マクレーランド: フロッグモートン
会社の設立は1977年頃らしいがこのフロッグモートンの発売が1990年、たぶんもっとも初期の傑作である。前々からこのカエルの図柄が欲しかった。
缶を切ると(アメリカタバコは食品の缶詰とおなじ缶なので切ると書きたくなる)甘酸っぱい匂いと、おいしそうなラタキアの香り。葉は黒々していて湿り気がある。ハテ、これはキャベンディッシュなのか。深炒りのバージニアだ。葉組はバージニアとラタキアだけ(たぶん)。
火をつけると、ああ、甘く上品なラタキアが香り、バージニア味にまじる。おいしい。この甘さとラタキアのブレンドぐあいがこのタバコの身上だろう。
しかししばらく吸っているうちに、物足りなくなってきた。イギリス物だとこのあたりでバージニアやラタキアの奥深い味わいがじくじくと出てくるのだがそれがない。いつまでたっても甘いラタキアの香り+バージニア味。うーん、これは。
海外のレビューを読むとやはり評価がわかれるようだ。概して若いスモーカーには好評で、初めてイングリッシュミクスチャーを楽しんだとか、ラタキアの旨さを知ったと絶賛されるが、年配者は物足りないと書き、ラタキア物もしくはイギリス物と着香物のハイブリッドと見られている。
G.L.ピース、マクレーランド、いまのアメリカ代表タバコを吸ってみたが、共通点があり、軽く、まるで紙巻きの感覚で吸えるパイプタバコという印象である。これに比べればイギリスタバコなど泥臭く、よれよれ爺さんのダンスを見るようだ。軽快でスマート、味は細く繊細で、ぼくはまだ一種だけだがほかにコンピュータで描いた精密画のように微妙な味を調合した商品がつづくことだろう。そこに若いパイプファンがつくのだろう。
いや、それでいいのだと思う。サミュエル・ガーウィズやラットレー、ダンヒルの仕事はいまでもちゃんと味わえるのだし、それを真似るのは無意味だ。アメリカ人は現代性と若者の嗜好を一方で考え、イギリスの伝統の味を他方で考え、現代にふさわしい「売れる」答えをだしたのだ。
ぼくはもう年寄りだが、若い人にまじり、しばらくアメリカ人の答えを旅してみよう。