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Jinsen's パイプ

サミュエル・ガーウィズ:  スクワドロンリーダー ( Squadron Leader )

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 この銘品もぼくは初体験だった。おいしいたばことは承知しつつ、ごく一般的な葉組なのでつい目新しいもののほうに目が向いてしまっていた。初めてやって期待をはるかに越える逸品とわかった。
 SG社は缶のデザインがたのしいが、この缶の図柄は一次大戦で活躍したイギリスの複葉戦闘機、ソッピース・キャメル(Sopwith Camel)。たばこの製造も当時でイギリス空軍を称えたものという説もある。ブレンド名は「飛行中隊長」。軍隊用語ではスコードロンリーダーと表記されるが階級が空軍少佐になるので日本では「イギリス空軍少佐」の別名でも知られる。
 葉組はバージニア、ラタキア、オリエントで、缶を開けるとオリエント葉の香りが強くラタキアとバージニアを圧倒する。火をつけると、うっ、これは旨い! すばらしい味わい。
 バージニア、ラタキア、オリエントの壮麗なハーモニーというか、いっそtutti(全奏)というか。オリエント葉のスパイシーでやや刺激の強い味わい、ラタキアの脂っぽい燻製臭、バージニアの青臭い匂い、それがどっと口内にひろがり、それぞれがしっかり主張して止まない。まぎれもなく最高級のイギリスブレンドである。
 初盤はそんな感じだが、中盤、終盤になるにつれて3種が微妙にまじりあい、甘みと酸味を増し、しっくり溶けあってくる。このあたりが一番おいしいところである。さて、この甘みと酸味はおそらく3種の持ち味の総合なんだろうがほかのどのたばこより強く感じた。
 同種のミクスチャーだとダンヒル965がそうだが、ぼくの昔の記憶ではマレー社製965はこれをさらに甘口にし、エッジをぼかした感じでラタキアの香りが圧倒した。965はキャベンディッシュが甘みをつけているからだ。いまのオーリック社製はそのマイルド感がないからこれに似ているともいえるがそれぞれの葉のコクの深さは比較にならない。SG社の200年の歴史は伊達ではないのだ。
 一つ思いついたことがある。この葉組はいわゆるバルカンブレンドとおなじだ。だとすると、それとこの手のイギリスブレンドの違いは何だ? というおなじみの疑問がわく。たまたま前に買ったGH社のバルカンミクスチャーが少しのこってたので吸い比べてみた。うむ。やはり違う。バルカンミクスチャーはマイルドでおだやか、全体がアマルガム化しているが、こちらはそれぞれの葉がはっきり主張しつつ、大きなまとまりを作っている。おそらくバルカンソブラニーがそうだったのだろうし、各社のバルカン商品はそれに追従したという説は正しいように思える。
 おなじSG社のバルカンフレークはどうなんだというと、これはぼくの独断だが、もしそれがかなり後期の商品とすると、SG社としてはおなじ葉組でスクワドロンリーダーという傑作がすでにある。そこでSG社はわざとオリエント葉を外し、バージニアとラタキアだけでマイルドなたばこを仕上げ、バルカンブレンドとして市場に送り出した。などと想像してみたのだが、いやいやこれはおいしいたばこでヤワになった頭がでっちあげた妄想、というとこですかナ。
 しかし、なんと旨いたばこだろう。みなさんが絶賛されるのももっともである。

by jinsenspipes | 2011-09-13 22:17 | サミュエル・ガーウィズ