Jinsen's パイプ

【番外編】アメリカンスピリット: ペリク ( American Spirit: Perique )


a0150949_18205124.jpg 番外編で今回は紙巻きたばこである。
 いきつけの街角のたばこ屋のオヤジがアメリカンスピリットの見本品をサービスでくれた。ライトの3本入り。吸ってみるとしっかりしたバージニア味なので次にいったとき1箱買ってみた。黄色箱のやつである。
 ぼくはパイプは家でやるだけ、外出時は面倒なので紙巻きを吸っている。ダンヒルの長いやつで、正式にはfine cutというらしい。いいバージニア味がくるたばこなのでもう何年もこれである。ところがアメリカンスピリットの黄色箱も負けず劣らずで、むしろダンヒルのほうが香料の香りが強いのに、こちらは評判通り無着香らしくストレートにバージニアだけがくる。
 この会社にペリク入りがある。黒箱のやつである。ペリクたばこはアメリカのルイジアナ州の一地域で栽培するペリク葉、これを独特の熟成法で処理したたばこである。しかしペリク葉の栽培農家は激減し、いまは1軒をのこすのみ。のこりの農家はケンタッキー州から安価なたばこ葉を買い付け、これをおなじ熟成法で処理した代替品を出荷している。この代替品は業界でアカディアン・ペリクと呼ばれる。さてこの1軒のこった本物ペリク葉を栽培する農家、こことアメリカンスピリット社が独占契約し、本物ペリクをすべて買い上げることになった。おかげでパイプ業界にはアカディアン・ペリクしか流れないから、パイプ党はアメリカンスピリット社を目のかたきにしているのである。しかし、マ、これも時代の流れか。とにかく黒箱がどんなものか、やってみた。

 黒箱をあけると、おッ、まぎれもない昔のペリクの匂いがするじゃないの。30年も前のスリーナンズの匂い。肥だめの匂いとぼくはいってしまうのだが、お若いかたは知らないだろうナ、鼻が曲がりそうだが妙に惹かれるあの悪臭だった。
 火をつけると、ムムム、甘さ、酸味、加えてこの匂い、なんと、スリーナンズはここに復活していたのだ!
 パイプたばこでペリクを強調したいわゆるVaPerはいまはごく限られた銘柄しかない。現在のスリーナンズはペリク無し、ケンタッキー入りになっている。ジャーマインのペリクミクスチャー、SG社のセントジェームズフレーク、エスクードなどはアカディアン・ペリクを使い、甘さと酸味は申し分ないが、香りはずいぶん薄まり上品なものになっている。マクレーランドのペリク物もそうである。しかしアカディアン・ペリクは純正ペリク葉を使わないだけ、熟成法はおなじだからペリクたばこの特徴はのこっている。昔のペリクの悪臭といいたい強い匂いのかわりに、アカディアン・ペリクは薄い上品な匂いだから、むしろこちらのほうが吸いやすいとする若いファンも多い。年寄りはぬか味噌の古漬けのあの悪臭を懐かしがるが、若い方は苦手かもしれないですしネ。
 しかしこの黒箱は紙巻きたばこの傑作と思う。黄色箱(バージニア)のほうはやはり吸いなれたダンヒルに一歩ゆずって常喫するまでいかなかったが、黒箱は紙巻きでもここまでたばこ葉の特徴をだせるのだと感動して手が放せなくなった。
 このたばこで勉強させられることがあった。パイプたばこでペリクはバージニアの欠点を補完する。バージニアは糖分が多いために燃焼が早く、熱くなりがちだし、いわゆるTongue Biteがある。Tongue Biteは舌焼けと訳されることが多いが、そうではなく、燃焼した糖分が舌にチリチリくること、舌焼けでなく舌チリである。初心者に多い舌焼けは熱く吸いすぎる舌のやけどで、英語だとTongue BurnとかLeather Tongueと呼ばれる。ペリクはバージニアの燃焼をゆるやかにし、またこの舌チリをやわらげる。燃焼時のPHはバージニアはアルカリ性に傾くがペリクは酸性に傾く。そこで中和されるわけである。バージニアたばこに微量のペリクを配合すると燃焼も緩慢になり、舌チリもやわらぐし、さらに独特の甘みがたばこをおいしくする。アメリカンスピリットの黄色箱はバージニアたばこで、若干のオリエントとバーレーを配合するが、やはり舌チリは激しい。無着香なだけにやや粗い感じもある。しかしこちら黒箱はペリクがそれをやわらげ、さらに甘みと酸味がまして大層吸いやすい。このあたりはパイプたばこより違いが顕著で、ペリクの特徴がよくわかった。
 ぼくはアメリカンスピリットの黒箱にすっかり心を奪われた。深夜、そろそろ寝るころ、一服したくなることがあるが、パイプだと時間がかかりすぎて困る。これまではスコッチをワン・ショットにダンヒルの紙巻きを一服という日課だったが、いまはこの黒箱にしている。一日一本、ペリクを吸っているのだ。  

