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マクレーランド: ダークスター ( McClelland: Dark Star )

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 前にレビューした「22」はマクレーランドのパージニアたばこでは一番素朴な味わいだったが、その対極点にあってもっともストーヴされた、つまりこってり料理されのがこのダークスターである。社の解説には、糖分をたっぷり含むバージニア葉とカロライナ葉を使い、充分寝かせ、プレスし、ストーヴする、これを3度繰り返し、このゆたかでクールな味わいを出したとある。
 ダークスターはバルク売りの2035と同等品で、そのレビューは前に書いたが、まったくおなじだった。すばらしい果実味、前にマンゴーと書いたが、まさしくマンゴーを食べているような熟した甘みがある。「22」のほうはでゑさんのいう青リンゴ味、すっきりさわやかな甘酸っぱさが身上だが、こちらはねっとり舌にからんでくる熱帯性の甘みで、そこにバージニア葉特有の青臭さがからみ、何ともいえない芳醇な味わいとなる。
 では2035とまったくおなじかというと、さて、どうだろうか。いま手許に2035はないし、記憶をまさぐるしかないのでおぼつかない。
 しかし、おなじみのザバディ氏は、両者には違いがあると書いている。
「あきらかな違いがある。2035はカッターグレード葉を混ぜているがダークスターは使っていない。この葉はやわらかい感触だが味わいはやや平坦である(イギリスのプラグカットバージニアによくある味わい)。ところがこの葉をレモンバージニアと混ぜてストーヴすると、じつに錬金術そのままの魔術が出現するのである。一方、この葉を使わないダークスターには本来のレモンバージニアの味わいをより深く感じる。一服ごとにその味わいが立ち上がってくるのである」
 ああ! ここまで深くたばこを味わえたらどんなに素敵か!
 とうてい足許にもおよびませぬ。
(カッターグレード葉については2035のレビューをお読みください。といってもぼくの知識はほんの表層だが)
 じつはたまたまSGのFVFとBBFが空いていた。このあたりはぼくの常喫たばこなのでどちらかはたいてい空いているが今は両方あった。これもまたストーヴドバージニアの傑作で、ただ製法がそれぞれ独特なので味わいも変わってくる。そこで比べてみたのだが、といっても同時に2本のパイプで比較したわけではない。ある日ダークスターをやり、つぎの日SGのどちらかをやったのだ。
 すると、漠然とした印象ではどちらも果実味の強い類似のたばこと思っていたが、かなり違うことに気づいた。まず甘さの質が違う。BBFは酸味が強く、マンゴーよりオレンジ風味に近いか。さらに甘みの裏のバージニア味になるとかなりの違いがある。
 このあたりは文字で書けない微妙な味わいだが、やはり違う。BBFとダークスターはかなり似ていると感じたが、FVFはずいぶん違った。甘みの裏にたちあがってくるバージニア味が青臭さ、ときにお花の香り、樹木の肌のような味わい、じつに複雑多岐である。そして、喫煙がじつにクール、清涼、まったく熱さを感じさせない。世界のパイプスモーカーが理想とするクールスモーキングの極致がここにあった。
 しかし、そういう微妙な味わいに違いはあっても、とろんとした甘み + バージニアの芳醇な味わい、その方程式はこの3者に共通する。人口の甘味料でなく、天然の熟したマンゴーのような甘さ、その裏にたちあがる濃いバージニア葉の味わい、それがほしいときはきっと手がのびるのがこの3つのどれかである。バージニアの味わいの違いについてはその日の気分しだいということになるか。

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by jinsenspipes | 2014-06-13 15:37 | マクレーランド | Comments(21)

マクレーランド: 22 ( McClelland: 22 )

