G.L.ピース: ストラットフォード
葉組はレッドバージニアとペリクのみ。そしてこれは旨かった。
バージニアのやや青臭い、しかし丸みのある味がまずくる。ペリクはかなり少量で海外のレビューではペリクを感じないというのもある。しかし少量でもしっかり主張し、隠し味ではなくくっきりしたミクスチャーになっている。バージニア+ペリクでは桃山のようにかすかものからスリーナンズのように前面にくるものがあるがこれはバージニア味を旨くひきたてていて好感がもてた。
アメリカの若い会社、マクレーランドとG.L.ピースについて最初のときに感想を書いたが、おなじ感慨があった。このストラットフォードなどはバージニアとペリクの配合の妙に天才的な閃きを感じるし、それは数学的とさえいえる。
しかしたとえばラットレーのマーリンフレークに何を感じるだろうか。これは現在ドイツのコールハス社が作り、オリジナルはイギリス伝統製法のバージニア葉のみのケーキだったはずだが、いまはフレークで、バージニアのキャベンディッシュ+バージニア葉+ごく少量のペリクでおなじ味をだそうとしている。そしてその総体から感覚できるのはじつに宏大なバージニア葉の宇宙、開高健が「新しい味覚は新しい天体の発見に匹敵する」と書いたあのひろがりだとぼくは思う。吸うたびに何かしら新鮮なおどろきがこめられている。
しかし(また、しかしと書くが)バージニア+ペリクという、いわば言語化された味覚の組み合わせに数学的なエロスを発見するアメリカ人の感覚にも捨てがたいものがある。ぼくにしても、ペリクをちょっとやってみたいというとき、ホッドスデライトに手をだしたときが頻繁にあった。
旧世界人の得体のしれない味覚宇宙、これは人類永遠の魅力だが、新世界人の、すでに存在し、手なづけたものから美を組み合わせていくセンスもまた新しい発見といえるか。