Jinsen's パイプ

タグ:スタデイ ( 20 ) タグの人気記事

study: たばこを味わうメカニズム


a0150949_1542141.jpg 味覚は舌で味わう。匂いは鼻でかぐ。ではたばこはどの器官で味わうのか? 昔から謎だった。海外の記事を読むと「palate」という言葉が目につき、上手にたばこを吸う人がいると「君はいいpalateを持ってるネ」などと書かれている。「palate」は「口蓋」で口のなかの天井部分である。舌で感じる味覚は口蓋でもわずかに感じられるとされていて、たばこについては西洋では口蓋が感覚器官とされているようにも思える。
 ごく最近のことだが、YouTubeの投稿ビデオを見ていて、永年の謎が解けた。ぼくは料理も好きなので、調理の解説ビデオを探すうちに「人はなぜ調理するのか」というタイトルでNHKテレビで放映されたものらしいのをみつけた。それによると料理の味は舌で味わうのはもちろんだが、じつは嗅覚が重要な役割を果たしているんだそうだ。YouTubeのビデオを参考に下手な絵を描いてみた。

 ふつう匂いは鼻から入り、鼻腔で感覚されるとされている。(1)で示した経路である。しかしじつはもう一つのルートがある。(2)で示した経路である。歯で咀嚼して口にいれた食物の匂い物質は、いったん喉に落ちるが、そこで呼吸の吐く息(呼気)で吹きあげられ、鼻腔に抜けるというのである。鼻腔にはこの匂いを感知するセンサーがあり、いっぽう舌で感覚する甘い、辛いなどの味覚と、この第2のルートからくる匂いが脳でまとめられ、食物の味わいを決める。よく炊けたご飯とか、おいしいステーキとか、たんに甘い、辛いだけではない食物の深い味わいにはこの(2)で示した経路からくる匂いがないと感覚できない。
 これでたばこを味わうメカニズムが説明つくのではないかと思った。
 たばこの甘さなどは舌が感覚するとして、香りについてはこれまで鼻で感覚するとしか説明つかなかった。しかしこの解説によると、口に吸いこんだ煙が喉から鼻腔にまわり、そこのセンサーが香りを感知する。舌の味蕾が感覚した甘さなどの味にプラスしてこの第2のルートで鼻腔が感知した香りが加わり、すなわちたばこの味となることになる。
 先輩たちに教えられたパイプたばこの吸い方がこの理屈に適合している。吸いこむ煙はごく微量で、子供のほっぺたにキスするていどでよろしい。口に入れた煙はしばらく保持して、じっくり味わう。そしてこんどはゆっくりパイプの煙道に吹き戻す。この「口に煙を保持する」あいだにたばこの匂い物質が喉から鼻腔にまわって香りをたのしめるのだ。
 西欧人が「palate(口蓋)」で味を感知するとしたのは、経験的に、この第2のルートを感じていたにもかかわらず解剖学的な説明がつかなかったために口腔の上、すなわち口蓋と仮定したのではなかったかとも思える。
 YouTubeで解説されたこの第2のルートはどうやら近年の研究結果らしかった。その後ネットで調べてみたが調理関係のサイトでこれに触れたある記事には2001年の研究成果とされ、それより古い記述はみつからなかった。最近はこの第2のルートを書いた書物もあるらしく調理関係者のあいだで話題になっているようだ。
 ぼくがここに書いたのはもとより学術的なことではなく、パイプ愛好家の思いつきにすぎないが、ぼくとしてはいい説明がついたとよろこんでいる。 

[PR]
by jinsenspipes | 2016-03-22 17:18 | Comments(76)

study: 着香たばこの味わい方に学ぶ

a0150949_11192014.jpg
 夜更けにネットのパイプブログをあちこち探訪するのもなかなかたのしいですね。前にもちょっと紹介したオランダのパイプ愛好家、Amoさんのブログにこんな記事をみつけた。
「バニラの香りとポーチに書いてあるのに吸ってみると香りがこないときがある。またポーチを開けたときは香りがするのに吸うと香りがなかったりする。これはなぜ?」
 バニラに限らず、チェリー、チョコレート、いろんな着香たばこがあるが吸ってみるとはっきりしないということはままありますよね。その原因を書いた記事で、ただこれはAmoさんの所説ではなくPaulさんというベテラン喫煙家が寄稿してくれたものとのことだった。

 味を感覚する味覚は舌にあるが、味覚は甘み、酸味、塩辛さ、苦味を感じるだけ、たとえばバニラの香りは感覚しない。これは鼻の嗅覚が感じる。バニラたばこを吸ったときは、まず舌が甘さを感じ、鼻が香りを感じる。そこで記憶にある甘いバニラ味が思い出され、バニラ味と認識する。バニラの香りの元はバニラに含まれるバニリン(またはワニリンとも)という成分である。
 さて。パイプ喫煙のときのたばこの温度はおよそ500℃で、吸い込んだ瞬間は一挙に700℃まで上がり、ふたたび500℃にもどるんだそうだ。ところがバニラの香りの元、バニリン分子の沸騰点は285℃で、500℃にもなるとバニリン分子は沸騰し、蒸発してしまう。つまりバニラの香りはトンでしまうことになる。バニラに限らずおおかたの着香剤の沸騰点はだいたいこのあたりかそれ以下なので、たばこに香りづけしてもこの高温では蒸発してしまうことになる。
 しかし、それでも実際にバニラの香りが感じられるのはなぜか? それはバニリン分子に含まれる炭素原子のおかげである。バニリン成分の分子式はC8H8O3で炭素原子が8個含まれる。この炭素の沸騰点は4554℃と高く、たばこの温度ていどでは蒸発しない。そのおかげでバニラの香りが感覚できることになり、一般に炭素原子が多ければ多いほど香料の香りが残ることがあるのだそうだ。
 ドイツのある会社がここに目をつけ、人工的に炭素原子をふやしたバニリン成分を作り、とくにバニラの香りが濃厚なバニラたばこを製造しているという。バニラばかりでなく、オレンジ、チョコレート、ピーチ、グレープなど、同様の操作で炭素原子をふやした着香たばこがあるらしい。
 しかしこれは特殊な例である。一般的なバニラたばこの場合は、できるだけたばこを燃え上がらせないようにし、バニリンの沸騰点以下に保つように心がければバニラの香りはちゃんとくる。バニラに限らず、着香たばこを香り高く味わうにはそもそも着香剤の沸騰点が低いせいだと心にとめておくことである。

