サミュエル・ガーウィズ: 1792フレーク
サミュエル・ガーウィズ社の創立が1792年、創立年号をネーミングしたこのタバコには思い入れがあるんだろうと想像したいところである。じつはこのタバコ、缶入りのほかにもともとのケーキも「COB」プラグとして販売されている。つまりイギリス伝統製法そのままにバージニア葉を加熱圧縮してケーキにし、それを小口にカットしたものが「COB」、さらにそれをフレークにスライスしたものが缶入りになる。
葉組は、社の説明ではバージニア+オリエントとされ、タンザニア葉が混じるとされている。しかしぼくの味覚はそこまで感知できなかった。良質のストレート・バージニアのプラグ・バージョンという印象。
缶を開けると、ジャーマインのミディアム・フレークに似たタコ糸状の細く切ったフレーク。適量をつまんでボウルに詰めればいいから凄く楽だ。やや湿り気があるが火つきは極上、火持ちも最良で、自然に燃えていくのにまかせればいいからエラク長時間吸える。
ケーシングにトンカビーンズ(トンキン豆)が使われている。これは桜餅の風味といわれ、化粧品に使われるそうだ。ごく上品な甘さで、おしつけがましくなくさらりと舌にのる。「しらけさせる甘み」という感触。良質のキナコに似ているか。
タンザニア葉はぼくの味覚では感知できないが、このタバコは少々吸いこんでも熱くならず、舌焼けもまったくない。もしかするとこれがタンザニア葉のご利益かと思われるが、まだまだぼくは勉強不足ですね。
ゆらゆらと自然に燃えるにまかせて吸っているとモーツアルトを聞くような優雅な気分になるが、ちょっと吸いこむとバージニアの旨味がどッとくる。こういう至上の味はアメリカやデンマーク、ドイツ、どの国にもない、イギリス・タバコにしかない伝統の風味と思える。
いやあ、うれしい出会いだった。