Jinsen's パイプ

<   2013年 05月 ( 2 )   > この月の画像一覧

マクレーランド: 2020 メイチャードケーキ ( McClelland: 2020 Matured Cake )

a0150949_17554765.jpg
 第三弾である。5100、2035でバージニアの単体を2種、堪能したのでこんどは伝統的イギリスブレンドに手をのばす。イギリスはごく近年までたばこの着香を抑止していた。そのかわり、バージニア葉に、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉をブレンドして味わいを広げた。これらの葉はイギリスたばこの着香剤だったのだ。
 とりあえずオリエント葉に目をつけ、マクレーランドのバルクのカタログからバージニア+オリエントの典型を探した。それが2020である。ぼくの読んだ同社の紹介文では、
「よく熟成したバージニア葉の甘さと味に、オリエント葉の独特の香りとやわらかさ、ゆたかさ、木の実風味をブレンドしました」
とある。
 やってみた。
 2020はブロークンフレークのようで2035ほど固くなくしなやかなので丸めて詰められた。火つきがやや悪い。やはり少し乾燥させたほうがいいかもしれない。
 火をつけると、ウウウ、これはまたとびきりやわらかい、ふっくらした味わいがきた。やや油っぽい、いわゆるオイリーという感じ。かなり強い酸味があり、茎茶のような独特の味わい、それにプラスして、英語だとearthyという形容詞があるが、春の野にでたときのかすかな土の匂い、そんな感じ。バージニア単体とはかなり違い、これがオリエント葉の味わいかと思う。そして、ああ、ラタキアが香るではないか。ふとこれもオリエント葉の属性かと思ったりしたが、じつはラタキア入りだったのだ。
 前に書いた2020の紹介文はある通販会社に載っていたものだが、別の通販会社を見るとまったく別の紹介文がのっていた。
「レモンバージニア葉とオレンジバージニア葉、それにオリエント葉のクサンチとラタキアをケーキに圧縮して熟成させ、このすばらしい、しかもヘヴィでない、特別やわらかく、滅多に味わえないゆたかなフレーバーをひきだしています」
 この2つの文章をくっつけて紹介文としているところもある。まあ、相反する内容でもないから、両方ありとして、やはりラタキアは入っていたのだ。
 この解説から改めて葉組を紹介すると、バージニア葉はいわゆるブライトリーフで2035と同等。オリエント葉はもっとも有名なクサンチ(Xanthi)葉で「たばこの女王」とされるもの。クサンチ葉はいまのギリシャ北部のイェニジェ(Yenidje)地方のものが最良といわれ例のバルカンソブラニーに使われていた。マクレーランドはバルカンソブラニーの再現にはとくにご執心でこのおなじ葉を使ったグランドオリエンタルズシリーズには「イェニジェ・シュープリーム」と「イェニジェ・ハイランダー」、2種のクサンチたばこがある。2種の違いはラタキアが入らないの(前者)と入るの(後者)である。このシリーズもベースにバージニア葉を使っているから、ぼくが買ったバルクの2020は「イェニジェ・ハイランダー」とほぼ同等なんじゃないかと想像した。
 しかし、すばらしいたばこである。ぼくのバージニア+オリエント+ラタキアのイメージは軌道修正しなければならなくなった。
 前に書いたレビューでSG社の「コモンウェルス」と「スクワドロンリーダー」、ここでラタキア入りがこんなにふっくらやわらかいものかとぼくは感動した。この種のたばこはそれまでダンヒル965がぼくの常喫で、これはかなり粗く、つんつんしている。バージニアの味はわかるしラタキアは独特の匂いでわかるので、この粗さはオリエントのせいだろうと思いこんでいたのだがまるで見当外れだった。
 2020でわかるオリエントの属性は、オイリーなこと(これはとくにクサンチ葉に特有のようだ)。茎茶と書いたが、茶葉の新芽の茎の部分を使ったお茶はやや硬質で独特の味わいがあり、それに似た味わい。それとやや近いが、春の野の土の香り。そしてとりわけふっくらとやわらかい味わい。そんな感じがあり、どれをとっても965の粗い感触はない。
 SGで感動したときもっと深く読みとるべきだった。しっかり熟成し、葉の味を最大限ひき出せばこのふっくらしたバラエティにとんだ味が出るし、それがもともとオリエントやラタキアの属性だったのだ。
 同時に遠い記憶が甦った。ぼくがパイプたばこを始めた頃、shopが紹介するまま買ったのが965だったが、いま考えると当時の965はマレー社製の後期のもの、まだダンヒル社のシリア製ラタキアのストックが残り、しかも職人肌のマレー社は熟成にも時間をかけて念入りに作っていたはずだ。その昔の965のオリエント+ラタキアの香りと味わい、まるで夢見心地で、ふっくらやわらかいなかに革製品の匂いと外人がいうラタキアが優雅に香った。その後しばらくしてオーリック製のいまの965をやったときはちょっと拍子抜けしたが、マ、こんなものかと思っていた。しかし、SG社のラタキア物やマクレーランドの2020を知るにつけ、ぼくは本物のオリエント+ラタキアを昔から知っていたことに気づかされた。
 しかしそれにしてもマクレーランドのたばこは驚嘆に値する。世のパイプ喫煙者が語り草にするバルカンソブラニーはこの2020を越えたブレンドの妙、熟成の妙があり、さらにすばらしい味わいがあったのだろうと想像できる。ぼくは今、オリエント葉とラタキア葉、その真価を知るほんの入り口に立ったばかりだ。

[PR]
by jinsenspipes | 2013-05-22 18:01 | マクレーランド | Comments(10)