 なるほど。
 この説明の科学の部分、パイブたばこの燃焼温度が500℃、これがあとあとまで記憶に残った。
 ここで素人考えで想像の羽根をひろげてみる。500℃といっても喫煙中のボウルの温度が500℃というわけではないだろうと考えてみたのだ。我が国の先輩の戒めに、パイプを吸うとき火種は小豆ほどの大きさに止めるべきだ、というのがある。ボウルの内側ぜんたいにボウボウ燃やしてはいけないというのだ。このとき小豆大の燃えている(あるいはくすぶっている)火種は500℃だろうが、その周囲のたばこはそこまで高くなく、まして離れたところはかなり低温なんじゃないか。すると、そういうところのたばこは火種にほどよく蒸され、着香剤の沸騰点以下で芳香を放つのではなかろうか。
 この記事がたばこの燃焼温度、着香剤の沸騰点、それを科学的に例示してくれたのでイメージを広げることができた。これは何も着香たばこに限ったことではない。バージニアたばこを香り高く、おいしく吸うときも、火種を小さく、ゆっくり間合いをとるようにすることが大事と、ときどきこの記事のことを思い出している。

[PR]
by jinsenspipes | 2015-05-17 11:28 | Comments(8)

study: バージニアたばこを比較する

a0150949_1103094.jpg
 写真の前列3種、マクバレン「バージニアNo1」ダンヒル「フレーク」オーリック「ゴールデンスライスド」は廉価版バージニアたばこの代表種である。ぼくは朝一番はこのいずれかをやり、昼はアンフォーラなどの甘いたばこ、夜はSGのFVFかBBF、スクワドロンリーダーなどをやることにしている。写真のうしろにあるラットレーの「マーリンフレーク」は最安値の「No1」の2倍近くの価格になるが、たしかに相応の旨みもあるので参考にのせてみた。
 バージニアたばこは多くフレークで提供される。これはまずバージニア葉をプレスしてチョコレートの箱ほどの大きさに成形し、それを薄くスライスしたものである。写真のダンヒルが代表的なフレークで、これを4つ折りか8つ折りにし、円筒形(ラグビー球形)にしてボウルに詰める。火はたばこの縦の繊維に沿ってゆっくり燃え続けるのでバージニア葉本来の味がたのしめる。
 バージニア葉はときに舌がピリピリすることがある。Tongue Bite(舌を刺す)と呼ばれる。日本語の「舌焼け」はこれではなく初心者にありがちな軽い舌の火傷で、Tongue Biteはむしろ舌ピリといいたいところである。パイプたばこは強く燃やすとアルカリ性に傾き、これが舌ピリを起こすが、この現象はバージニア葉に多量に含まれる糖分のおかげである。ゆっくり燃やし、中性か弱酸性を保つようにしなければいけない。

マクバレン「バージニアNo1」
 パイプ入門書でかならず推薦されるのがこのたばこである。安価だし、火付きも火持ちも抜群。初めてのバージニアたばことしては最適である。
 このたばこはレディラブド、つまりフレークをあらかじめほぐした状態で供給される。これならリボンカット同様手軽に詰められる。
 初心者向きとされるNo1だが、バージニア葉の特徴はすべてここにある。甘みとわずかな酸味、ブライトバージニアのやや青臭い匂いと草を噛みしめたような味わい、初心者ならこれでバージニア葉の旨みをじっくり記憶すればいいし、上級者にとっては安定して吸えるたばこになる。
 たしかにSGのFVFのようにバージニア葉の極限を追求した深みのあるたばこもあるが、これは葉にかなり湿り気があり、事前に乾かさないと吸いづらいし、火付きが悪いので火が安定するまで苦労する。朝一番に吸うときはそういう手間ひまなし、てっとり早くシガレット感覚で吸いたいのでそちらは夜のお楽しみにしている。

オーリック「ゴールデンスライスド」
 バージニア葉の舌ピリを軽減するために使われるのがペリク葉である。この葉は酸性が強いのでバージニア葉のアルカリ性を中和するし、またバージニア葉の味を増すとされている。オーリックのこのたばこはわずかにペリク葉を加え、舌ピリはほとんどない(強く吸いすぎると起きるが)。またペリク葉特有の甘酸っぱさが加わり、おいしい。さらにごくわずかの香料が添加されているようで、No1より味が複雑で旨みがある。
 ポーチからとりだしたこのたばこは写真の通りだが、これは長いフレークを4つに折りたたんであり、伸ばすと全長は55cmほどになる。おそらく長辺60cmほどのケーキをスライスしたものである。
 これをダンヒルのフレークほどの長さに切り、折り畳んでボウルに詰めるが、やわらかいフレークなのでほぐして詰めてもよい。
ダンヒル「フレーク」
 これは4cm x 7.5cmのもっともフレークらしいフレークである。1枚およそ4g。やわらかい。ぼくの朝のパイプはダンヒルの2番のアップル型と、チャラタンの同様のもの、ボウルが小さいので1枚は収まりきれず、縦に半分に裂いて2gにしている。それを折り畳んでボウルに詰める。
 ペリクは含まないが、熟成させたせいだろうか、いい酸味があり、廉価版3種のなかで一番こくがある。丁寧に作ってあるのだろう。価格もやや高く、No1よりシガレット1箱分高い。参考にしたつぎの価格帯のマーリンフレークに近く設定されている。香料がかなり多種含まれ、味わいをましている。
 ダンヒルは今はオーリック社が製造している。オーリック社としては看板のゴールデンスライスドとダンヒルフレーク、ペリク入りとペリク無し、また香料のわずかの違いで区別しているようである。

