ダンヒル: ナイトキャップ ( Nightcap )
缶を開けるとラタキアの匂い、しかし965などと比べるとやや薄い感じ。火をつけると、ああ、やっぱり! ペリクが底にあるので全体がマイルドになっていた。葉組はバージニア、ラタキア、ペリク、オリエントでその混じりぐあいがじつにいい。ペリクは舌に甘酸っぱくからみ、ラタキアはもっぱら香り、そして口内にはバージニアのふくよかな感触。そのすべてが渾然と混じりあいしかし密やかに主張してくる。ダンヒルの傑作レシピである。
ダンヒルたばこにはバージニア葉の味わいを追求したフレークがあり、充分料理したストーブドバージニアのロイヤルヨットがあり、ラタキアとバージニアの配合の妙の965がありと、どれもくっきりした特徴をもつが、ペリクをブレンドしたものは少なくて現行商品ではナイトキャップとDeLuxe Navy Rollsだけである(後者はバージニアとペリクのみのいわゆるVaPerだがぼくは未体験だ)。なのでナイトキャップはペリクを含む貴重なレシピになる。
じつはオリジナルのダンヒルたばこにはElizabethan MixtureというやはりVaPerがあったがオーリック社製のラインナップにはない。古いダンヒル社のカタログによるとこのたばこはエリザベス一世女王統治時代(17世紀初頭)に開拓されたアメリカの最も古い植民地で栽培されたバージニア葉を使っているとある。ただぼくの記憶では数年前にマレー社製らしいこのたばこが日本のショップに入荷したことがあったが買いそこねた。
たまたま965を常喫していたので比べてみた。どちらもラタキアの香りと甘さがある。しかし965の甘さはキャベンディッシュからくるからやや乾いた感じ、ナイトキャップはペリクからくるので甘酸っぱく湿っている。ラタキアは強烈な個性をもつスパイシーたばこなのでその強さを発揮するほど多量に使いつつなお味わいをマイルドにするにはそうした中和剤がいるのだろう。
しかし、ダンヒルがあえて発売したペリク入りナイトキャップがいまは965と並ぶベストセラーになっている!
このあたりは嗜好品の宿命で、価値を決めるのはユーザーということ、おもしろいネ。
追記: ぼくはオーリック社製ロンドンミクスチャーにもペリクを感覚する。しかしオリジナルにはペリクの記載は無く、これはオーリック社独自の裁量だと思う。オリジナルのもつ甘みや熟成感をだすために微量のペリクを入れるのはよくあることだからだ。しかしこれはまったくぼくの独断であるいはペリクは入ってないかもしれない。