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 メアリー・マクニール女史自身が語るマクレーランド社の秘史を読むと、創立時、1977年、最初に発売したたばこは10種で、茶色ラベルの5種の熟成バージニアたばこと緑ラベルの5種のオリエンタル(イングリッシュ)ミクスチャーだった。これはすべて現在も発売されている。
茶色ラベルの5種は、「22」「24」「25」「27」「Navy Cavendish」
緑ラベルの5種は、「1」「6」「8」「12」「14」
(茶色ラベルの「Navy Cavendish」は近年再発されたものでもともとこの名称で発売されていたかどうかはわからない)
 裏話があり、初回のたばこ缶はまわりを紙でくるみ、鑞のシールで留め、いかにも高級感をだしていたが、じつはこれはカモフラージュだった。発足当初の小さな会社は缶詰の技術に乏しく、いまのようなプルトップ缶(缶の上のブルトップを引っ張れば開缶する)は使えなかった。他の会社のたばこはどれもプルトップ缶で簡単に開けられるのにマクレーランドの缶は缶切りでゴリゴリ切らないと開けられない。それを隠すために紙でくるんだというからおかしい。マクレーランド社がブルトップ缶になったのは80年代になってからだそうだ。
 さて、またぞろポール・ザバディ氏が登場するが、氏によるとマクレーランド社の数多いバージニアたばこのうちこの「22」はもっとも「ブライト」なたばこという。バージニア葉にはイエロー、レモン、オレンジなど色によって種類があるがこの明るい色の葉を総称してブライト・バージニアと呼んでいる。バージニア葉の特徴をもっとも保持する葉で、甘み、酸味、わずかの青臭さがある。
 ブライト・バージニアを熱処理すると赤みが増し、レッド・バージニア、ブラウン・バージニアになり、さらに進むとストーブド・バージニアとなる。マクレーランド社のもっともストーブされたバージニアは「2035」で、「22」の対極にあると氏は書いている。ここまでくると青臭さは消え、かわりにねっとりした甘みがでてくる。SG社でいえばFVFだし、昔のダンヒル・オリジナルでいえばロイヤルヨットであのミルク味はストーブドバージニアの傑作といわれた。
 ぼくはこのストーブドバージニアが好きですでに「2035」は試しずみ。なのでその対極にある「22」を吸い、バージニア葉のストレートな味とこってり料理された味、両極端を味わいたいと考えた。ついでにマクレーランド社の初発売たばこの実力を知る知識欲も満足できる。
 缶をあけるとおなじみのブロークン・フレーク、というかこれはケーキから切り出したものだろう。マクレーランドのバージニアたばこはすべてイギリスの伝統製法を踏襲している。つまり、まずプレスしてケーキを作り、じっくり熟成させてから切り出す。デンマークやオランダはこのケーキを作る工程を省略するから味わいがまったく変ってくる。
 ケーキを切り出すといっても最初は板状にスライスするからフレークたばこの製法とおなじである。しかしマクレーランドは板状のフレークでは発売せずかならずブロークンにしている。これは吸いやすさを考慮するからだろうか。マクレーランドのブロークン・フレークは他社の板状のスライスより火つきや火持ちがよく、吸いやすい。
 いい甘さがある。それとかすかな酸味。これがまったく果実の甘みと酸味にそっくり。自然な風味そのままである。わずかに青臭さがあり、それらが一体となってじつに爽やかな気分になる。「2035」あたりになるとねっとり重厚な味になるからやはり対極にあるたばこである。YouTubeでパイプの吸い方を紹介しているでゑ氏は前にこのバージニアの青臭さを青リンゴのようだと書いたことがある。じつに適切な形容なのでぼくも使わせていただく。「22」の味、香りはまさにでゑ氏のいうリンゴのよう、それに比べて「2035」はマンゴーのようである。
 じつは今、オーリックのゴールデンスライスドが手許にある。ぼくはこれとか、マクバレンのバージニアNo1、ダンヒルのフレークなど、デンマーク製の廉価版たばこをかならずどれか切らさないようにしている。マクレーランドやイギリスのSG、GH社のたばこはやや湿り気があるので乾かしてからでないと吸えない。それも30分だったり1時間だったりするからちょっと手間がかかる。デンマーク製たばこは紙巻きとおなじでひょいと手軽に吸えるので便利である。
 オーリックはいい酸味が特徴で心地よい。少し吸うとペリクの自然な甘みもくる。よくできたたばこだが、マクレーランドやイギリスたばことは決定的な違いがある。つまり味がすべて表面に勢揃いしている感じで、ちょっと深く吸いこんでもそれ以上の深みはない。いっぽうマクレーランドなどは味が底のほうからわき出してくる。深く吸うと、これまたいろんな味がきたりする発見がある。この違いはたばこの熟成にある。いっぽうはじっくり熟成し、複雑な味が出はじめてから出荷する。いっぽうは右から左、チャチャッとプレスして切り出して出荷する。おのずから違うのだ。酸味や甘みもいっぽうは人工調味料で出しているが、いっぽうはバージニア葉の自然な甘みで、それが出るまで熟成を続けるのである。
 しかしこれは優劣ではない。姿勢の違いなのだ。どちらもバージニア葉の基本風味はある。その上でいっぽうは人工調味料で味を濃くし、燃焼剤で火つき、火持ちをよくし、吸いやすくしている。シガレット感覚で、火をつければすぐ味がくるようにしている。もういっぽうは30分くらい乾かし、それでも火つきはやや悪く、しばらく格闘しなければいけない。そのかわり順調に燃えはじめればそこから先はそれこそ天国に遊ぶ気分になれる。
 マ、ぼくは閑人だから、そちらが好きですけど。

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by jinsenspipes | 2014-03-24 17:06 | マクレーランド | Comments(33)

マクレーランド: スミルナNo1 ( McClelland: Smyrna No1 )

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 マクレーランドの「グランド・オリエンタルズ」シリーズ、その2である。
 このシリーズは2缶買ったが、前に紹介したイェニジェは有名なクサンチ葉の代表。一方こちらは今のトルコたばこの代表である。今、オリエント葉と呼んでいるのは以前はトルコたばこと総称され、かっての広大なトルコ帝国(オスマントルコ)領で産出されたたばこということだった。クサンチは、そのトルコ帝国領の、昔、マケドニアとよばれた地域になるが、今はギリシャの都市になっている。一方こちらスミルナは今のトルコのイズミル市の昔の呼び名で、大都市になり、ここで産出するたばこはトルコのたばこ輸出量の3/4を占めるという。ここのたばこはふつうイズミル葉と呼ばれるがマクレーランドは古い地名であるイェニジェに合わせて昔の呼び名を使ったのだろう。
 さてこのたばこ。缶を開けるとイェニジェとおなじ細かく砕いた葉だが、上にちょこんと、おまけでスミルナ葉の現物がのっていた。ずいぶん小さいたばこ葉である。なんだか期待感がいっそう高まる。
 火をつけると、ああ、イェニジェと似た甘くいい香りである。すばらしいハーブの芳香というところ。香りがイェニジェとやや違う気もするがこのあたりは言葉で書きようがない。少し吸ううちにイェニジェにはなかったスパイシーな味がきた。ちょっと胡椒味を思いださせる。甘みはイェニジェよりやや硬質、かわりに酸味がやや強い。さらに吸ううちにバターのようなクリーミーな味もきた。いや、これは複雑な味のたばこだ。
 イェニジェはとにかく香りたかく、ふっくらとやわらかい、比較していえば女性的な味で、スミルナはいい香りのなかにスパイシーでクリーミー、さらに複雑な味も秘め、男性的な味ということになるか。しかし、どちらも日頃のバージニア葉とまったく違うふっくらした香り、甘くやわらかい味わいがあり、この点は共通し、やはりこれがオリエント葉の特徴なんだろうと思う。うっとりする吸い心地である。
 さて。ぼくはオリエント葉の味をだいたいつかんだ。これからイングリッシュ・ミクスチャーをやるときはオリエント葉がどう配合され使われているか、見当つけられるだろう。ようやく人並みになったというところである。
「グランド・オリエンタルズ」シリーズにはあと6種の葉がある。マケドニア産では、有名なドラマ葉、さらにカテリニ葉、またイェニジェ葉にラタキアを配合したイェニジェ・ハイランダー。トルコ産ではこれもよく知られたサムスン葉、それとアゴンヤ葉。ほかにグルジア国のソクホム葉がある。いまのところはここで止めておき、しばらくしてこんどはドラマ葉、サムスン葉あたりをやってみたいと思っている。
 ところで。
 上の写真にジャーが見える。じつは郵送されたたばこの缶がちょっと凹んでいた。マクレーランドの缶はプルトップの缶詰だから開けなければ問題ない。しかし開けたあとプラスチックの蓋を被せたとき缶がわずかでも凹んでいると空気が漏れやすい。そこで開缶と同時にたばこをジャーに移した。
 識者の指摘だとマクレーランドのプルトップ缶はヨーロッパのコインツイスト缶より気密性が高いそうだ。コインツイスト缶は開けてしまえば気密性はほとんどなく、開缶時の味はせいぜい1週間、とくにSGなどの四角缶は2、3日で香りが抜けることがある。しかしプルトップ缶のほうは開けてプラスチックの蓋をするともう少しもつという。
 2oz(50g)缶は1日に3服ていどやる平均的パイプ喫煙者の1週間分だから、まあ、それでいいことになる。ぼくも1日に3服〜4服だが、ひとつの銘柄でなく、あっち吸ったりこっち吸ったり、常時3、4種のたばこが空いてるからうっかりすると1ヶ月放置したのが出てくる。本来なら缶から直接、デザインもたのしみながらやりたいところだが長引きそうなのはジャーに移すようにしている。今回はそういうわけですぐジャーに移した。