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# by jinsenspipes | 2013-11-04 17:51 | Comments(39)

マクレーランド: スミルナNo1 ( McClelland: Smyrna No1 )

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 マクレーランドの「グランド・オリエンタルズ」シリーズ、その2である。
 このシリーズは2缶買ったが、前に紹介したイェニジェは有名なクサンチ葉の代表。一方こちらは今のトルコたばこの代表である。今、オリエント葉と呼んでいるのは以前はトルコたばこと総称され、かっての広大なトルコ帝国(オスマントルコ)領で産出されたたばこということだった。クサンチは、そのトルコ帝国領の、昔、マケドニアとよばれた地域になるが、今はギリシャの都市になっている。一方こちらスミルナは今のトルコのイズミル市の昔の呼び名で、大都市になり、ここで産出するたばこはトルコのたばこ輸出量の3/4を占めるという。ここのたばこはふつうイズミル葉と呼ばれるがマクレーランドは古い地名であるイェニジェに合わせて昔の呼び名を使ったのだろう。
 さてこのたばこ。缶を開けるとイェニジェとおなじ細かく砕いた葉だが、上にちょこんと、おまけでスミルナ葉の現物がのっていた。ずいぶん小さいたばこ葉である。なんだか期待感がいっそう高まる。
 火をつけると、ああ、イェニジェと似た甘くいい香りである。すばらしいハーブの芳香というところ。香りがイェニジェとやや違う気もするがこのあたりは言葉で書きようがない。少し吸ううちにイェニジェにはなかったスパイシーな味がきた。ちょっと胡椒味を思いださせる。甘みはイェニジェよりやや硬質、かわりに酸味がやや強い。さらに吸ううちにバターのようなクリーミーな味もきた。いや、これは複雑な味のたばこだ。
 イェニジェはとにかく香りたかく、ふっくらとやわらかい、比較していえば女性的な味で、スミルナはいい香りのなかにスパイシーでクリーミー、さらに複雑な味も秘め、男性的な味ということになるか。しかし、どちらも日頃のバージニア葉とまったく違うふっくらした香り、甘くやわらかい味わいがあり、この点は共通し、やはりこれがオリエント葉の特徴なんだろうと思う。うっとりする吸い心地である。
 さて。ぼくはオリエント葉の味をだいたいつかんだ。これからイングリッシュ・ミクスチャーをやるときはオリエント葉がどう配合され使われているか、見当つけられるだろう。ようやく人並みになったというところである。
「グランド・オリエンタルズ」シリーズにはあと6種の葉がある。マケドニア産では、有名なドラマ葉、さらにカテリニ葉、またイェニジェ葉にラタキアを配合したイェニジェ・ハイランダー。トルコ産ではこれもよく知られたサムスン葉、それとアゴンヤ葉。ほかにグルジア国のソクホム葉がある。いまのところはここで止めておき、しばらくしてこんどはドラマ葉、サムスン葉あたりをやってみたいと思っている。
 ところで。
 上の写真にジャーが見える。じつは郵送されたたばこの缶がちょっと凹んでいた。マクレーランドの缶はプルトップの缶詰だから開けなければ問題ない。しかし開けたあとプラスチックの蓋を被せたとき缶がわずかでも凹んでいると空気が漏れやすい。そこで開缶と同時にたばこをジャーに移した。
 識者の指摘だとマクレーランドのプルトップ缶はヨーロッパのコインツイスト缶より気密性が高いそうだ。コインツイスト缶は開けてしまえば気密性はほとんどなく、開缶時の味はせいぜい1週間、とくにSGなどの四角缶は2、3日で香りが抜けることがある。しかしプルトップ缶のほうは開けてプラスチックの蓋をするともう少しもつという。
 2oz(50g)缶は1日に3服ていどやる平均的パイプ喫煙者の1週間分だから、まあ、それでいいことになる。ぼくも1日に3服〜4服だが、ひとつの銘柄でなく、あっち吸ったりこっち吸ったり、常時3、4種のたばこが空いてるからうっかりすると1ヶ月放置したのが出てくる。本来なら缶から直接、デザインもたのしみながらやりたいところだが長引きそうなのはジャーに移すようにしている。今回はそういうわけですぐジャーに移した。

