サミュエル・ガーウィズ: チョコレートフレーク ( Samuel Gawith: Chocolate Flake )
前にGH社のボブズ・チョコレートフレークがとてもおいしく、比べてみたくなったのだ。
あいかわらずのSG社フレークで開けると熟成バージニアの匂いにチョコレートの香りがまじる。火をつけると、ウムム、丸い味だ。バーレー葉の丸い味わいがバージニア葉とうまくミックスされ、バージニア葉特有の匂いやヒリヒリ感をやわらげている。ちょうどいまはFVFも空いていてそれと比べると特徴がよくわかる。FVFはバージニア葉のあらゆる特徴をフルに発揮するから青臭さもあり、ちょっと口内を刺激する強さもあり、ふしぎなお花の香りが漂ったりする。こちらは喫味がひたすら丸く、やや物足りない気もしないではないが吸っていて心地よい。さらに甘いチョコレート風味がのり、これがまた心地よい。飽きのこないたばこだ。
ではGH社のボブズ・チョコレートフレークとどう違うかというと、ぼくには差異は感じられない。どちらも少量のラタキアを隠し味でいれ、これが喫味をクールにしている(ラタキア自体は感覚できない)。それと比べるとFVFはホットなたばこといえる。このクールネスが心地よさに通じるのだと思う。
このチョコレート風味だが、ぼくが好きなマクバレンのバニラクリームもバニラ風味が強くて手がでないときがある。香りを前面にだした着香たばこはときとして嫌味になるがこのたばこのチョコレート風味はごく薄く、海外のレビューでも「どこがチョコレートなの?」というのがあって笑っちゃう。人によっては感覚できないていどなのだ。しかしこのたばこもGH社のボブズチョコレートもともにフレークたばこでミクスチャーではない。フレークはことのほかクールスモーキングでゆっくり吸うものだからじっくりやってるあいだに唇のあたりにわずかに甘さがのったり、漂ったりしてくる、そのていどの着香で、これがまた気分いい。
ぼくはまだ修行がたりなくて、バージニア葉の味わいをフルに発揮したFVFや、ストーブドバージニアに蜂蜜とミルク味を加えた奇蹟ともいえるロイヤルヨットなどに心酔しているが、ほんとのパイプ吸いはこのたばこの軽み、かすかなチョコレート風味、ゆったりした喫味、これこそパイプの楽しみだというかもしれないとふと思ったりする。それが「ケンダル市長コレクション」に真っ先に加えられた理由なのかも。
パイプたばこは奥が深い。ヒトの本性を教えてくれる。ぼくはまだひよっ子だと反省した。