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Jinsen's パイプ

ダンヒル: マイミクスチャー965

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 ぼくがパイプをはじめた頃から30年あまりのみ続けてきたお気に入り。おそらく世界中のパイプ党が愛してやまないタバコでしょうね。
 ダンヒルのレシピではなく、顧客の注文のブレンドで、965は注文番号とされる。
 こんな光景が想像できる。
 20世紀初頭のある日、ロンドンのダンヒル店を紳士がたずね、店員に特注ブレンドを注文する。
「マイルドでおだやか。甘口がいい。舌焼けは嫌だ。エキゾチックな香りがあればなおいい。それでも全体にコクがあること」
 その通りの逸品ができた。
 葉組はラタキアとキャベンディッシュとオリエント。それぞれが上品に混じりあい、極上のハーモニーを奏でる。香りはほんのりラタキア。甘みはイギリス伝統のバージニアのキャベンディッシュ。ボディには低音域としてオリエントが重心をつける。添加物は何もないのにはんなりした甘みがあり、ラタキアの香りのほかにオリエントの芳香やバージニアのかすかな匂い。それがすべて渾然一体となり、全体としてはマイルドで甘口。ヘイタイプのバージニアは舌焼けの元だがここではキャベンディッシュなので舌焼けはまったくなく、ひたすらおだやかでゆっくり燃える。絶品だ。
 ダンヒルのタバコは1967年からMurray Sons社が製造、当初は旧ダンヒル工場でそのまま作り、1981年から自社工場に移したが2005年に閉鎖。以後はデンマークのOrlik社が作っている。永年の愛好家のなかにはOrlik製造の965に苦情をいうかたもいるがぼくはそうは思わない。ただキャベンディッシュの甘みが昔のほうがとろーんとしてた気もするがこれは記憶違いかもしれない。
 今日は965をダンヒルのパイプ、ハーフベントで吸った。ぼくはベントよりビリアードやアップルが好きだが、965はベントがいい。ラタキアにはじまる微妙な芳香アンサンブルがベントだとよく香る。いや、ただ香りだけじゃないのかもしれない。鼻にくる香り、舌にくる味や甘み、口のなかに広がる味わい、そのすべてがこのタバコから響く。
 しあわせにしてくれる。

by jinsenspipes | 2010-02-26 16:10 | ダンヒル