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# by jinsenspipes | 2013-10-22 16:55 | マクレーランド | Comments(4)

マクレーランド: イェニジェ・シュブリーム ( McClelland: Yenidje Supreme )

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 マクレーランド社のオリエントたばこである。ぼくがマクレーランド社に関心をもったのはその世界一のオリエントたばこコレクションだった。世界一と書いたが、オリエント葉をこれだけ多種、網羅している会社はほかにはない。
 パイプを始めた頃は旨い、まずい、好き、嫌いだけだったがそのうちたばこ葉に興味をもちだした。バージニア、バーレー、ラタキア、ペリク、ケンタッキーはようやく味と香りを憶えたが、オリエントだけはいまだによくわからない。イングリッシュミクスチャーはバージニアとオリエントを基本とし、ここにラタキアやペリクを香料たばことして加えたものだが、どこまでがバージニア味でどれがオリエント味なのか判然としない。何年パイプやってんだ、と叱られそうで恥ずかしい。
 マクレーランド社の「グランド・オリエンタルズ」シリーズはなんと! オリエント葉だけ7種を集めた素晴らしいものである。じっくり味わえばオリエント博士になること請け合い。オリエント葉とひと口にいっても、クサンチ葉あり、ドラマ葉あり、サムスン葉あり、スミルナ葉あり、オリエント葉の特徴がわからないなんていってるぼくは初心者もいいとこ、じつは奥が深いのだ。
 手始めにイェニジェ葉(Yenidje)をやることにした。イェニジェ葉は有名なクサンチ葉(Xanthi)の一種だが、この名を高めたのはパイプ愛好家の伝説になっているバルカンソブラニーのおかげだった。この名品の缶に「イェニジェ葉を使用」と書かれていたためである。当時、オリエントといえばクサンチ葉が知られていてイェニジェ葉など誰も知らない。ある説によると、これは同社の宣伝の妙で、ヨーロッパでは無名の地名をだして高級感を煽ったというが、実際にイェニジェはクサンチと並ぶたばこ葉の名産地だった。しかしこの村は大火で滅亡し、まもなく復興はしたものの昔日の繁栄はなく、細々と生産したたばこ葉は隣り村のクサンチに出荷し、そこからクサンチ葉としてヨーロッパに出回っていたらしい。バルカンソブラニーはたぶんイェニジェ産の葉を選んで買い付けたのだろうし、マクレーランド社の説明によるといまでもイェニジェ村のあたりはクサンチ葉でも最良のものを産出しているという。
 さて。恐る恐る缶をあけた。
 まずきたのはおなじみのケチャップ臭だ。かなり強い。ちょっと気勢を削がれた。かなり細かく乾いた黒い葉と赤茶色の葉でさぞかしじっくり熱処理熟成がなされたのだろうと想像できる。
 火をつけ、一服やると、これは! すばらしい香りがきた。なんといったらいいだろう。甘くやわらかい、夢見心地にするハープの匂い、といおうか。クリーミーでロマンチック、これまでどんなたばこにもなかった新鮮な香りだった。これがオリエントだったのか!
 しばらくこの香りをたのしむうちにもう一種、やや違う味がきた。最初のは香りで、鼻をくすぐるが、こちらは舌にくる味。ちょっと硬質の、よくいわれるスパイシー味といおうか、ぼくの印象では最初のはオリエント葉の葉っぱの先端の香り、こちらは茎の味といったところである。
 うーん。ぼくが感じていたオリエント葉の印象はまったく書き替えられることになった。
 オリエントはふつうスパイシー味といわれるのでぼくはイングリッシュミクスチャーのやや硬質な部分、これがオリエントだと思っていたがそうではなかったのだ。オリエントはもっと甘く、やわらかく、香り高いものなのだ。
 たまたまSG社のスクワドロンリーダーが空いていた。これはバージニア、オリエント、ラタキアの典型的なイングリッシュミクスチャーである。で、これをやってみると、ああ! まぎれもなくそれがあった。このたばこはSG社独特の、甘く、やわらかく繊細なたばこだが、ぼくはそれはバージニア葉の熟成のせいと思っていた。そうではなく、この甘み、やわらかさはオリエント葉の特徴からくるもので、よくよく味わっているうちにイェニジェ葉に似た香りも、やや違うようだが、きた。
 イングリッシュミクスチャーでは、バージニア葉にラタキアで強い香りづけをする。ペリクは甘酸っぱさを追加する。そしてオリエントは、やわらかさとロマクチックな香り、とろける甘みを加える。そうだったのだ。
 バルカンソブラニーの伝説はこのイェニジェ葉の特徴を最大限ひきだし、さらにいま同等品は望むべくもないシリア産ラタキア葉で土の香りづけをした、そこに端を発したのではないか。
 マクレーランドのこのたばこは本物のオリエント葉の味と香りはこれなんだ、と事実をつきつけることで、世に出回る安物のイングリッシュミクスチャーの底の浅さを露呈させようとした。そんなことまで頭に浮かんだ。