【参考】ラットレー「マーリンフレーク」
 廉価版と比べると高価なので初心者は手をだしにくいだろうがこれはおいしいたばこである。ラットレー社が廃業するまではこれがバージニアたばこの代表とされていた。現在はドイツのコールハス社が製造している。
 ところがどうやらこれはオーリック製造のようなのだ。オランダのあるパイプクラブが独自のハウスブレンドを作ろうとコールハス社にレシピを送り、製造を委託したところ、ミクスチャーは自社で作るがフレークはオーリックに外注しているとの返事がきてやや鼻白んだと、あるブログに書かれていた。そういうこともあるかと思う。
 しかし、ラットレーのもともとのレシピのせいだろうか、このたばこの旨さは変わらない。これも若干のペリクが混じり味をゆたかにしている。しいて欠点をあげると、これはコールハス製たばこ全般の特徴だが、甘みが強すぎることだろう。ドイツ人は甘党なんだろうか。
 以前はフレークで供給されていたが現在は軽くほぐしたブロークンフレークである。No1ほど砕片でなくやや繊維がのこる。さらに軽くほぐし、詰めやすいやわらかさにしてボウルに収める。

 これらバージニアたばこの国際市場価格を調べてみた。およそだが、No1は5ドル(ただし100g缶10ドルもしくはバルク2oz5ドルで流通)。オーリックは7ドル(50g缶入り)。ダンヒルは11ドル、マーリンフレークは10ドル半である。この2種は国内だと差があるが、国際市場ではほぼおなじ価格帯にある。これで見ると、廉価版としてはNo1とオーリックが並び、一段上の価格帯にダンヒルとマーリンフレークが並ぶことになる。それぞれの価格帯の2種は、ペリク入りかペリク無しで、シャキッとしたブライトバージニアをたのしむならNo1かダンヒル、こってりしたペリク入りをたのしむならオーリックかマーリンフレークが、それぞれの価格帯に並ぶということになるだろうか。

[PR]
by jinsenspipes | 2014-11-23 11:08 | Comments(12)

study: バージニア「カッターグレード葉」

a0150949_11141094.jpg
 マクレーランドのダークスターを書いたとき、2035との比較で「カッターグレード葉」の話がでた。
 この葉は2035のレビューですでに書いたが、ぼくの知識が生半可で、「バージニア葉の先端から下のほう、根に近いほうの葉を指すらしい」というていどだった。ダークスターのレビューではザバディ氏の引用で、2035はこの葉を使っているがダークスターには入っていないと紹介した。
 自分で書いておきながら、はて、この葉はどんな葉なんだろうとずっと気がかりだったが、ようやく判明した。アメリカのあるたばこ葉販売会社のサイトのカタログに掲載されていた。この会社はたばこ葉を葉っぱのまま販売している。キュアリングまでは済ませているが裁断も加工もせず、葉っぱのままである。

「熱風乾燥バージニア・ライト」
 この葉はバージニア葉のもっとも下部の葉を最初に摘んだものです。この部分は上部の葉ほど太陽の光を浴びず、そのため厚みが薄く、ニコチン含有量も少ない。このたばこ葉は2つの目的に適合します。その1は、薄い葉なので火付きと火持ちがいいこと。その2は、シガレットに使うとたいへんマイルドな味わいになること。
別名『カッター』と呼ばれるこのたばこ葉はほかの葉と混ぜると燃え易さを増強します。ただし大手のシガレット製造業者が買い占めてしまうために供給量はわずかです。
 なるほどそういうことだったのか。
 ネット上の別サイトでフィリピンの農務省の記事によると「カッター葉」は1本のバージニア葉全体の8%に過ぎず、グレードはAA、最高級品、最高値で取引されているとのこと。もっぱらシガレット用らしい。
 パイプたばこに使うときは燃焼の調整、マイルドな味にするなどの目的と想像できるがもしかしたらこの葉独特の味わいがあるのかもしれない。いまのところザバディ氏が書いた「やわらかいがやや平坦。しかしレモンバージニアと混ぜてストーブすると魔術が出現する」が唯一の証言になる。

 これはシガレットの話だが、ある人がアメリカンスピリット社にたばこの葉組について質問のメールを送った。その回答で同社の「オリジナルブレンド」の葉組は「72%がアメリカのバージニア葉。18%が海外のバージニア葉(カナダ、ブラジル、フランス)、10%がアメリカのバーレー葉とトルコのオリエント葉です。海外のバージニア葉を使うのはアメリカ産よりニコチンとタールの含有量が低いので、シガレット全体のニコチンとタール量の調整のために混入しています」とのことだった。
 たばこ葉は味ばかりでなくこのように燃焼度やニコチン、タール量の調整などのために選ばれることもあるようなのである。

[PR]
by jinsenspipes | 2014-07-01 11:16 | Comments(35)

study: ザバディ氏に学ぶ(フレークの吸い方)

a0150949_16432895.jpg
 バージニア・フレークたばこについて、ポール・ザバディ(Paul Szabady)氏はニュースグループASP(alt.smokers.pipes)に多くのコメントを残している。無類の健筆家でその発言はわかりやすく勉強になるのでいくつか抜き書きを紹介したい。