マクレーランド: 2035 ダークネイビーフレーク ( McClelland: 2035 Dark Navy Flake )

a0150949_22401715.jpg
 海外のパイプ・フォーラムにある質問がでた。
「サミュエル・ガーウィズのフルバージニアフレークを吸ってみたいがずっと品切れしている。私はマクレーランドの愛好者なのでこの会社で類似のたばこはないだろうか」
 ある識者の書きこみ。
「2035が近いです。製法がほとんどおなじだし、真っ黒な外見も似てます」
 別の識者の書きこみ。
「私はFVFも、2035もやってるし好きですが、味は別物です。類似のたばことは思えない」
 最初の識者の書きこみ。
「私は製法がほとんどおなじといいました。どちらもバージニア葉をじつくり熱処理し、葉がもつ甘みや果実風味を充分引き出しています。味が異なるのはバージニア葉の違いです。SG社はアフリカ産ですがマクレーランドはアメリカ産、それも2035はイースタンベルトのレモン・バージニア葉です。アメリカ産バージニアは糖分の含有量が世界一多く、なかでも2035の葉はずば抜けて糖分が多い。SG社は非凡な技術で糖分の少ないアフリカ産バージニアからみごとに旨味を引き出していますが、マクレーランドのバージニアはもともと糖分が多いのでその点有利ですし、さらにバージニア葉のもつほかのおもしろみも引き出しています」
 さらに。
「FVFがアフリカ産バージニアからいい味を引き出しているとはいえバージニア葉がもつ複雑な味わいはアメリカ産バージニアにはかないません。FVFはわかりやすい、初心者向けたばこで。マクレーランドにはもっと含みがあります」

 この識者の意見で、ぼくは賛成の部分と反対の部分、勉強した部分があった。
 FVFがアフリカ産バージニアを使っているというのは事実なんだろうか。ぼくは知らなかった。もしFVFがアフリカ産とすると、この識者の指摘はおおよそ真実と思われる。
 しかし、だからFVFは初心者向けという結論はアメリカ人の子供っぽい国産品礼讃にみえる。

 2035の葉組と製造についてはマクレーランド社の解説がある。
「このユニークなたばこの製造はイースタンベルトのレモン・バージニア葉とカッター・グレード葉をブレンドし、プレスし、熟成させ、軽くストーブしてみごとな暗色の香り高いケーキにすることから始まります」
 アメリカのバージニア葉の産地は「ベルト(地帯)」で区別され、たとえばオールドベルト(旧地帯)はバージニア葉の原産地であるバージニア州とそこに隣接するノースカロライナ州の一帯、イースタンベルトはノースカロライナ州の東部から中心部にかけて、ミドルベルトはオールドベルトとイースタンベルトの中間部の小地帯である。
 カッター・グレード葉というのはバージニア葉の先端から下のほう、根に近いほうの葉を指すらしいがそれがどういう特徴があるのかはぼくは知らない。
 さて。何はともあれ吸ってみる。
 写真でおわかりのようにこのたばこはケーキからの削りだしでじつはかなり固い。プロークンフレークのように丸めてポイというわけにはいかずしかたないので細かく砕いてつめた。またやや湿り気が強く、ちょっと乾かしたほうがいいようだ。
 火をつけると、ああ、5100でおなじみの軽く、明るいバージニアである。これがマクレーランドのバージニアの、ということはアメリカ産バージニアの特徴なんだろうか。
 しかし、5100と決定的に違うところがある。5100はオールドベルトのレッド・バージニアで香ばしさがまず感じられるが2035にはそれはほとんどない。かわりに強い甘みと酸味、果実の香りがどッときた。そしてときどき青臭さがくる。これは5100には感じなかった。ふと、ぼくは若い頃、ブラジルを旅して覚えたマンゴーの味を思い出した。ぼくが定宿にしていたリオの安ホテルは朝食がマンゴー食べ放題、食堂の中央にマンゴーが山と積まれていた。ブラジルではマンゴーは安果実だからさほどありがたくはないがしかしマンゴーの甘さと、どこかにしっかり青臭さがのこる味は天下一品だった。2035はそんな味わいがある。甘い果実味のどこかに青臭さがのこりそれが心地よい。
 マクレーランドの5100と2035でぼくはアメリカ産バージニアの香ばしさと、果実味+青臭さを知った。そしてじっくり味わっているとたしかに識者のいう通り、さらなる含み味も感じられる。たとえばダンヒルのフレークなどと比べるとそちらはやや一本調子、マクレーランドのたばこは軽快で明るいなかにさまざまな生体反応が跳びはねているようである。
 では、FVFはどうか。たまたま缶が開いていたので比べてみた。ここでぼくは識者の意見とわかれる。ダンヒルのフレークはやや一本調子で含みが少なかった。FVFは違う。こちらはやや暗い、くぐもった感触のなかにやはり深い味わいがある。それはマクレーランドの軽快で明るい感じとは対照的で、やや重厚、やや鈍いがじわじわと沁みだしてくるものがある。喩えてみると、映画とテレビの違いといえるだろうか。テレビの映像は明るく、細部が鮮やかですべての要素があからさまである。映画はどっしりと暗く細部はぼやけて溶け合っているが、いい味がある。テレビの映像は報道の延長だが、映画は作品として自立する。

 しかし、バージニア葉のさまざまな味わいを知るにはマクレーランドたばこはじつに教育的である。アメリカ人は何が何でも組成とか、製造法とか、実体を詮索しなくてはすまされない実証主義者のようだ。イギリス人やヨーロッパ人、旧大陸人はそこは曖昧でも出来がよければいい、完成した作品を愛する性向なのかもしれない。
 好奇心旺盛なジャパニーズとしてはもう少しマクレーランドたばこでバージニア葉について勉強したくなった。

[PR]
by jinsenspipes | 2013-05-15 22:46 | マクレーランド | Comments(14)