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# by jinsenspipes | 2013-10-05 00:05 | マクレーランド | Comments(10)

オーリック: ゴールデンスライスド【R2】( Orlik: Golden Sliced )

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 しばらくマクレーランドのバージニアがつづき、ひさしぶりにこれを吸ったら、このたばこのよさを再認識した。
 国内で買えるし、価格も気安い。味もいいし、吸いやすい。まずは申し分ないんじゃないか。
 前にレビューしたのは海外通販で買った缶入りだが、こちらは国内で買ったポーチ入りである。開けてびっくりしたのはダンヒルのフレークのような板状の小片でなく、長〜い帯状フレークだった。
 上に載せた写真の一番上と右下はポーチに収まるように三つ折りにしたもので、真ん中によじれて見えるのが全長である。伸ばすと40cmくらいある。それを三つに折りたたみポーチに収めたので、見ためは15cm x 4cmのフレークに見える(それが一番上と右下です)。
 やや湿り気があり、やわらかい。これを繊維に沿って縦割りにし、くるくるッと丸めて詰めてもいいし、ボウルの深さに合わせて三つ折りか四つ折りにしてもいい。ダンヒルやFVFのようにしっかり固めたフレークだと丸めたりたたんだりするうちに折れたりばらけたりしやすいが、これは繊維がやわらかいので楽だ。板状のチューインガムを丸める感覚である。
 フレークたばこをほぐしたり千切ったりして吸う方がいらっしゃるが、ぼくはせっかくのフレークがもったいない気がする。リボンカットのたばこはうまく丸めても隙間ができ、そこで燃焼が止まることがある。フレークなら緻密に圧縮した繊維が連続するのでいったん燃えだせばまず消えない。しかもゆっくり燃えるからおなじ量ならリボンカットより5割増し長持ちするといわれる。
 着火に苦労すると思われがちだが、オーリックのこれはほとんどマッチ1本でめらめらと火がつく。ほんとに吸いやすいたばこだ。火さえつけば最後まで燃えつづけるが、それでも消えやすいとおっしゃる方はたばこが自然に燃える早さに合わせて吸ってないのだ。
 パイプたばこは燃焼剤が不在だから、ときどきあおり、火をおこしてやらなくてはいけない。パイプを吸うと、空気がボウルトップから入ってたばこを通過する。そのとき、火種が一瞬あおられ、細くなった火がポッと赤くなる。吸いこんだ煙がやや熱を持ったかなと思うていどで充分である。吸ってばかりいるといわゆるエントツになる。そこでこんどは口内の空気をパイプに吹き戻す。ボウルからはゆらゆら一条の煙がたっている。口内の空気を送るとき、そのゆらゆらの煙が乱れたり、あわただしくなってはいけない。少し元気づいたかなていどでよろしい。吹き戻しで火はボウルのなかで水平に燃えひろがる。吸うにしろ、戻すにしろ、これはたばこが自然に燃える早さに合わせるのである。そうでないと送りこむ空気の強さで火を吹き消したりしがちである。
