人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Jinsen's パイプ

ロバート・マッコーネル: マデュロ ( Robert McConnell: Maduro )

ロバート・マッコーネル: マデュロ ( Robert McConnell: Maduro )_a0150949_17523535.jpg

 このたばこは同社のブランドのなかでもとりわけ有名でこれを常喫してきたロンドンの年配喫煙者は数多いようだ。
 ところがそういうかたにかぎっていまのコールハス社製は不評で「似て非なる物」とケナす人が多い。なにしろつい20年前までは本家のC.E.マッコーネル社のマデュロが吸えたわけだからそれももっともかもしれない。ぼくは本物は吸ってないのでそれを頭にいれてコールハス社製を買ってみた。
 缶を開けると真っ黒な葉っぱ。強いアルコールの匂いがきて湿り気がある。葉組はバージニア+ペリクで、ラム酒で着香しているのである。吸ってみると、う、やはりラム酒の匂いは強い。それとペリクの甘みと酸味がくわわり、ラム・ケーキを食べたときのようにお酒と甘みのまじった感触が心地よかった。バージニアの香りは薄く、特有の舌焼けもなく、とにかくクールに吸える。甘いたばこといってもいいと思う。悪くないじゃない。
 ブレンド名の「マデュロ」はスペイン語で英語なら「mature」つまり「熟成」である。この言葉は葉巻のラッパー葉によく使われていて特別の葉を高温でじっくり発酵させた物をさしている。このたばこもたぷん充分熟成したバージニア葉を使い、そのおかげで真っ黒なんだろうと思うが、それにしてはバージニア葉じたいの旨味に乏しい。おそらくオリジナルはダンヒルのロイヤルヨットのような独特の味わいをもっていて、年配喫煙者はそれがないのでコールハス製はだめだとするのではないか。もしこのたばこがロイヤルヨットのような深い味わいをもっていたらと想像すると、ああ、オリジナルを吸いたかったとため息がでる。
 いまのマデュロは、お酒とペリクの甘みでとろりとした、舌焼けすることもなくクールスモーキングできる吸いやすいたばこというところである。
 ところでつい20年前までこれを作っていたC.E.マッコーネル社は老舗中の老舗だった。1848年創業で1989年まで一貫して極上のたばこを生産してきた。1980年以降はラットレーたばこを外注生産し、ダンヒルの紙巻きを作っていた時期もあり、一説によるとダンヒルのパイプたばこがアイルランドのマレー社に外注される前後にマッコーネル社もそれを作っていたという。ピカ一のブレンダーだったが自社ブレンドのロバート・マッコーネル製品はダンヒルやラットレーほどの国際評価は受けなかった。つまりご商売が下手な職人気質の会社だったと思われる。1989年に廃業し、プラントはすべてドイツのコールハス社に移され、いまも稼働中とのことである。1989年といえばほんの20年前だ。その頃のイギリスではたばこ製造会社はほとんど廃業し、アイルランドのマレー社とロンドンのマッコーネル社、この2社だけといっていいくらいだった。したがって1980年代のイギリスのパイプたばこ、とくにロンドン製のパイプたばこはみなこのマッコーネル社が下請け生産していた。もちろん零細企業のサミュエル・ガーウィズ、ガーウィズ・ホガース、ジャーマインなどは零細のゆえに大企業の争奪戦をまぬがれ、生き延びたわけだが。
 ぼくはなぜかこのロバート・マッコーネルに愛着がわいている。職人気質の会社らしいという横顔もいいし、ほんの20年前まで生き延びた長命ぶりも素敵である。もう一種、マッコーネル物を買いこんであるのでつぎにそれも紹介したい。

by jinsenspipes | 2011-10-16 17:56 | ロバート・マッコーネル