Jinsen's パイプ

マクレーランド: イェニジェ・シュブリーム ( McClelland: Yenidje Supreme )

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 マクレーランド社のオリエントたばこである。ぼくがマクレーランド社に関心をもったのはその世界一のオリエントたばこコレクションだった。世界一と書いたが、オリエント葉をこれだけ多種、網羅している会社はほかにはない。
 パイプを始めた頃は旨い、まずい、好き、嫌いだけだったがそのうちたばこ葉に興味をもちだした。バージニア、バーレー、ラタキア、ペリク、ケンタッキーはようやく味と香りを憶えたが、オリエントだけはいまだによくわからない。イングリッシュミクスチャーはバージニアとオリエントを基本とし、ここにラタキアやペリクを香料たばことして加えたものだが、どこまでがバージニア味でどれがオリエント味なのか判然としない。何年パイプやってんだ、と叱られそうで恥ずかしい。
 マクレーランド社の「グランド・オリエンタルズ」シリーズはなんと! オリエント葉だけ7種を集めた素晴らしいものである。じっくり味わえばオリエント博士になること請け合い。オリエント葉とひと口にいっても、クサンチ葉あり、ドラマ葉あり、サムスン葉あり、スミルナ葉あり、オリエント葉の特徴がわからないなんていってるぼくは初心者もいいとこ、じつは奥が深いのだ。
 手始めにイェニジェ葉(Yenidje)をやることにした。イェニジェ葉は有名なクサンチ葉(Xanthi)の一種だが、この名を高めたのはパイプ愛好家の伝説になっているバルカンソブラニーのおかげだった。この名品の缶に「イェニジェ葉を使用」と書かれていたためである。当時、オリエントといえばクサンチ葉が知られていてイェニジェ葉など誰も知らない。ある説によると、これは同社の宣伝の妙で、ヨーロッパでは無名の地名をだして高級感を煽ったというが、実際にイェニジェはクサンチと並ぶたばこ葉の名産地だった。しかしこの村は大火で滅亡し、まもなく復興はしたものの昔日の繁栄はなく、細々と生産したたばこ葉は隣り村のクサンチに出荷し、そこからクサンチ葉としてヨーロッパに出回っていたらしい。バルカンソブラニーはたぶんイェニジェ産の葉を選んで買い付けたのだろうし、マクレーランド社の説明によるといまでもイェニジェ村のあたりはクサンチ葉でも最良のものを産出しているという。
 さて。恐る恐る缶をあけた。
 まずきたのはおなじみのケチャップ臭だ。かなり強い。ちょっと気勢を削がれた。かなり細かく乾いた黒い葉と赤茶色の葉でさぞかしじっくり熱処理熟成がなされたのだろうと想像できる。
 火をつけ、一服やると、これは! すばらしい香りがきた。なんといったらいいだろう。甘くやわらかい、夢見心地にするハープの匂い、といおうか。クリーミーでロマンチック、これまでどんなたばこにもなかった新鮮な香りだった。これがオリエントだったのか!
 しばらくこの香りをたのしむうちにもう一種、やや違う味がきた。最初のは香りで、鼻をくすぐるが、こちらは舌にくる味。ちょっと硬質の、よくいわれるスパイシー味といおうか、ぼくの印象では最初のはオリエント葉の葉っぱの先端の香り、こちらは茎の味といったところである。
 うーん。ぼくが感じていたオリエント葉の印象はまったく書き替えられることになった。
 オリエントはふつうスパイシー味といわれるのでぼくはイングリッシュミクスチャーのやや硬質な部分、これがオリエントだと思っていたがそうではなかったのだ。オリエントはもっと甘く、やわらかく、香り高いものなのだ。
 たまたまSG社のスクワドロンリーダーが空いていた。これはバージニア、オリエント、ラタキアの典型的なイングリッシュミクスチャーである。で、これをやってみると、ああ! まぎれもなくそれがあった。このたばこはSG社独特の、甘く、やわらかく繊細なたばこだが、ぼくはそれはバージニア葉の熟成のせいと思っていた。そうではなく、この甘み、やわらかさはオリエント葉の特徴からくるもので、よくよく味わっているうちにイェニジェ葉に似た香りも、やや違うようだが、きた。
 イングリッシュミクスチャーでは、バージニア葉にラタキアで強い香りづけをする。ペリクは甘酸っぱさを追加する。そしてオリエントは、やわらかさとロマクチックな香り、とろける甘みを加える。そうだったのだ。
 バルカンソブラニーの伝説はこのイェニジェ葉の特徴を最大限ひきだし、さらにいま同等品は望むべくもないシリア産ラタキア葉で土の香りづけをした、そこに端を発したのではないか。
 マクレーランドのこのたばこは本物のオリエント葉の味と香りはこれなんだ、と事実をつきつけることで、世に出回る安物のイングリッシュミクスチャーの底の浅さを露呈させようとした。そんなことまで頭に浮かんだ。

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by jinsenspipes | 2013-10-05 00:05 | マクレーランド | Comments(10)
Commented by あいうえお at 2013-10-07 01:44 x
ご無沙汰しております。更新、楽しみにしておりました。
徐々炬燵が懐かしくなる季節、最近の好みは実家から引っ張り出した煙草盆に、最近増えた刻みを入れての煙管です。