「バージニア・フレークの喫煙をマスターするにはほとんど芸術的といえるスキルが必要だが、しかし努力の甲斐はある。習得すればするほどバージニア葉の知らなかった秘密があらわれてくる。バージニア葉の湿り気と喫煙温度はたいへん狭いレンジに収まり、その範囲で吸えば完璧な栄光があらわれる。湿り気が多すぎれば、煙は湿り、香りが失われる。乾きすぎるとヒリヒリするし、舌焼けする。乾き気味のほうが適しているとはいえきわめてデリケートだ。フレークたばこのほとんどは湿り気味にパッキングされているので、喫煙に適した湿り気にするには乾かさなければいけない。」

 バージニアたばこの喫煙には湿り気(逆にいえば乾きぐあい)と喫煙温度がかかわることは体験で感じていたが、こう書かれると、なるほど、味と香りがあらわれるレンジが狭いせいだと納得する。よくいわれるが、バージニアたばこは消えかかりがおいしい。熱くすると味わいはほとんど消える。

「ブライト、ゴールデン、レモン、イェローなどのバージニア葉はもっとも微妙でデリケートなバージニアの香りを味わえるが、それをリボン・カット(あるいはさらに細かい紙巻き用カット)にしてしまうと冷静かつ熟練したベテランでも手にあまる。それをフレークにしたものだけがゆっくり燃焼するクールスモーキングできるし、さらに熟成により、また他のバージニア葉とブレンドすることにより、鋭さをメローにできる。フレークのほとんどは多種のバージニア葉−−−おなじブライト葉でもさまざまな品種のもの、またレッド・バージニア、ストーブド・バージニア、さらにバージニア葉の下部の葉など−−−をブレンドしている。」

 フレークたばことリボン・カットのミクスチャーはおなじパイプたばこでもまったく別物である。ミクスチャーは細かく裁断したバージニア葉、ペリク葉、ラタキア葉、オリエント葉などをミックスし、その混ぜ具合、あるいは熟成による調合をたのしむがバージニア葉そのものの味の深さは曖昧になる。バージニア葉が内包する、ほとんど宇宙的とさえいえる味わいの深淵を知るにはフレークたばこ以外にない。

「クールに吸えば吸うほど香りはゆたかにくる。厚いフレークはゆっくり燃やさなくてはいけないし、たいへん、たいへんゆっくりした喫煙技術がいる。人が休んでいるときのかすかな呼吸に等しいほどである。着火や再着火の際は深く吸いこんではいけない。炎をたばこに近づけるためのほんの2、3回の吸いこみで充分である。軽く吸い、火種をボウルトップのたばこに広げる、必要ならまた火をつけ、トップのたばこがくすぶりだしたらつぎに火種をゆっくりボウルのなかに下ろしていく。ボウルの2/3ほど吸ったら灰を捨てるがわずかな灰色の灰は残すようにする。かならずボウルの最後まで吸いきること。最後の1センチほどが交響曲のクライマックスである。ボウルの半分だけ詰めて吸うか、小さめなボウルのパイプで吸うことで絶頂感を得られる。」
 ぼくが昔、フレークで苦労したのは吸いすぎるせいだった。ミクスチャーはマッチを近づければめらめらと燃え上がる。枯れ草を燃すようなものだ。ところがフレークは板状の固形物だから、いわば材木に火をつけるようなもので、よほどの火力(つまり強く吸う力)がいるもんだと思いこんでしまった。実際は逆なのだ。フレークは軽く火を近づければ、ポッと火がつく。じつに簡単に火がつく。そこでこんどはそれを吹き消さないていどのおだやかな空気を送りこむと火がゆっくり広がっていく。ミクスチャーを吸うときの半分くらいの空気量で充分である。むしろむつかしいのはふつうの呼吸の空気量では強すぎて、ポッとついた火種を吹き消してしまうことだ。前回ザバディ氏の「呼吸喫煙法」を紹介したが、やはり呼吸と、たばこの喫煙はわけたほうがいい。呼吸は鼻で続けておき、それより一段ゆっくりした吸い吹きで口のなかの空気を送りこんだり吸いこんだりする。
 誰もが指摘することだが、バージニアたばこはボウルの底の最後のところが一番おいしい。だからかならず最後まで吸いきるようにするのがいい。それがなぜなかはわからないが、ザバディ氏は長時間吸いつづけることでバージニア葉がストーブド・バージニアのように熱処理されるからではないかと推測している。

 さて。ザバディ氏が推奨するフレークたばこの詰め方である。

「フレークは揉みほぐして吸ってもよい。しかし揉みほぐすことで繊維を破壊するとフレークたばこの素晴らしさは半減する。ほぐさずそのまま吸うか、わずかにほぐすていどがベストである。そのための2つの方法がある。
1: フレークを鋏で小さな4角形に切りわける。大きさはパイプのボウルの内径くらい。それをパイプのなかに積みあげていく。吸いやすくするために小片2つをよく揉みほぐし、1つをボウルの底に収めて燃えかすを作らないようにする。もう1つはボウルトップに置いて着火を容易にする。
2: フレークを適当にちぎり、手のひらを合わせてよく揉みほぐし、だんご状にする。大きさはボウルの内径にちょうど収まるくらい。このだんごをいくつかボウルに収めていく。上から軽く抑え、ちょうどいい吸い心地の固さにする。」

 1は、スリーナンズの詰め方である。ザバディ氏はスリーナンズの愛好家でこれは直径1cmほどの円板。それをボウルに積み上げて吸った。ただしこれは昔の、つまりロープたばこをカットした製品でペリク入り。いまのスリーナンズは板を海苔巻き状に丸めたものだしペリクは無い。ぼくは今のスリーナンズは未体験だが外見はやはり1cmの円板のようだ。それに似せて板状のフレークをカットして吸う方法である。
 しかし、ぼくも試してみたが、うまくいかなかった。昔のスリーナンズは湿り気が多く、むしろベチャベチャした感じだったのでうまく吸えたがいまの乾き気味の板だと隙間が多すぎてうまく吸えないし、鋏で切るのはやや手間である。
 2は、いまぼくはほとんどのフレークをこれで吸っている。ダンヒルやオーリックはやわらかいので簡単にだんごにできるし、あまり繊維を破壊することもない。SGもBBFはこれで吸えるが、FVFは固いし厚いのでだんごにしようとすると割れてしまう。これはまた別の工夫がいるようだ。