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by jinsenspipes | 2013-10-22 16:55 | マクレーランド | Comments(4)

マクレーランド: イェニジェ・シュブリーム ( McClelland: Yenidje Supreme )

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 マクレーランド社のオリエントたばこである。ぼくがマクレーランド社に関心をもったのはその世界一のオリエントたばこコレクションだった。世界一と書いたが、オリエント葉をこれだけ多種、網羅している会社はほかにはない。
 パイプを始めた頃は旨い、まずい、好き、嫌いだけだったがそのうちたばこ葉に興味をもちだした。バージニア、バーレー、ラタキア、ペリク、ケンタッキーはようやく味と香りを憶えたが、オリエントだけはいまだによくわからない。イングリッシュミクスチャーはバージニアとオリエントを基本とし、ここにラタキアやペリクを香料たばことして加えたものだが、どこまでがバージニア味でどれがオリエント味なのか判然としない。何年パイプやってんだ、と叱られそうで恥ずかしい。
 マクレーランド社の「グランド・オリエンタルズ」シリーズはなんと! オリエント葉だけ7種を集めた素晴らしいものである。じっくり味わえばオリエント博士になること請け合い。オリエント葉とひと口にいっても、クサンチ葉あり、ドラマ葉あり、サムスン葉あり、スミルナ葉あり、オリエント葉の特徴がわからないなんていってるぼくは初心者もいいとこ、じつは奥が深いのだ。
 手始めにイェニジェ葉(Yenidje)をやることにした。イェニジェ葉は有名なクサンチ葉(Xanthi)の一種だが、この名を高めたのはパイプ愛好家の伝説になっているバルカンソブラニーのおかげだった。この名品の缶に「イェニジェ葉を使用」と書かれていたためである。当時、オリエントといえばクサンチ葉が知られていてイェニジェ葉など誰も知らない。ある説によると、これは同社の宣伝の妙で、ヨーロッパでは無名の地名をだして高級感を煽ったというが、実際にイェニジェはクサンチと並ぶたばこ葉の名産地だった。しかしこの村は大火で滅亡し、まもなく復興はしたものの昔日の繁栄はなく、細々と生産したたばこ葉は隣り村のクサンチに出荷し、そこからクサンチ葉としてヨーロッパに出回っていたらしい。バルカンソブラニーはたぶんイェニジェ産の葉を選んで買い付けたのだろうし、マクレーランド社の説明によるといまでもイェニジェ村のあたりはクサンチ葉でも最良のものを産出しているという。
 さて。恐る恐る缶をあけた。
 まずきたのはおなじみのケチャップ臭だ。かなり強い。ちょっと気勢を削がれた。かなり細かく乾いた黒い葉と赤茶色の葉でさぞかしじっくり熱処理熟成がなされたのだろうと想像できる。
 火をつけ、一服やると、これは! すばらしい香りがきた。なんといったらいいだろう。甘くやわらかい、夢見心地にするハープの匂い、といおうか。クリーミーでロマンチック、これまでどんなたばこにもなかった新鮮な香りだった。これがオリエントだったのか!
 しばらくこの香りをたのしむうちにもう一種、やや違う味がきた。最初のは香りで、鼻をくすぐるが、こちらは舌にくる味。ちょっと硬質の、よくいわれるスパイシー味といおうか、ぼくの印象では最初のはオリエント葉の葉っぱの先端の香り、こちらは茎の味といったところである。
 うーん。ぼくが感じていたオリエント葉の印象はまったく書き替えられることになった。
 オリエントはふつうスパイシー味といわれるのでぼくはイングリッシュミクスチャーのやや硬質な部分、これがオリエントだと思っていたがそうではなかったのだ。オリエントはもっと甘く、やわらかく、香り高いものなのだ。
 たまたまSG社のスクワドロンリーダーが空いていた。これはバージニア、オリエント、ラタキアの典型的なイングリッシュミクスチャーである。で、これをやってみると、ああ! まぎれもなくそれがあった。このたばこはSG社独特の、甘く、やわらかく繊細なたばこだが、ぼくはそれはバージニア葉の熟成のせいと思っていた。そうではなく、この甘み、やわらかさはオリエント葉の特徴からくるもので、よくよく味わっているうちにイェニジェ葉に似た香りも、やや違うようだが、きた。
 イングリッシュミクスチャーでは、バージニア葉にラタキアで強い香りづけをする。ペリクは甘酸っぱさを追加する。そしてオリエントは、やわらかさとロマクチックな香り、とろける甘みを加える。そうだったのだ。
 バルカンソブラニーの伝説はこのイェニジェ葉の特徴を最大限ひきだし、さらにいま同等品は望むべくもないシリア産ラタキア葉で土の香りづけをした、そこに端を発したのではないか。
 マクレーランドのこのたばこは本物のオリエント葉の味と香りはこれなんだ、と事実をつきつけることで、世に出回る安物のイングリッシュミクスチャーの底の浅さを露呈させようとした。そんなことまで頭に浮かんだ。

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by jinsenspipes | 2013-10-05 00:05 | マクレーランド | Comments(10)