 さて。喫味だが。
 ずっとマクレーランドのバージニアを吸い、この葉の特徴がわかってきた。しっかり熟成したバージニア葉は、甘み、酸味、果実の香り、花の香り、じつにさまざまな味と香りをだす。
 オーリックのこれはポーチをあけると、柑橘系の甘酸っぱい香りがし、そのさわやかな酸味と甘みがさいごまでつづくがこれは着香したものだとぼくは推測できた。マクレーランドでいえば着香たばこの5115とおなじである。バージニア葉は数種をブレンドしているらしく、「ゴールデン」の名称通りブライト葉の青臭さもあるし、またレッド葉のトースティな感じもあり、やや乾いた、やわらかくていい味が心地よい。ペリク葉がわずかにまじり、とくに後半はペリク味がでてくる。前半の着香した柑橘系の香りがとんで葉の味が直接くるのだろう。
 前のレビューで、お膝元のデンマークではパイプ喫煙者の90%がこれを吸っているというレポートを引用したが、つまりこれはまったくの大衆商品、量産品で、それが強みにも弱点にもなっている。安価なのにしっかりバージニア味がくる(海外通販だと2oz缶が国内シガレットの1箱半ほどの値段)。さわやかな酸味と甘みが心地よい。火つきも火持ちも抜群によい。これは大衆商品として最大の魅力になる。しかし、マクレーランドのバージニアのように奥深い、おもしろみというか複雑さというか、それがあるかというと、残念ながらまったくない。このたばこはデンマーク国内はもちろん世界に愛好家がいる大衆商品、いっぽうマクレーランドはアメリカのごく一部の好事家の好む嗜好品。生産量も違うし、狙いめも違うだろう(マクレーランドの5115は2ozだとオーリックの5割増しの価格帯だ)。
 ぼくはマクレーランドのバージニア(もちろんそれが理想とするイギリス物も含めて)が好きだがときどきオーリックのこれやマクバレンのバージニアNo1、ダンヒルフレークを買うときがある。マクレーランドはおいしいが、じっくり味わうなら静かな書斎で気持を鎮めたときがいい。屋外とか、パプでひょいと吸うたばこではない。いっぽうオーリックはどんな場所でも期待の味がきて裏切らないから気安く吸える。お部屋でじっくりジャズを聞くのも一興、パプでにぎやかなポップスを聞くのも一興。そんなところだろうか。

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# by jinsenspipes | 2013-08-08 11:02 | オーリック | Comments(6)

ダンヒル: ロイヤルヨット【R2】 ( Dunhill: Royal Yacht )