[PR]
by jinsenspipes | 2014-02-14 16:47 | Comments(25)

study: 呼吸喫煙法 ( Breath Smoking )

a0150949_2148810.jpg
 ポール・ザバディ(Paul Szabady)氏の「呼吸喫煙(Breath Smoking)」を読んだのはいつだっただろうか。たぶん10年ほど前、G.L.ピースのサイトで読んだはずだ。もともとは1998年、ザバディ氏がニュースグループASP(alt.smokers.pipes)に投稿した記事だった。当時のザバディ氏はASPの人気者でその投稿は争って読まれた。
 初めて読んだとき感動した。当時のぼくは自己流の吸い方で舌焼けもひどいしパイプも焦がした。さっそく試してみたが、手強くて途中で投げ出したようだ。それが最近思い出し、読み直してみた。
 気がつくと、いつ頃からか、ぼくの吸い方もこれに似たものになっていた。投げ出したけれど心のどこかに残り、少しずつ実践していたのだと思う。有名な喫煙法だし、G.L.ビースが彼のサイトに引用掲載しているくらいだからみなさんご存知だろうが、ぼく自身の再認識のために訳出してみた。
 原文はASPでも読めるが、G.L.ピースのサイトにそっくり転載されているのでぜひお読みください。

「呼吸喫煙法」
 これは私のハイプ喫煙の師匠から教わった。ひどく不機嫌で気むづかしい老人だがパイプ喫煙を知り尽くしていた。
 老人はこれを「呼吸喫煙(Breath Smoking」と呼んでいた。どのたばこにも役立つ吸い方だが、とりわけバージニア・フレークには効果がある。
 くつろいだ気分で、できれば椅子にかけ、ゆっくり穏やかに呼吸する。パイプを口にくわえたまま、呼吸は鼻でする。鼻からの呼吸をゆっくり2、3回くり返したあと、ハイプからちょっと吸いこみ、煙を口に含み、つぎにゆっくり、ほんとにゆっくり煙を吹き戻す。ボウルからかすかに一筋の煙があがるていど、そしてまたもう一度。煙はけして肺に吸いこまない。これがうまくいけばパイプから吸うまでもない。鼻から息を吸ったとき口内に真空ができ、それがパイプからかすかな煙を引きこむからだ。吸いと戻しは交互に行うが、ほんのわずかな動作なので(水をすすったり、キスしたりするていど)呼吸そのものの如く、自然で、規則正しく、安らかである。
 きっと喫煙者のみなさんはこの技術、あるいはそのバリエーションをそれぞれに身につけていらっしゃるだろう。これを習得すればクールで味わい深い喫煙ができるし、ゆっくり規則正しい呼吸のおかげで心は平穏に、明晰になり、たばこの最良の味わいを感じとることができる。
 ポール・ザバディ 1998/12/9
 この吸い方の要点はまず呼吸と喫煙、二つをわけることにある。呼吸は鼻から、喫煙は口で。
 昔のぼくはこれを一緒にしていた。上の文章で、吹き戻しは「ゆっくり、ほんとにゆっくり」「ボウルからかすかに一条の煙があがるていど」とあるが、呼吸で吐き出す息はかなり急速で、強いから、一緒だと吐く息ををたわめて細く、遅くしなくてはいけない。つまり、呼吸を早めたり、遅くしたり、不均等にしないといけない。その結果、呼吸が乱れ、心の平穏が破れる。
 一方、ザバディ氏の吸い方は、呼吸は鼻から自然に継続しておき、たばこは口のなかの空気量を増減することにより吸い、吹きする。呼吸はつねに一定であり、心は平常心を保てる。そこで「心は平穏に、明晰になり、最良の味わいを感じとることができる」のである。
 しかし、鼻からの呼吸、口での喫煙、二つをわけるのはむつかしそうに思える。実際はなんでもないことである。食べる、飲むという動作では呼吸のことなど忘れて自然に継続しているし、ちょっと練習する、というかコツがわかれば直ちに実行できる。ぼくも最初はむつかしいと思ったがいつのまにか自然に実践していると気づいた。
 要点の第二は吸いこむたばこの煙がごく少量ということである。「鼻から息を吸ったとき口内に真空ができ、それがパイプからかすかな煙を引きこむ」というくらいだからほんとに微量である。昔のぼくはそれどころじゃない、どッと吸い、どッと戻していた。それにつづいて、第三になるが、吸いこんだ微量の煙を口に含み、ひと休みしてから戻すということ。そこで味わうのも大事だが、同時にひと休みすることで口内を冷やす効果がある。
 それまでぼくは舌焼けと口内の荒れに悩まされたものである。これは軽い火傷で、原因は熱い煙を口のなかで動かすことにある。大量の熱い煙を早く動かせば、火傷はひどく、広域に広がる。ごく微量の煙をゆらゆら動かし、さらにいったん止めるようにすればそのあいだに熱は冷め、火傷にはならない。
 いまのぼくの吸い方はほぼザバティ氏のを元にしているが、さほど規則的でなく、おおざっぱになっている。少量の煙を口に含んだまましばらく味わっていたり、吹き戻しも短かったり長かったり、しかし、そのあいだも呼吸は乱さない。規則的にゆっくりくり返している。長くこの吸い方をしていると、呼吸のことはほとんど意識にのぼらなくなるが、けして乱れることはない。
 この吸い方を実践すると、吸い終わったとき舌焼けはなく、口内はさわやかである。また呼吸を乱してないので頭もすっきりして爽快そのもの。適度のニコチンがまわるから吸い終わるとじつにいい気分になる。

