは際立った特徴がないと書いたがたしかにバージニア葉の宏大な域はなく、バーレーがそれを丸くしているのでやや単調に思える。ところが、そこがふしぎなんだが、つい手がでてしまい、パイプのたのしみを満足できる。こちらアイリッシュは、ケンタッキーの魅力がくわわり、心なしバージニアの深みもましているようでこれまたパイプのたのしみを充分満喫できる。
 ぼくはこれまでバージニア葉の旨味を追求したたばこ中心にたのしんできたがアイルランドのたばこはそれとは別のたのしみ、いわばパイプ喫煙の別世界を見る心地がしてそちらのほうもしばし徘徊したくなってきた。
 ピーターソンたばこの社の説明ではこれらは伝統的製法でブレンドされたと注記してある。しかし、ぼくにはどこがそうなのかわからない。ぼくがふしぎな魅力と書いたことはそれに関係してるかとも思われるが、わからない。まだまだぼくはパイプ喫煙の入り口でまごまごしてるんだなと痛感させられる。

[PR]
by jinsenspipes | 2012-10-01 21:24 | ピーターソン | Comments(12)