サミュエル・ガーウィズ: ケンダルクリームフレーク
缶をあけるとふしぎな香り。やや甘く、ややクリーミー。同社の「グラウスムーア」は春の野原にでたようにさわやかな香りだがこちらは木立の多い公園を散歩するようで、ふと「甘い樹木」という言葉を思いついた。そういえばときおり樹木の匂いも漂うような。
ブロークンフレークで少しわらわら崩れている。しかしこれが詰めるときは凄く楽。適当につまんでくるくると丸め、ぎゅっとダンゴにして押しこむ。最初の火付けにやや苦労するがいったん火がつき、ボウルトップ全体が白い灰になればあとはタンピングもせずにさいごまで吸いきれる。リボンカットは詰めぐあいが固いとかゆるいとか気を使うがこちらは製造過程で固さが調整されているから自然に燃えるままにしとけばいい。
このケンダルクリームはフレークたばこのなかでは抜群に吸いやすい。
葉組はバージニアとバーレーのみ。バージニア葉は糖分の含有量が多く、これが舌焼けをおこす原因になる。舌が焼けないまでも口腔全体にややひりひりする感じがあり、これが独特の香りとまじって味を作っている。いっぽうバーレー葉は糖分がゼロに近いのでひりひり感はない。このたばこもバーレーのおかげで味が円く、よく沁みた香りがさいごまでたのしめ、ゆらゆらと経過する時間を旅することができる。
海外のレビューを読むと、この香りをlakeland scentとかkendal scentと呼んでいて、感じかたはみなさんまちまちである。メロウで心地よいという点では一致してるようだが誰もその原料は知らないし秘密とされているそうだ。イギリスの湖水地方(lakeland)とくにケンダル(kendal)だけの独特の草花から作るらしい。サミュエル・ガーウィズ社と兄弟会社ガーウィズ・ホガース社だけがもつユニークな香りである。
じつはSG社にはバーレー葉を使ったブレンドが少ないのでこれを買ったのはその興味もあった。識者によると、このたばこはガーウィズ・ホガース社に対抗するために作られたという。兄弟会社だがガーウィズ・ホガース社はバーレーをふんだんに使い、アメリカ市場向けのたばこを作って成功している。SG社もその路線を狙ったというのだが、さてどうだろうか。
そんなことを考えながら吸うとまたたのしいネ。