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 このたばこのぼくの第一印象はミルクと蜂蜜味だった。甘くとろんとした味だがその裏にブライトバージニアの青臭さがしっかりただよっている。逆にいうと、野性的で青臭いバージニア味を甘みとミルク味がやんわりくるみ、野性味と都会味、相反する二つがここではふしぎな調和をみせている。こんな味のたばこはほかに類がない。じつにユニーク、唯一無比である。
 ダンヒルたばこの製造がダンヒル社からマレー社に移管したのが1981年、このあとしばらく質が落ちたというブーイングがしきりだったがふしぎなことにロイヤルヨットだけは好評だった。さらに2005年、マレー社の廃業で製造はデンマークのオーリック社に移って現在に至るが、ここでもロイヤルヨットの不評はほとんど出てない。もともとのダンヒルのレシピのユニークさがこのたばこの独自性を永らえているのかと思う。
 ロイヤルヨットがダンヒル社のカタログに初めて載ったのは1912年だそうである。ダンヒルのロンドン開店が1907年で、最初は客の注文を受けてブレンドする専門店だったがまもなく自社ブレンドを発表する。おそらくそのごく初期の商品だったと想像できる。手許にある1927年のダンヒルたばこパンフレットのコピーでロイヤルヨットはこう紹介されていた。たぶんこれがこのたばこの最初の紹介文と思われる。

「最高級たばこ
 以下に掲載する2種のたばこ(ロイヤルヨットとYe Olde Signe)は贅沢の極致です。
 そのたばこ葉は通常の大農園で栽培されたものではなく、小さな庭園で手をかけて栽培され、特別の品質を与えられました。
 ほかのたばこでは味わえないよろこびがあります。
 もう一度申し上げます。とっておきのときにお吸いください。いつもの満足をはるかに越えた満足感があります。
 『ロイヤルヨット』
 本物のシェード・バージニアです。
 たいへんやわらかい喫味。
 とくにデリケートな喉をお持ちのかたにお薦めします。
 (以下はYe Olde Signeの説明なので省略)」

 シェード・バージニア葉は直射日光を避け、日陰で栽培したたばこ葉で、アメリカのごく一部で作られ、おもに最高級葉巻のラッパーに使用された。最初のロイヤルヨットはこれを使ったのだろうか。
 つぎにおそらく1970年代のものと思われるダンヒルたばこのパンフレットでロイヤルヨットはこう紹介されている。

「じつに贅沢なたばこ。最高級のレモンバージニア葉とブロンズバージニア葉をじっくり熟成、これをしっかりボディがありクールスモーキングを約束するバージニア葉にくわえることで甘みと輝きを与えています。最後の工程でユニークな香りを添え、ほのかな芳香を漂わせました。この国際的に有名なたばこは人前で吸うのに最適です」

 この紹介文はダンヒル社の手になるものとしては最後と思われるが、現在、オーリック社製造になってからはLemon & Bronzed Virginiaの部分は割愛されて流布している。

 さて。ぼくのこのたばこの印象で、ブライトバージニア葉の青臭さと書いたのはまさにこれだった。マクレーランドでいえば2035や5115のブライトバージニア葉に通じる。ボディになるのはレッドバージニアで、ミルク味や蜂蜜の甘さはストーブした段階で出てくるものと思うが、その甘さはもっとかすかなものだから、やはりあとで甘みを添加しているのだろう。
 オーリック製になってからもこの特徴は変わらない。海外レビューでマレー製とオーリック製を比較したのがあり、ほとんどのかたがオーリック製になり香りもニコチンも弱くなったと指摘しているが、むしろいまのオーリック製のほうが吸いやすく好ましいと書いたかたもいる。
 ぼくのロイヤルヨット初体験はそう古くなく、2008年である。もちろんオーリック製になってからだがその初印象がミルクと蜂蜜+独特の青臭さだった。しかしオーリック製になってからも製法に変化があるらしく、最近のは着香が少し複雑になっている気がする。海外の識者はチョコレート味や干しぶどう味を指摘するがたしかにいろんな香りが花火のように飛びかう。かわりにミルク味と蜂蜜の甘さが薄れ、以前のシンプルなそれでいて強烈なしたたかさがたわめられている感もある。マ、時代の好みということになるのだろうか。

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# by jinsenspipes | 2013-07-07 21:09 | ダンヒル | Comments(4)