オーリック: ゴールデンスライスド【R2】( Orlik: Golden Sliced )

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 しばらくマクレーランドのバージニアがつづき、ひさしぶりにこれを吸ったら、このたばこのよさを再認識した。
 国内で買えるし、価格も気安い。味もいいし、吸いやすい。まずは申し分ないんじゃないか。
 前にレビューしたのは海外通販で買った缶入りだが、こちらは国内で買ったポーチ入りである。開けてびっくりしたのはダンヒルのフレークのような板状の小片でなく、長〜い帯状フレークだった。
 上に載せた写真の一番上と右下はポーチに収まるように三つ折りにしたもので、真ん中によじれて見えるのが全長である。伸ばすと40cmくらいある。それを三つに折りたたみポーチに収めたので、見ためは15cm x 4cmのフレークに見える(それが一番上と右下です)。
 やや湿り気があり、やわらかい。これを繊維に沿って縦割りにし、くるくるッと丸めて詰めてもいいし、ボウルの深さに合わせて三つ折りか四つ折りにしてもいい。ダンヒルやFVFのようにしっかり固めたフレークだと丸めたりたたんだりするうちに折れたりばらけたりしやすいが、これは繊維がやわらかいので楽だ。板状のチューインガムを丸める感覚である。
 フレークたばこをほぐしたり千切ったりして吸う方がいらっしゃるが、ぼくはせっかくのフレークがもったいない気がする。リボンカットのたばこはうまく丸めても隙間ができ、そこで燃焼が止まることがある。フレークなら緻密に圧縮した繊維が連続するのでいったん燃えだせばまず消えない。しかもゆっくり燃えるからおなじ量ならリボンカットより5割増し長持ちするといわれる。
 着火に苦労すると思われがちだが、オーリックのこれはほとんどマッチ1本でめらめらと火がつく。ほんとに吸いやすいたばこだ。火さえつけば最後まで燃えつづけるが、それでも消えやすいとおっしゃる方はたばこが自然に燃える早さに合わせて吸ってないのだ。
 パイプたばこは燃焼剤が不在だから、ときどきあおり、火をおこしてやらなくてはいけない。パイプを吸うと、空気がボウルトップから入ってたばこを通過する。そのとき、火種が一瞬あおられ、細くなった火がポッと赤くなる。吸いこんだ煙がやや熱を持ったかなと思うていどで充分である。吸ってばかりいるといわゆるエントツになる。そこでこんどは口内の空気をパイプに吹き戻す。ボウルからはゆらゆら一条の煙がたっている。口内の空気を送るとき、そのゆらゆらの煙が乱れたり、あわただしくなってはいけない。少し元気づいたかなていどでよろしい。吹き戻しで火はボウルのなかで水平に燃えひろがる。吸うにしろ、戻すにしろ、これはたばこが自然に燃える早さに合わせるのである。そうでないと送りこむ空気の強さで火を吹き消したりしがちである。
 さて。喫味だが。
 ずっとマクレーランドのバージニアを吸い、この葉の特徴がわかってきた。しっかり熟成したバージニア葉は、甘み、酸味、果実の香り、花の香り、じつにさまざまな味と香りをだす。
 オーリックのこれはポーチをあけると、柑橘系の甘酸っぱい香りがし、そのさわやかな酸味と甘みがさいごまでつづくがこれは着香したものだとぼくは推測できた。マクレーランドでいえば着香たばこの5115とおなじである。バージニア葉は数種をブレンドしているらしく、「ゴールデン」の名称通りブライト葉の青臭さもあるし、またレッド葉のトースティな感じもあり、やや乾いた、やわらかくていい味が心地よい。ペリク葉がわずかにまじり、とくに後半はペリク味がでてくる。前半の着香した柑橘系の香りがとんで葉の味が直接くるのだろう。
 前のレビューで、お膝元のデンマークではパイプ喫煙者の90%がこれを吸っているというレポートを引用したが、つまりこれはまったくの大衆商品、量産品で、それが強みにも弱点にもなっている。安価なのにしっかりバージニア味がくる(海外通販だと2oz缶が国内シガレットの1箱半ほどの値段)。さわやかな酸味と甘みが心地よい。火つきも火持ちも抜群によい。これは大衆商品として最大の魅力になる。しかし、マクレーランドのバージニアのように奥深い、おもしろみというか複雑さというか、それがあるかというと、残念ながらまったくない。このたばこはデンマーク国内はもちろん世界に愛好家がいる大衆商品、いっぽうマクレーランドはアメリカのごく一部の好事家の好む嗜好品。生産量も違うし、狙いめも違うだろう(マクレーランドの5115は2ozだとオーリックの5割増しの価格帯だ)。
 ぼくはマクレーランドのバージニア(もちろんそれが理想とするイギリス物も含めて)が好きだがときどきオーリックのこれやマクバレンのバージニアNo1、ダンヒルフレークを買うときがある。マクレーランドはおいしいが、じっくり味わうなら静かな書斎で気持を鎮めたときがいい。屋外とか、パプでひょいと吸うたばこではない。いっぽうオーリックはどんな場所でも期待の味がきて裏切らないから気安く吸える。お部屋でじっくりジャズを聞くのも一興、パプでにぎやかなポップスを聞くのも一興。そんなところだろうか。

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by jinsenspipes | 2013-08-08 11:02 | オーリック | Comments(6)

ダンヒル: ロイヤルヨット【R2】 ( Dunhill: Royal Yacht )

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 このたばこのぼくの第一印象はミルクと蜂蜜味だった。甘くとろんとした味だがその裏にブライトバージニアの青臭さがしっかりただよっている。逆にいうと、野性的で青臭いバージニア味を甘みとミルク味がやんわりくるみ、野性味と都会味、相反する二つがここではふしぎな調和をみせている。こんな味のたばこはほかに類がない。じつにユニーク、唯一無比である。
 ダンヒルたばこの製造がダンヒル社からマレー社に移管したのが1981年、このあとしばらく質が落ちたというブーイングがしきりだったがふしぎなことにロイヤルヨットだけは好評だった。さらに2005年、マレー社の廃業で製造はデンマークのオーリック社に移って現在に至るが、ここでもロイヤルヨットの不評はほとんど出てない。もともとのダンヒルのレシピのユニークさがこのたばこの独自性を永らえているのかと思う。
 ロイヤルヨットがダンヒル社のカタログに初めて載ったのは1912年だそうである。ダンヒルのロンドン開店が1907年で、最初は客の注文を受けてブレンドする専門店だったがまもなく自社ブレンドを発表する。おそらくそのごく初期の商品だったと想像できる。手許にある1927年のダンヒルたばこパンフレットのコピーでロイヤルヨットはこう紹介されていた。たぶんこれがこのたばこの最初の紹介文と思われる。