 当時のザバディ氏の投稿にはフレークたばこの独特な吸い方もあり、これが評判で一時、ASPの常連のみなさんがそれを真似たこともあるようだ。その紹介は、また、いずれ。

[PR]
by jinsenspipes | 2013-12-15 21:56 | Comments(34)

【番外編】アメリカンスピリット: ペリク ( American Spirit: Perique )


a0150949_18205124.jpg 番外編で今回は紙巻きたばこである。
 いきつけの街角のたばこ屋のオヤジがアメリカンスピリットの見本品をサービスでくれた。ライトの3本入り。吸ってみるとしっかりしたバージニア味なので次にいったとき1箱買ってみた。黄色箱のやつである。
 ぼくはパイプは家でやるだけ、外出時は面倒なので紙巻きを吸っている。ダンヒルの長いやつで、正式にはfine cutというらしい。いいバージニア味がくるたばこなのでもう何年もこれである。ところがアメリカンスピリットの黄色箱も負けず劣らずで、むしろダンヒルのほうが香料の香りが強いのに、こちらは評判通り無着香らしくストレートにバージニアだけがくる。
 この会社にペリク入りがある。黒箱のやつである。ペリクたばこはアメリカのルイジアナ州の一地域で栽培するペリク葉、これを独特の熟成法で処理したたばこである。しかしペリク葉の栽培農家は激減し、いまは1軒をのこすのみ。のこりの農家はケンタッキー州から安価なたばこ葉を買い付け、これをおなじ熟成法で処理した代替品を出荷している。この代替品は業界でアカディアン・ペリクと呼ばれる。さてこの1軒のこった本物ペリク葉を栽培する農家、こことアメリカンスピリット社が独占契約し、本物ペリクをすべて買い上げることになった。おかげでパイプ業界にはアカディアン・ペリクしか流れないから、パイプ党はアメリカンスピリット社を目のかたきにしているのである。しかし、マ、これも時代の流れか。とにかく黒箱がどんなものか、やってみた。

 黒箱をあけると、おッ、まぎれもない昔のペリクの匂いがするじゃないの。30年も前のスリーナンズの匂い。肥だめの匂いとぼくはいってしまうのだが、お若いかたは知らないだろうナ、鼻が曲がりそうだが妙に惹かれるあの悪臭だった。
 火をつけると、ムムム、甘さ、酸味、加えてこの匂い、なんと、スリーナンズはここに復活していたのだ!
 パイプたばこでペリクを強調したいわゆるVaPerはいまはごく限られた銘柄しかない。現在のスリーナンズはペリク無し、ケンタッキー入りになっている。ジャーマインのペリクミクスチャー、SG社のセントジェームズフレーク、エスクードなどはアカディアン・ペリクを使い、甘さと酸味は申し分ないが、香りはずいぶん薄まり上品なものになっている。マクレーランドのペリク物もそうである。しかしアカディアン・ペリクは純正ペリク葉を使わないだけ、熟成法はおなじだからペリクたばこの特徴はのこっている。昔のペリクの悪臭といいたい強い匂いのかわりに、アカディアン・ペリクは薄い上品な匂いだから、むしろこちらのほうが吸いやすいとする若いファンも多い。年寄りはぬか味噌の古漬けのあの悪臭を懐かしがるが、若い方は苦手かもしれないですしネ。
 しかしこの黒箱は紙巻きたばこの傑作と思う。黄色箱(バージニア)のほうはやはり吸いなれたダンヒルに一歩ゆずって常喫するまでいかなかったが、黒箱は紙巻きでもここまでたばこ葉の特徴をだせるのだと感動して手が放せなくなった。
 このたばこで勉強させられることがあった。パイプたばこでペリクはバージニアの欠点を補完する。バージニアは糖分が多いために燃焼が早く、熱くなりがちだし、いわゆるTongue Biteがある。Tongue Biteは舌焼けと訳されることが多いが、そうではなく、燃焼した糖分が舌にチリチリくること、舌焼けでなく舌チリである。初心者に多い舌焼けは熱く吸いすぎる舌のやけどで、英語だとTongue BurnとかLeather Tongueと呼ばれる。ペリクはバージニアの燃焼をゆるやかにし、またこの舌チリをやわらげる。燃焼時のPHはバージニアはアルカリ性に傾くがペリクは酸性に傾く。そこで中和されるわけである。バージニアたばこに微量のペリクを配合すると燃焼も緩慢になり、舌チリもやわらぐし、さらに独特の甘みがたばこをおいしくする。アメリカンスピリットの黄色箱はバージニアたばこで、若干のオリエントとバーレーを配合するが、やはり舌チリは激しい。無着香なだけにやや粗い感じもある。しかしこちら黒箱はペリクがそれをやわらげ、さらに甘みと酸味がまして大層吸いやすい。このあたりはパイプたばこより違いが顕著で、ペリクの特徴がよくわかった。
 ぼくはアメリカンスピリットの黒箱にすっかり心を奪われた。深夜、そろそろ寝るころ、一服したくなることがあるが、パイプだと時間がかかりすぎて困る。これまではスコッチをワン・ショットにダンヒルの紙巻きを一服という日課だったが、いまはこの黒箱にしている。一日一本、ペリクを吸っているのだ。  

[PR]
by jinsenspipes | 2013-11-04 17:51 | Comments(39)

study: スモーカーズヘイヴンというお店 ( Smokers' Haven )

a0150949_2131491.jpg
 エソテリカを書いた記事でたばこshop、Smokers' Havenにふれたので補足しておきたい。
 この名店はソブラニー社、ジャーマイン社と密接な関係があり、そのハウスブレンドはアメリカの喫煙者の愛好品だった。

