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Jinsen's パイプ

G.L.ピース: ストラットフォード

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 G.L.ピースは最初に買ったホッドスデライトが吸ううちにおいしくなった。開缶時はお酒の香りが鼻についたが2週間もしたらほとんど抜けたらしい。かなり強いペリク物で、このペリクがなかなかよろしい。ただしベースがケンタッキーバーレーのキャベンディッシュなのが不満だったので調べてみると、バージニア+ペリクのストラットフォードをみつけてこれを買った。
 葉組はレッドバージニアとペリクのみ。そしてこれは旨かった。
 バージニアのやや青臭い、しかし丸みのある味がまずくる。ペリクはかなり少量で海外のレビューではペリクを感じないというのもある。しかし少量でもしっかり主張し、隠し味ではなくくっきりしたミクスチャーになっている。バージニア+ペリクでは桃山のようにかすかものからスリーナンズのように前面にくるものがあるがこれはバージニア味を旨くひきたてていて好感がもてた。
 アメリカの若い会社、マクレーランドとG.L.ピースについて最初のときに感想を書いたが、おなじ感慨があった。このストラットフォードなどはバージニアとペリクの配合の妙に天才的な閃きを感じるし、それは数学的とさえいえる。
 しかしたとえばラットレーのマーリンフレークに何を感じるだろうか。これは現在ドイツのコールハス社が作り、オリジナルはイギリス伝統製法のバージニア葉のみのケーキだったはずだが、いまはフレークで、バージニアのキャベンディッシュ+バージニア葉+ごく少量のペリクでおなじ味をだそうとしている。そしてその総体から感覚できるのはじつに宏大なバージニア葉の宇宙、開高健が「新しい味覚は新しい天体の発見に匹敵する」と書いたあのひろがりだとぼくは思う。吸うたびに何かしら新鮮なおどろきがこめられている。
 この深みはぼくはアメリカ物には感覚できない。イギリス人、ドイツ人とブレンダーが移っても旧世界人にはのっぴきならないこだわりがあり、新世界人はじつに明快に割り切っている。旧世界人のなかでも日本人は、なにしろ豆腐だの蒟蒻だの、わけのわからない、言葉にできない味覚をもっているんだからなおさらである。
 しかし(また、しかしと書くが)バージニア+ペリクという、いわば言語化された味覚の組み合わせに数学的なエロスを発見するアメリカ人の感覚にも捨てがたいものがある。ぼくにしても、ペリクをちょっとやってみたいというとき、ホッドスデライトに手をだしたときが頻繁にあった。
 旧世界人の得体のしれない味覚宇宙、これは人類永遠の魅力だが、新世界人の、すでに存在し、手なづけたものから美を組み合わせていくセンスもまた新しい発見といえるか。

by jinsenspipes | 2010-05-27 17:07 | G.L.ピース