「最高級たばこ
 以下に掲載する2種のたばこ(ロイヤルヨットとYe Olde Signe)は贅沢の極致です。
 そのたばこ葉は通常の大農園で栽培されたものではなく、小さな庭園で手をかけて栽培され、特別の品質を与えられました。
 ほかのたばこでは味わえないよろこびがあります。
 もう一度申し上げます。とっておきのときにお吸いください。いつもの満足をはるかに越えた満足感があります。
 『ロイヤルヨット』
 本物のシェード・バージニアです。
 たいへんやわらかい喫味。
 とくにデリケートな喉をお持ちのかたにお薦めします。
 (以下はYe Olde Signeの説明なので省略)」

 シェード・バージニア葉は直射日光を避け、日陰で栽培したたばこ葉で、アメリカのごく一部で作られ、おもに最高級葉巻のラッパーに使用された。最初のロイヤルヨットはこれを使ったのだろうか。
 つぎにおそらく1970年代のものと思われるダンヒルたばこのパンフレットでロイヤルヨットはこう紹介されている。

「じつに贅沢なたばこ。最高級のレモンバージニア葉とブロンズバージニア葉をじっくり熟成、これをしっかりボディがありクールスモーキングを約束するバージニア葉にくわえることで甘みと輝きを与えています。最後の工程でユニークな香りを添え、ほのかな芳香を漂わせました。この国際的に有名なたばこは人前で吸うのに最適です」

 この紹介文はダンヒル社の手になるものとしては最後と思われるが、現在、オーリック社製造になってからはLemon & Bronzed Virginiaの部分は割愛されて流布している。

 さて。ぼくのこのたばこの印象で、ブライトバージニア葉の青臭さと書いたのはまさにこれだった。マクレーランドでいえば2035や5115のブライトバージニア葉に通じる。ボディになるのはレッドバージニアで、ミルク味や蜂蜜の甘さはストーブした段階で出てくるものと思うが、その甘さはもっとかすかなものだから、やはりあとで甘みを添加しているのだろう。
 オーリック製になってからもこの特徴は変わらない。海外レビューでマレー製とオーリック製を比較したのがあり、ほとんどのかたがオーリック製になり香りもニコチンも弱くなったと指摘しているが、むしろいまのオーリック製のほうが吸いやすく好ましいと書いたかたもいる。
 ぼくのロイヤルヨット初体験はそう古くなく、2008年である。もちろんオーリック製になってからだがその初印象がミルクと蜂蜜+独特の青臭さだった。しかしオーリック製になってからも製法に変化があるらしく、最近のは着香が少し複雑になっている気がする。海外の識者はチョコレート味や干しぶどう味を指摘するがたしかにいろんな香りが花火のように飛びかう。かわりにミルク味と蜂蜜の甘さが薄れ、以前のシンプルなそれでいて強烈なしたたかさがたわめられている感もある。マ、時代の好みということになるのだろうか。

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by jinsenspipes | 2013-07-07 21:09 | ダンヒル | Comments(4)

マクレーランド: 5115 オールドワールドクラシック ( McClelland: 5115 Old World Classic )

