サミュエル・ガーウィズ: ゴールデングロウ ( Samuel Gawith: Golden Glow )
ブレンド名に「ゴールデン」とつくのはイエロー・バージニア葉を使っているからである。バージニア葉は熱処理の度合いによりイエロー、レッド、ダークと色が濃くなっていく。イエロー・バージニアはもっとも軽く、明るい黄色で青臭さや酸味、甘みともに一番強い。しかしさらに熱処理したレッド・バージニアに比べるとコクや深みがやや欠けるし、バージニア葉特有の舌焼けもあるのでふつうは数種のバージニアをミックスして仕上げている。ことさらに「ゴールデン」と命名するのは長所も短所もあるイエロー・バージニアでいい味をだしているという自信作にほかならない。
じつはつい最近までフリボーグ&トレイヤー社の「ゴールデンミクスチャー」を吸い、その黄金色に輝くみごとな葉と、イエロー・バージニアの味を毎朝、堪能していた。それが空き、いまはGH社のペリクミクスチャー、SG社のコモンウェルス、ラットレーのダークフレグラントがそれぞれ少量のこっているが、バージニアのストレート物がない。そこでこれを買ってみた。
火をつけると、おなじみの青臭さ、酸味、かなりの甘みがとびこんできた。本来ならかなり舌にヒリヒリくるはずだがそれもほとんどなく、マイルドで、じつに吸いやすい。火つきもいいし、火持ちも抜群。再着火するまでもなくさいごまできれいに吸いきれる。なるほどこれがSG社が世に問う最新作なのか。
フリボーグ&トレイヤーの「ゴールデンミクスチャー」のときも感じたが、このたばこも若いパイプ入門者向けなのだと思う。SG社のラインナップにはコクと旨味ではひけをとらない銘品がずらりと並ぶが、いずれも重厚、2時間かけて沈思黙考しつつたのしむには絶好だがシガレット感覚で気軽にやるには重すぎるかもしれない。またそれだけ時間をかけて深みを追求する余裕もいまの若い世代にはないかもしれない。
マイルドだがバージニアの旨さは充分、ニコチンも弱め、火もつけやすいし、火持ちもよくて手軽に扱える。時代の要求に応えた良品だとぼくは思う。
しばらくは朝の一服をこれでたのしみたい。