 1940年、Joseph Zieveと妻そして義兄のSid Ritterがオハイオ州コロンバス市にSmokers' Havenを開店した。以後、代替わりする1987年までこの店は世界でも有数のパイプとパイプたばこshopとして名声を馳せた。
 ハウスブレンドも数多くあり、それはすべてソブラニー社に製造委託した。銘品バルカンソブラニーを送り出したロンドンのたばこ製造会社である。
 しかし1980年、ソブラニー社は廃業することになり、その際ソブラニー社の責任者、Dr.RedstoneはSmokers' Havenの評判ブレンドが絶えることを惜しみ、後継の製造会社としてロンドンのマッコーネル社とジャージー島のジャーマイン社を推薦した。しかしZieve氏はマッコーネル社のMick McConnellとそりが合わず、ジャーマイン社を選び、以後ソブラニー社のレシピ通りハウスブレンドを製造することになった。
 ところが1983年、Zieve氏は引退してSmokers' Haven店を売却した。店は衰退し、昔日の面影はなく、わずかに葉巻の売上に頼るていどで当然ハウスブレンドたばこも姿を消した。
 この頃、ジャーマイン社のたばこのアメリカ輸入代理人はSteve Richmanだったが、彼の思いつきで、それまでジャーマイン社が委託製造してきたSmokers' Havenのハウスブレンドを新しいシリーズ名で売り出すことにした。これがエソテリカである(正確にいうとEsoterica Tabacciana、訳せば「秘伝の古たばこ」となるか)。旧ブレンド名にかわってつけた名前はすべてイギリスの港湾都市の名をとった(「And so to bed」だけは例外)というからよほど急いだやっつけ仕事だったようだネ。
 しかしせっかくのエソテリカだが、そののちSteve Richmanはすべての権利をアメリカの名パイプ製造者、ビュテラの会社に売却、ためにエソテリカはビュテラのブレンドとして世に知られることになった。なぜ売却したかの理由は不明だがSteve Richmanはその後カリフォルニア州オークランド市にたばこshopを開店しているのでそれが契機になったともいわれている。
 ぼくが買ったドーチェスターの缶にも「ビュテラ社向けにジャーマイン社がブレンドした」と明記されているがそのビュテラ社も2002年にパイプたばこ部門をArango社に売却している。エソテリカは今後どうなるのだろうか。ジャーマインが製造するのはたしかだから同社のエソテリカということになるのかもしれない。
 さてSmokers' Haven店のハウスブレンドは人気商品だったので、名をかえたエソテリカのどれがどれかだというたのしい議論がときどき話題になる。ある識者によるとつぎのようだという(左がSmokers' Havenのハウスブレンド名、右がエソテリカのブレンド名)。

Our Best Blend = Margate
Cognac = Pembroke
20th Anniversary = And so to bed
Krumble Kake = Penzance

 とくに名品Krumble KakeがエソテリカのPenzanceだとする意見は広く流布し、G.L.ピースも「そのものとはいい難いが非常に近い。Penzanceのほうがややラタキアが多い。もしKrumble Kakeを手に入れて比べられれば失望しないだろう」としている。しかしそのPenzanceもまた現在入手困難で、ある愛煙家が代替品としてG.L.ピースのQuiet Nightが同等品と指摘すると、ビースは「同等とはいえないがスタイルは類似する。私の感じではQuiet Nightのほうがやや甘く、味が複雑だが、充分満足するだろう」と返答している。
 やや余談になるが、さらに大胆な意見を述べる好事家もいる。ソブラニー社はSmokers' Havenのハウスブレンドに自社のバルカンソブラニーを封入して出荷していた形跡があるというのだ。その説によるとOur Best Blendはバルカンソブラニーそのもの、エソテリカには移されなかったがExotiqueはバルカンソブラニー#759(いわゆる黒缶)だという。この説にはあるていど裏付けがあり、ソブラニー社とギャラハー社の関係(ソブラニー社は1968年にUKの大手、ギャラハー社に買収され、1980年、廃業の際、バルカンソブラニーの権利一切をギャラハー社に売却した)などがからんでいるのだが、当時両方を吸った経験者から、たしかにおなじだったとか、Our Best Blendを買ったらなかにバルカンソブラニーのライナー(缶におさめた説明カード)が入ってたとか、いろいろ意見がでてきておもしろい。たばこに限らずおいしいものにたいする人間の執着心にはなみなみならぬものがある証拠だネ。

 Smokers' Havenのその後だが、1987年、ふたたびオーナーがかわり、Arvind Chhedaとなり、1999年からはその子息、Premal Chhedaが継いで現在に至る。現オーナーは2002年にふたたびジャーマイン社と提携し、往年のハウスブレンド再発売を宣言した。同社のネットサイトにはOur Best Blend、Krumble Kake、Exotiqueなど銘品が掲載され、アメリカのたばこレビューを読むと実際にこれを吸ったかたのレビューもあるが、いまサイトをみると銘品は欠品し、レビューもここのところ途絶えている。いっとき出荷されたがその後ジャーマインからの入荷はないようである。
 しかしこの最発売たばこもジャーマイン製、エソテリカもジャーマイン製となると「Krumble Kake=Penzance」としてメーカーはどう違いをつけているのだろう。ますますわからなくなる。

 Smokers' Havenの現在のネットサイトは下記である。
http://www.smokershaven.com/
 (クリックでとべます)