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 3年もほっておいた5100をあらためて吸い、感動して買いこんだマクレーランドのバルク物4種、さいごは5115である。
 果実味たっぷりの2035、極上オリエントの2020、ペリク入り2015。ストーブドバージニアから典型的イングリッシュミクスチャーまでバージニア葉の生の魅力をたのしんだあと、こんどは着香バージニアである。紹介文にはこうあった。
「最良のレモンバージニアとオレンジ-レッドバージニアをブレンドし、生のフルーツエッセンスで強調、熟成させてケーキにしました。わずかな甘み、充分クリーミィ。興味をそそります。伝統製法による熟成バージニアたばこの最良品です」
 ケーキを削りだしたものでやや固く、わずかに湿り気がある。2035とおなじで掌で揉みしだいてボウルに詰めた。
 2035に似た味わいである。バージニアにぼく好みの青臭さがある。これはレモンバージニアなんだろうが、それにレッドバージニアのトースティな味がときどき混じり、心地よい。そして、やあ、かなり強い酸味がある。この酸味はいわゆるcitrusである。秋の酸味果物、カボスやスダチを思わせる。
 よく酸味と書くが、これも多種あり、2035のように甘みが強いのはフルーティ、マンゴーのような丸い酸味である。ペリクの酸味はもっと熟した、腐敗寸前といおうか、もうちょっとで酒になってしまう甘酸っぱさ。この5115は刺激的な酸味で、夏になるとみなさんレモンを絞ってレモネードを作るがあのキリッとした感触に似ている。
 その酸味とともに甘さがあるがこれは着香の甘さ。ところがしばらくやってると、この着香の酸味と甘みのうしろにバージニア葉の自然な甘みがあらわれてくる。着香の甘さは、たとえばアンフォーラ、舌とか唇あたりに感覚できる砂糖甘味であり、一方、たばこ葉の甘みはもっと深いところにあり、吸ううちに感覚できる。
 2035と似ていると書いたが、そちらの果実味はバージニア葉をストーブしてにじみ出した味、こちらのctrus味はフルーツエッセンスを加味した味でやや直接的である。2035はバージニア味をたのしむうちに甘みや酸味を裏で感じる。こちら5115は甘みと酸味が前面にきて背景にバージニア味がある。どちらもそれなりにたのしめる。
 いま、ふと、アンフォーラを思った。これはキャベンディッシュたばこだが発想は5115とおなじだろう。2035をもっとも素朴、ナチュラルなバージニアたばことすると、5115はそこに含まれる属性、酸味や甘みを強調するためにフルーツエッセンスを加える。やや人工的になるが2035よりわかりやすい味になる。アンフォーラもおなじ発想だが、これはあらかじめしっかり味つけしたバージニア葉を加熱圧縮するので味が濃く、ナチュラルな風味がやや失われる。そのかわり味は一段とわかりやすくなる。マクレーランドは2035でもっともナチュラルなバージニア葉の味わいを、5115で着香してあるがさほど不自然でなくむしろわかりやすい味わいを提供したのだろう。
 おいしいたばこである。バージニア葉、2種のブレンドぐあいもいい、アクセントをつけたcitrusな酸味が素敵。甘みも充分あるし、とくに後半はクリーミィな感じもでてきた。しかしぼくは漠然とだが、このたばこ、もっと奥があるのではないかと感じた。さまざまな要素がそれぞれ主張し、ややとりとめない。調べてみるとネットの記事にこれがあった。
 G.L.ピースがたばこの保存と熟成について書いた記事はご存知と思う。真空パック保存、真空でないジャー保存、ポリ袋保存などの得失を科学的に記述して参考になる。ある読者がこれを実践し、3年ほど保存したところピース氏の指摘通りの結果だったと寄稿文を寄せている。このかたは5115を4通りの保存方法で3年、保存した。ポリ袋とジャーを使い、それぞれ空気入りと真空、2種、合計4種である。ピース氏はたばこの熟成には空気の存在が必要で、真空パックはパック前の状態を維持するにはいいが熟成は起こらないとしている。4種のうち空気が入ったままジャーに保存した5115は、3年寝かせてあけたところ「うっとりする」ほどおいしいたばこに熟成していたという。一方、真空にしたものはほとんど熟成のあとはない。ポリ袋に空気を入れたまま保存したものがつぎによく、やや乾燥していたがほどよく熟成していたそうだ。ピース氏によるとポリ袋は水分の遮断にはほぼ適するが分子の小さい香りは抜けやすいとしている。海外のパイプ党はたばこをメイソンジャーにぎちぎちに詰め、上を1インチほどあけて空気をのこすだけ、乱暴に保存しているが、単純だけど正解のようだ。
 ここしばらくマクレーランドのバルクを5種、書いてきたが、海外のレビューを読むと、数年寝かせるといいと書いたものが多かった。マクレーランドのたばこは缶入りは缶に詰めたあと2〜3年熟成して出荷する。しかしバルクにはこの製品後熟成はない。アメリカのパイプ党はこれをよくご存知のようである。とくにペリク入りの2015、上の記事にある5115は、熟成の要ありのようである。
 ぼくはたばこの買いおきはいっさい無く、買って吸うの右から左、生来の貧乏性というかじっさい貧乏なのだが、マクレーランドのバルクたばこの熟成はやってみたくなった。
 3年熟成させると「うっとりする」ほどおいしい、というのは魅力だが、このたばこ、いまでも充分おいしい。citrusな酸味と甘みをまとったバージニアは真夏にレモネードで舌を冷やしながらやるたばこの爽快感がある。

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by jinsenspipes | 2013-06-18 20:58 | マクレーランド | Comments(2)

マクレーランド: 2015 バージニア・フレーク+ペリク ( McClelland: 2015 Virginia Flake + Perique )

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 マクレーランドの第四弾はペリク入りである。
 ペリクについては、ぼく、いささか修行しました。発端は昔のスリーナンズ。もう20年近く前になるか、スリーナンズはほかのどのたばことも違う驚きの喫味があった。
 缶を開けるとジクジクと湿り、プーンと強い刺激臭。まるで肥だめの臭い。これは撚ったロープたばこを輪切りにして作ったので、つまむと解けそうである。1個1個つまんでボウルに積み重ねていく。火をつけると、その臭気にまじって強い甘みと酸味がくる。甘く、酸っぱく、臭いたばこだったが慣れるとこれが病みつきになる。ああ、これがペリクなんだと思いこんだ。
 このブログを始めて2010年、ひさしぶりにスリーナンズを買うと、おや、まるで別物だった。コインたばこには違いないが、乾いているし臭気もこない。吸ってみるとあの味はなかった。いや、ごくかすかに名残りがあるていどだった。
 製造者がオーリック社になり、ロープたばこではなく、コルク板のように薄く圧延したたばこをくるくる巻いたものになった。しかもおなじみのペリク味がほとんどこないので調べてみると恐ろしい事実があった。
 ベリクはアメリカのルイジアナ州の小さな集落、セント・ジェームズ・パリッシュで作られるユニークな品種でこの集落で栽培するペリク専用の葉のみを使う。ところがこの葉の栽培農家が激減し、葉の供給が不可能になったので、ケンタッキーのグリーンリバー・バーレー葉を買い付けて製造を始めた。1980年以来市場に出回るペリクは本物とこの偽物をまぜたものか、あるいはほとんどすべて偽物だというのだ。
 この詳しい事情についてはぼくのブログに記事があるのでお読みください(クリックで別windowが開きます)。
 ペリクの真実
 ペリクの真実 - 追加記事
 また、2010年にスリーナンズを吸ったレビューはここにあります。
 ベルズ: スリーナンズ
 ベルズ: スリーナンズ -again-
(じつはいまのオーリック製スリーナンズはペリクを含まず、ケンタッキー葉のみだとする説が有力のようだ)
 その後ぼくのペリク探訪は続き、ジャーマインの「ペリクミクスチャー」、SG社の「セントジェームズフレーク」などにいきつくのだがそれらについてはそれぞれの過去レビューをお読みください。
 さて。そこで。マクレーランドの2015である。
 ご覧のようなブロークン・フレークで、火をつけると、ムムム、これはおいしい。しかしスリーナンズの記憶味とは違う。違うけれどおいしいという複雑な気持になった。
 たまたま大好きなジャーマインの「ペリクミクスチャーが空いていた。このたばこはおそらく昔のスリーナンズに一番近いものである。かなり強い刺激臭(つまり熟成臭なんだが)があり、甘みと酸味も抜群に強い。足りないのは昔のスリーナンズの濃さというかしつこさで、ややあっさり味というところである。ペリクは偽ペリクだと思われる。
 では2015はというと、これは製造者のポリシーがまったく異なるという感じである。
 ペリクは単体で吸うと甘みも酸味もなくただどんよりしているだけらしい。ところがバージニア葉と混ぜて熟成させるとがぜん真価を発揮する。甘み、酸味を急増し、つまりバージニア葉に作用してその特徴を倍増させるらしいのだ。
 そこでペリク入りたばこのポリシーが2つにわかれる。一つはスリーナンズの方向でそういうペリクの性質を最大限に発揮させ、これぞペリクたばこという真骨頂を作りあげる。もう一つは主体をあくまでもバージニア葉におき、ペリクはバージニア葉の味を強調するていどに止める。ラットレーのマーリンフレークや、オーリックのゴールデンスライスドはこのおだやかな使用例である。
 2015も後者の方向で、ただしペリク色はかなり強く、バージニア葉がまるで違う葉に化けている感がある。
 どうやらぼくの記憶にあるスリーナンズのペリクの使い方のほうが異例であり、ぼくはずっとそれを追いかけていたようだ。
 2015はそれを反省させてくれた。そして、いわばまっとうにペリクを調合したこのたばこは、やはりおいしい。