マクレランのこのタイトルは恥ずかしくも不勉強で知りませんでした。スクアドロンリーダーの香り高さの妙は、オリエント葉だったんですか。
しかし甘味。
バージニアの甘味、ラタキアの甘味は心得ているつもりですが
私が拙い経験で知るところのオリエント葉の思い出は、「エキゾチックな香り」「華やかさ」であって、これは言われる通り茎の香りだったんでしょうか。
目の前にあるのはオリエントどころか、ダンヒルとダビドフだけですからねえ。
今度買いに行くことにします。
Commented by jinsenspipes at 2013-10-07 11:04
>あいうえおさん
煙管ですか。粋ですねェ。
あいうえおさんはスクワドロンに香りを感じてらっしゃいましたか。
鋭いですね。ぼくは甘く、おいしいたばこと、それですませてました。
いま吸い直してみると、たしかにあるんですね。
知識は、感覚まで分化させる力があるんだと知りました。
「茎の味」と漠然と書いたのはまだはっきり正体がわからないからです。
とりあえず最初の甘い、ロマンチックな香りに圧倒されたまま、
これからしばらくじっくりひたってみたいと思ってます。
Commented by plug at 2013-10-14 23:39 x
大変ご無沙汰しております。ブログはちゃんと拝見しておりました。ところで、最近仕入れた、コーネル&ディールのレッドカーペットを初喫してるんですが、かなりスパイシーです。で、「イズミル葉」がブレンドしてあるとのことですが、ご存知ですか?
Commented by jinsenspipes at 2013-10-15 11:10
>plugさん
いやあぼくはC&Dはまったく未体験なんです。だいたいアメリカ物が苦手で、最近ようやくマクレーランドをやりだしたばかり。
GLピースはちょっと試したことありますが、C&Dは一度もありません。
そうですか。イズミル葉をブレンドしたたばこなんですね。
イズミル葉はオリエントの一番名の知られたたばこですよね。昔はここはスミルナといったのでマクレーランドではその名を使ってます。
でも、オリエント葉もぼくはイェニジェ(クサンチ)が初体験であとはまったく知りません。
どんな味なんだろう。興味津々です。
やはりスパイシーという感じですか?
Commented by plug at 2013-10-16 09:33 x
勉強不足を痛感中です。細かい分析はできませんが、少ない喫煙経験から言ってもかなりスパイシーな部類に入ると思います。しかもヘビーでニコ酔い寸前でした。でも、ちょっとくせになりますね、このタバコ。
Commented by jinsenspipes at 2013-10-16 11:03
>plugさん
いえいえ。ぼく自身が無知を痛感してます。
マクレーランドのこのイェニジェにしても、バージニア葉が半分ですから、どこまでがオリエントの特徴なのかまだよくわからない。
例のケチャップ臭もかなり強いです。
試しに空いているFVFと比べると、イェニジェ独特の、乾いた甘い香りと味わいはFVFにはまったくない。
一方、FVFの、果実味のねっとりした甘さはイェニジェにはなく、これはよく熟成したバージニアからのみでるものなんですね。
そのあたりで引き算してみると、この独特の甘い香り(もう一種あるようなんでがそれはまだ未知)とやわらかさ。
その辺にオリエント葉の特徴があり、スクワドロンリーダーに感じるそれはオリエント葉の属性だったんだろうと推測しました。
C&Dのレッドカーペット、ニコ酔い寸前というの、わかる気がします。
それって心地よいですよね。くせになるかもしれません。
ぼくもチャンスがあれば試したいです。
Commented by 2号 at 2013-10-22 01:21 x
お久しぶりです!(^-^)/
オリエントにも、色々あるんですね~。
イングリッシュミクスチュアの中に入ってる脇役程度に考えてました。
僕もじっくりオリエントを勉強したいですね。
あれだけ敬遠していたマクレーですが、ケチャップ臭にもすっかり慣れて色々試しています。着香を永らくやってなかったんですがマクレーのプレミアムアロマチックシリーズにはまり中でもPAL O MINEにはまりました。ピーチフレーバーの素敵なタバコです。ちょっとした箸休めにもってこいですよ。
また、色々なレビュー楽しみにしています!
Commented by jinsenspipes at 2013-10-22 16:17
>2号さん
やあ、お久です。
ぼくもそう思ってたんですが、マクレーランドのオリエントはまったく別世界でした。
うっとりさせられるたばこです。うっかりすると、そのままうとうと寝ちゃいそうな。
あ、2号さんもマクレーランド転向組でしたね。
着香系もこの会社ならドラッグストアたばことは一線があるでしょうね。
ピーチ味かァ。すぐやってみたくなりました。
Commented by ちぇん at 2013-11-06 00:22 x
お邪魔します。
いつもブログ更新楽しみにしてます。
イェニジェ・シュブリーム吸ってみました。
jinsenさんのおっしゃるとおり素晴らしい香りです。
正直感動しました。
オームポールでこれを吸ったらきっと夢心地でしょうね。
Commented by jinsenspipes at 2013-11-06 11:08
>ちぇんさん
試されましたか。
いい香りでしょ。
このあとスミルナNo1をやりましたが、香りではイェニジェにが一段上です。
ぜんぶやったわけではないですが、オリエンタルシリーズのなかで最高の香りのたばこでしょうね。
オームボール! なるほど、それはいいかもしれません。
ダンヒルのハーフベントでやってもボウルトップから鼻にくる香りがとてもいいです。