[PR]
by jinsenspipes | 2012-09-04 21:08 | Comments(9)

study: ダークケンタッキーの謎 ( Mysterious Dark Kentucky )

a0150949_11461321.jpg
 少し前にペーター・ハインリヒの「ダークストロングフレーク」のレビューを書いた。
 このたばこはオーリック社の「ダークケンタッキー」と中身はおなじらしい。そちらが2007年にアメリカ市場から姿を消したあとファンのみなさんはこれに鞍替えしたようなのである。
 しかし、会社が違うのに中身がおなじなんてある得るのだろうか? ずっと疑問だった。
 ネットで調べても記事がない。ところがあるドイツ語の記事にそれらしい記述がみつかり、めんど臭いけどgoogleの翻訳で読んでみると、あった! そのあとドイツのネット記事を漁っていくうちに、あるある、どうやらドイツではよく知られた話題であるらしいのだ。
 もっともドイツでも真相は不明で、ただこのたばこのファンが、Aたばこ店のハウスブレンド(自家製たばこ)「AA」とB店のハウスブレンド「BB」は同一か? といった話題があちこちに登場していた。
 ドイツに「Pfeife und Tabak」(バイプとたばこ)いうサイトがあるが、ここのフォーラムでは10年前からたびたび話題にのぼり、ついにオーリック製「ダークケンタッキー」と中身がおなじハウスブレンドの一覧表まで掲載されていた。おもしろいので参考に転載しておく。左がたばこshop名、右がその店が販売しているハウスブレンド商品名である。
「Pfeife und Tabak」http://www.pfeife-tabak.de/

「たばこshop名」「商品名」
Peter Heinrichs _____"Dark Strong Flake"
Pfeifenstudio Frank __"Black and White"
Thomas Behrend ____"42"
Pfeifen Bier _______ "23"
Schneiderwind______"Darley Moor"
Diehl_____________"Special Blend The Tiger"
Tabakhaus Bielefeld Crüwell__"45"
Tabak-Keistler______"Bivisible"
Rauch in Wetzlar_____"Tabakskollegium Nr. 3"
Bonner Pfeifen&Cigarrenhaus___"Nr 29"
 このたばこがすべてオーリック製「ダークケンタッキー」だとされているから凄い。
 なんでこんなことがありうるのか? 真相はまったく不明だ。ただこれらのshopのハウスブレンドはいずれもドイツのコールハス社に製造委託している。そこで推測としてデンマークのオーリック社とドイツのコールハス社のあいだに何らかの契約があり、ドイツ国内に限って販売(あるいは製造も)を許可しているのではないか、という説が読めた。
 うーん。またまたぼくにはよくわからない不思議がでてきた。そういうことが裏でこっそりなされているとしてもネットに堂々と一覧表まで公開されているとはネ。
 アメリカではG.Lピースがおなじ製法のたばこ「ジャックナイフ」を昨年発表している。いまのところこのたばことオーリック製を比べた記事は見当たらない。ドイツのサイトには「ジャックナイフ」はまったく登場せず、これを評したアメリカのサイトにはオーリック製はでてこない。
 ぼくはペーター・ハインリヒの「ダークストロングフレーク」が気に入り、ここのところずっと吸いつづけている。ほんとはオリジナルであるオーリックの「ダークケンタッキー」、G.L.ピースの「ジャックナイフ」を手に入れ比べてみたいところだが出来ずにいる。どなたか両方体験されたかたがいらっしゃったらぜひ感想をお聞かせください。

[PR]
by jinsenspipes | 2012-06-30 11:58 | オーリック | Comments(0)

study: 舌焼けのメカニズム ( tongue bite )

a0150949_11311070.jpg
 ぼくも初心者の頃は舌焼けに悩まされたものである。
 いまはまずまずなくなったがそれでも吸い終わったときにやや舌や口内に違和感を感じることがある。
 潔癖性なのか、たばこをやらないときの口内の清涼感が、たばこ吸咽時も、終わったときも感じられないと気持悪い。
 舌焼けのメカニズムは何なのか、すっきりした説明に出会えなかったが、たまたまネットでいいサイトをみつけた。
 David Petersonという愛煙家が書いた記事で、原文はここにあったのだがいま念のためチェックするとこのサイトは閉鎖されて読めないようだ。残念!
http://www.virtualsmokinglounge.com/resources/articles/
tongue_bite_the_bane_of_pipe_smokers_by_david_peterson.html

 ぼくはこの内容をテキストで写してあったので参考までにその抄文を訳してのせておく。
 なるほどと頷ける説明で、初心者の頃、こういうのを読めばずいぶん参考になったろうと悔やまれる。
 舌焼け - パイプ喫煙者の天敵 David Peterson

 舌焼けはパイプを吸うとき熱くなりすぎ、熱が舌を焼くと信じられている。たしかにそれもあるが、厳密に舌焼けを定義すると、吸いこんだたばこの煙がアルカリ性にかたよったときに起きる現象である。上手に吸うときのたばこの煙は酸性でなくてはいけない。
 酸性、アルカリ性を計る基準にPH値があり、これは1から14まで14段階、PH7が中性である。バージニア葉やバーレー葉のPH値はPH5.4 - 5.8でやや酸性、上手に吸えば酸性のおいしい味で吸えるはずである。
 問題はたばこ葉が含む糖分にある。バーレー葉の糖分は0.2%ていど、ほとんど無いに等しいが、バージニア葉の糖分は22%にもなる。この糖分がたばこを燃やせば燃やすほどPH値を高める悪さをする。
 糖分の多いバージニア葉を適度な温度で燃焼させると、糖分が酸素と結合し、中性の水蒸気となって潤いを与え、バージニア葉独特の甘くクールな味わいをだしてくれる。つまり本来糖分の多いバージニア葉は、適度に燃焼させると、酸性のスモーキングを楽しむことができる。ところがさらに熱くなると逆の現象が起きる。この現象が進行した結果、残留アルカリ成分のためにPH値は急速に高まり、つまりアルカリ性になってしまうのだ。

[PR]
by jinsenspipes | 2012-05-12 11:39 | Comments(13)