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by jinsenspipes | 2013-06-09 22:48 | Comments(6)

マクレーランド: 2020 メイチャードケーキ ( McClelland: 2020 Matured Cake )

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 第三弾である。5100、2035でバージニアの単体を2種、堪能したのでこんどは伝統的イギリスブレンドに手をのばす。イギリスはごく近年までたばこの着香を抑止していた。そのかわり、バージニア葉に、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉をブレンドして味わいを広げた。これらの葉はイギリスたばこの着香剤だったのだ。
 とりあえずオリエント葉に目をつけ、マクレーランドのバルクのカタログからバージニア+オリエントの典型を探した。それが2020である。ぼくの読んだ同社の紹介文では、
「よく熟成したバージニア葉の甘さと味に、オリエント葉の独特の香りとやわらかさ、ゆたかさ、木の実風味をブレンドしました」
とある。
 やってみた。
 2020はブロークンフレークのようで2035ほど固くなくしなやかなので丸めて詰められた。火つきがやや悪い。やはり少し乾燥させたほうがいいかもしれない。
 火をつけると、ウウウ、これはまたとびきりやわらかい、ふっくらした味わいがきた。やや油っぽい、いわゆるオイリーという感じ。かなり強い酸味があり、茎茶のような独特の味わい、それにプラスして、英語だとearthyという形容詞があるが、春の野にでたときのかすかな土の匂い、そんな感じ。バージニア単体とはかなり違い、これがオリエント葉の味わいかと思う。そして、ああ、ラタキアが香るではないか。ふとこれもオリエント葉の属性かと思ったりしたが、じつはラタキア入りだったのだ。
 前に書いた2020の紹介文はある通販会社に載っていたものだが、別の通販会社を見るとまったく別の紹介文がのっていた。
「レモンバージニア葉とオレンジバージニア葉、それにオリエント葉のクサンチとラタキアをケーキに圧縮して熟成させ、このすばらしい、しかもヘヴィでない、特別やわらかく、滅多に味わえないゆたかなフレーバーをひきだしています」
 この2つの文章をくっつけて紹介文としているところもある。まあ、相反する内容でもないから、両方ありとして、やはりラタキアは入っていたのだ。
 この解説から改めて葉組を紹介すると、バージニア葉はいわゆるブライトリーフで2035と同等。オリエント葉はもっとも有名なクサンチ(Xanthi)葉で「たばこの女王」とされるもの。クサンチ葉はいまのギリシャ北部のイェニジェ(Yenidje)地方のものが最良といわれ例のバルカンソブラニーに使われていた。マクレーランドはバルカンソブラニーの再現にはとくにご執心でこのおなじ葉を使ったグランドオリエンタルズシリーズには「イェニジェ・シュープリーム」と「イェニジェ・ハイランダー」、2種のクサンチたばこがある。2種の違いはラタキアが入らないの(前者)と入るの(後者)である。このシリーズもベースにバージニア葉を使っているから、ぼくが買ったバルクの2020は「イェニジェ・ハイランダー」とほぼ同等なんじゃないかと想像した。
 しかし、すばらしいたばこである。ぼくのバージニア+オリエント+ラタキアのイメージは軌道修正しなければならなくなった。
 前に書いたレビューでSG社の「コモンウェルス」と「スクワドロンリーダー」、ここでラタキア入りがこんなにふっくらやわらかいものかとぼくは感動した。この種のたばこはそれまでダンヒル965がぼくの常喫で、これはかなり粗く、つんつんしている。バージニアの味はわかるしラタキアは独特の匂いでわかるので、この粗さはオリエントのせいだろうと思いこんでいたのだがまるで見当外れだった。
 2020でわかるオリエントの属性は、オイリーなこと(これはとくにクサンチ葉に特有のようだ)。茎茶と書いたが、茶葉の新芽の茎の部分を使ったお茶はやや硬質で独特の味わいがあり、それに似た味わい。それとやや近いが、春の野の土の香り。そしてとりわけふっくらとやわらかい味わい。そんな感じがあり、どれをとっても965の粗い感触はない。
 SGで感動したときもっと深く読みとるべきだった。しっかり熟成し、葉の味を最大限ひき出せばこのふっくらしたバラエティにとんだ味が出るし、それがもともとオリエントやラタキアの属性だったのだ。
 同時に遠い記憶が甦った。ぼくがパイプたばこを始めた頃、shopが紹介するまま買ったのが965だったが、いま考えると当時の965はマレー社製の後期のもの、まだダンヒル社のシリア製ラタキアのストックが残り、しかも職人肌のマレー社は熟成にも時間をかけて念入りに作っていたはずだ。その昔の965のオリエント+ラタキアの香りと味わい、まるで夢見心地で、ふっくらやわらかいなかに革製品の匂いと外人がいうラタキアが優雅に香った。その後しばらくしてオーリック製のいまの965をやったときはちょっと拍子抜けしたが、マ、こんなものかと思っていた。しかし、SG社のラタキア物やマクレーランドの2020を知るにつけ、ぼくは本物のオリエント+ラタキアを昔から知っていたことに気づかされた。
 しかしそれにしてもマクレーランドのたばこは驚嘆に値する。世のパイプ喫煙者が語り草にするバルカンソブラニーはこの2020を越えたブレンドの妙、熟成の妙があり、さらにすばらしい味わいがあったのだろうと想像できる。ぼくは今、オリエント葉とラタキア葉、その真価を知るほんの入り口に立ったばかりだ。

