マクレーランド: 22 ( McClelland: 22 )
茶色ラベルの5種は、「22」「24」「25」「27」「Navy Cavendish」
緑ラベルの5種は、「1」「6」「8」「12」「14」
(茶色ラベルの「Navy Cavendish」は近年再発されたものでもともとこの名称で発売されていたかどうかはわからない)
裏話があり、初回のたばこ缶はまわりを紙でくるみ、鑞のシールで留め、いかにも高級感をだしていたが、じつはこれはカモフラージュだった。発足当初の小さな会社は缶詰の技術に乏しく、いまのようなプルトップ缶(缶の上のブルトップを引っ張れば開缶する)は使えなかった。他の会社のたばこはどれもプルトップ缶で簡単に開けられるのにマクレーランドの缶は缶切りでゴリゴリ切らないと開けられない。それを隠すために紙でくるんだというからおかしい。マクレーランド社がブルトップ缶になったのは80年代になってからだそうだ。
さて、またぞろポール・ザバディ氏が登場するが、氏によるとマクレーランド社の数多いバージニアたばこのうちこの「22」はもっとも「ブライト」なたばこという。バージニア葉にはイエロー、レモン、オレンジなど色によって種類があるがこの明るい色の葉を総称してブライト・バージニアと呼んでいる。バージニア葉の特徴をもっとも保持する葉で、甘み、酸味、わずかの青臭さがある。
ブライト・バージニアを熱処理すると赤みが増し、レッド・バージニア、ブラウン・バージニアになり、さらに進むとストーブド・バージニアとなる。マクレーランド社のもっともストーブされたバージニアは「2035」で、「22」の対極にあると氏は書いている。ここまでくると青臭さは消え、かわりにねっとりした甘みがでてくる。SG社でいえばFVFだし、昔のダンヒル・オリジナルでいえばロイヤルヨットであのミルク味はストーブドバージニアの傑作といわれた。
ぼくはこのストーブドバージニアが好きですでに「2035」は試しずみ。なのでその対極にある「22」を吸い、バージニア葉のストレートな味とこってり料理された味、両極端を味わいたいと考えた。ついでにマクレーランド社の初発売たばこの実力を知る知識欲も満足できる。
缶をあけるとおなじみのブロークン・フレーク、というかこれはケーキから切り出したものだろう。マクレーランドのバージニアたばこはすべてイギリスの伝統製法を踏襲している。つまり、まずプレスしてケーキを作り、じっくり熟成させてから切り出す。デンマークやオランダはこのケーキを作る工程を省略するから味わいがまったく変ってくる。
いい甘さがある。それとかすかな酸味。これがまったく果実の甘みと酸味にそっくり。自然な風味そのままである。わずかに青臭さがあり、それらが一体となってじつに爽やかな気分になる。「2035」あたりになるとねっとり重厚な味になるからやはり対極にあるたばこである。YouTubeでパイプの吸い方を紹介しているでゑ氏は前にこのバージニアの青臭さを青リンゴのようだと書いたことがある。じつに適切な形容なのでぼくも使わせていただく。「22」の味、香りはまさにでゑ氏のいうリンゴのよう、それに比べて「2035」はマンゴーのようである。
じつは今、オーリックのゴールデンスライスドが手許にある。ぼくはこれとか、マクバレンのバージニアNo1、ダンヒルのフレークなど、デンマーク製の廉価版たばこをかならずどれか切らさないようにしている。マクレーランドやイギリスのSG、GH社のたばこはやや湿り気があるので乾かしてからでないと吸えない。それも30分だったり1時間だったりするからちょっと手間がかかる。デンマーク製たばこは紙巻きとおなじでひょいと手軽に吸えるので便利である。
オーリックはいい酸味が特徴で心地よい。少し吸うとペリクの自然な甘みもくる。よくできたたばこだが、マクレーランドやイギリスたばことは決定的な違いがある。つまり味がすべて表面に勢揃いしている感じで、ちょっと深く吸いこんでもそれ以上の深みはない。いっぽうマクレーランドなどは味が底のほうからわき出してくる。深く吸うと、これまたいろんな味がきたりする発見がある。この違いはたばこの熟成にある。いっぽうはじっくり熟成し、複雑な味が出はじめてから出荷する。いっぽうは右から左、チャチャッとプレスして切り出して出荷する。おのずから違うのだ。酸味や甘みもいっぽうは人工調味料で出しているが、いっぽうはバージニア葉の自然な甘みで、それが出るまで熟成を続けるのである。
しかしこれは優劣ではない。姿勢の違いなのだ。どちらもバージニア葉の基本風味はある。その上でいっぽうは人工調味料で味を濃くし、燃焼剤で火つき、火持ちをよくし、吸いやすくしている。シガレット感覚で、火をつければすぐ味がくるようにしている。もういっぽうは30分くらい乾かし、それでも火つきはやや悪く、しばらく格闘しなければいけない。そのかわり順調に燃えはじめればそこから先はそれこそ天国に遊ぶ気分になれる。
マ、ぼくは閑人だから、そちらが好きですけど。