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by jinsenspipes | 2013-05-22 18:01 | マクレーランド | Comments(10)

マクレーランド: 2035 ダークネイビーフレーク ( McClelland: 2035 Dark Navy Flake )

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 海外のパイプ・フォーラムにある質問がでた。
「サミュエル・ガーウィズのフルバージニアフレークを吸ってみたいがずっと品切れしている。私はマクレーランドの愛好者なのでこの会社で類似のたばこはないだろうか」
 ある識者の書きこみ。
「2035が近いです。製法がほとんどおなじだし、真っ黒な外見も似てます」
 別の識者の書きこみ。
「私はFVFも、2035もやってるし好きですが、味は別物です。類似のたばことは思えない」
 最初の識者の書きこみ。
「私は製法がほとんどおなじといいました。どちらもバージニア葉をじつくり熱処理し、葉がもつ甘みや果実風味を充分引き出しています。味が異なるのはバージニア葉の違いです。SG社はアフリカ産ですがマクレーランドはアメリカ産、それも2035はイースタンベルトのレモン・バージニア葉です。アメリカ産バージニアは糖分の含有量が世界一多く、なかでも2035の葉はずば抜けて糖分が多い。SG社は非凡な技術で糖分の少ないアフリカ産バージニアからみごとに旨味を引き出していますが、マクレーランドのバージニアはもともと糖分が多いのでその点有利ですし、さらにバージニア葉のもつほかのおもしろみも引き出しています」
 さらに。
「FVFがアフリカ産バージニアからいい味を引き出しているとはいえバージニア葉がもつ複雑な味わいはアメリカ産バージニアにはかないません。FVFはわかりやすい、初心者向けたばこで。マクレーランドにはもっと含みがあります」

 この識者の意見で、ぼくは賛成の部分と反対の部分、勉強した部分があった。
 FVFがアフリカ産バージニアを使っているというのは事実なんだろうか。ぼくは知らなかった。もしFVFがアフリカ産とすると、この識者の指摘はおおよそ真実と思われる。
 しかし、だからFVFは初心者向けという結論はアメリカ人の子供っぽい国産品礼讃にみえる。

 2035の葉組と製造についてはマクレーランド社の解説がある。
「このユニークなたばこの製造はイースタンベルトのレモン・バージニア葉とカッター・グレード葉をブレンドし、プレスし、熟成させ、軽くストーブしてみごとな暗色の香り高いケーキにすることから始まります」
 アメリカのバージニア葉の産地は「ベルト(地帯)」で区別され、たとえばオールドベルト(旧地帯)はバージニア葉の原産地であるバージニア州とそこに隣接するノースカロライナ州の一帯、イースタンベルトはノースカロライナ州の東部から中心部にかけて、ミドルベルトはオールドベルトとイースタンベルトの中間部の小地帯である。
 カッター・グレード葉というのはバージニア葉の先端から下のほう、根に近いほうの葉を指すらしいがそれがどういう特徴があるのかはぼくは知らない。
 さて。何はともあれ吸ってみる。
 写真でおわかりのようにこのたばこはケーキからの削りだしでじつはかなり固い。プロークンフレークのように丸めてポイというわけにはいかずしかたないので細かく砕いてつめた。またやや湿り気が強く、ちょっと乾かしたほうがいいようだ。
 火をつけると、ああ、5100でおなじみの軽く、明るいバージニアである。これがマクレーランドのバージニアの、ということはアメリカ産バージニアの特徴なんだろうか。
 しかし、5100と決定的に違うところがある。5100はオールドベルトのレッド・バージニアで香ばしさがまず感じられるが2035にはそれはほとんどない。かわりに強い甘みと酸味、果実の香りがどッときた。そしてときどき青臭さがくる。これは5100には感じなかった。ふと、ぼくは若い頃、ブラジルを旅して覚えたマンゴーの味を思い出した。ぼくが定宿にしていたリオの安ホテルは朝食がマンゴー食べ放題、食堂の中央にマンゴーが山と積まれていた。ブラジルではマンゴーは安果実だからさほどありがたくはないがしかしマンゴーの甘さと、どこかにしっかり青臭さがのこる味は天下一品だった。2035はそんな味わいがある。甘い果実味のどこかに青臭さがのこりそれが心地よい。
 マクレーランドの5100と2035でぼくはアメリカ産バージニアの香ばしさと、果実味+青臭さを知った。そしてじっくり味わっているとたしかに識者のいう通り、さらなる含み味も感じられる。たとえばダンヒルのフレークなどと比べるとそちらはやや一本調子、マクレーランドのたばこは軽快で明るいなかにさまざまな生体反応が跳びはねているようである。
 では、FVFはどうか。たまたま缶が開いていたので比べてみた。ここでぼくは識者の意見とわかれる。ダンヒルのフレークはやや一本調子で含みが少なかった。FVFは違う。こちらはやや暗い、くぐもった感触のなかにやはり深い味わいがある。それはマクレーランドの軽快で明るい感じとは対照的で、やや重厚、やや鈍いがじわじわと沁みだしてくるものがある。喩えてみると、映画とテレビの違いといえるだろうか。テレビの映像は明るく、細部が鮮やかですべての要素があからさまである。映画はどっしりと暗く細部はぼやけて溶け合っているが、いい味がある。テレビの映像は報道の延長だが、映画は作品として自立する。

 しかし、バージニア葉のさまざまな味わいを知るにはマクレーランドたばこはじつに教育的である。アメリカ人は何が何でも組成とか、製造法とか、実体を詮索しなくてはすまされない実証主義者のようだ。イギリス人やヨーロッパ人、旧大陸人はそこは曖昧でも出来がよければいい、完成した作品を愛する性向なのかもしれない。
 好奇心旺盛なジャパニーズとしてはもう少しマクレーランドたばこでバージニア葉について勉強したくなった。

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by jinsenspipes | 2013-05-15 22:46 | マクレーランド | Comments(14)