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Jinsen's パイプ

2013年 05月 22日 ( 1 )

マクレーランド: 2020 メイチャードケーキ ( McClelland: 2020 Matured Cake )

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 第三弾である。5100、2035でバージニアの単体を2種、堪能したのでこんどは伝統的イギリスブレンドに手をのばす。イギリスはごく近年までたばこの着香を抑止していた。そのかわり、バージニア葉に、オリエント葉、ラタキア葉、ペリク葉をブレンドして味わいを広げた。これらの葉はイギリスたばこの着香剤だったのだ。
 とりあえずオリエント葉に目をつけ、マクレーランドのバルクのカタログからバージニア+オリエントの典型を探した。それが2020である。ぼくの読んだ同社の紹介文では、
「よく熟成したバージニア葉の甘さと味に、オリエント葉の独特の香りとやわらかさ、ゆたかさ、木の実風味をブレンドしました」
とある。
 やってみた。
 2020はブロークンフレークのようで2035ほど固くなくしなやかなので丸めて詰められた。火つきがやや悪い。やはり少し乾燥させたほうがいいかもしれない。
 火をつけると、ウウウ、これはまたとびきりやわらかい、ふっくらした味わいがきた。やや油っぽい、いわゆるオイリーという感じ。かなり強い酸味があり、茎茶のような独特の味わい、それにプラスして、英語だとearthyという形容詞があるが、春の野にでたときのかすかな土の匂い、そんな感じ。バージニア単体とはかなり違い、これがオリエント葉の味わいかと思う。そして、ああ、ラタキアが香るではないか。ふとこれもオリエント葉の属性かと思ったりしたが、じつはラタキア入りだったのだ。
 前に書いた2020の紹介文はある通販会社に載っていたものだが、別の通販会社を見るとまったく別の紹介文がのっていた。
「レモンバージニア葉とオレンジバージニア葉、それにオリエント葉のクサンチとラタキアをケーキに圧縮して熟成させ、このすばらしい、しかもヘヴィでない、特別やわらかく、滅多に味わえないゆたかなフレーバーをひきだしています」
 この2つの文章をくっつけて紹介文としているところもある。まあ、相反する内容でもないから、両方ありとして、やはりラタキアは入っていたのだ。
 この解説から改めて葉組を紹介すると、バージニア葉はいわゆるブライトリーフで2035と同等。オリエント葉はもっとも有名なクサンチ(Xanthi)葉で「たばこの女王」とされるもの。クサンチ葉はいまのギリシャ北部のイェニジェ(Yenidje)地方のものが最良といわれ例のバルカンソブラニーに使われていた。マクレーランドはバルカンソブラニーの再現にはとくにご執心でこのおなじ葉を使ったグランドオリエンタルズシリーズには「イェニジェ・シュープリーム」と「イェニジェ・ハイランダー」、2種のクサンチたばこがある。2種の違いはラタキアが入らないの(前者)と入るの(後者)である。このシリーズもベースにバージニア葉を使っているから、ぼくが買ったバルクの2020は「イェニジェ・ハイランダー」とほぼ同等なんじゃないかと想像した。
 しかし、すばらしいたばこである。ぼくのバージニア+オリエント+ラタキアのイメージは軌道修正しなければならなくなった。
 前に書いたレビューでSG社の「コモンウェルス」と「スクワドロンリーダー」、ここでラタキア入りがこんなにふっくらやわらかいものかとぼくは感動した。この種のたばこはそれまでダンヒル965がぼくの常喫で、これはかなり粗く、つんつんしている。バージニアの味はわかるしラタキアは独特の匂いでわかるので、この粗さはオリエントのせいだろうと思いこんでいたのだがまるで見当外れだった。
 2020でわかるオリエントの属性は、オイリーなこと(これはとくにクサンチ葉に特有のようだ)。茎茶と書いたが、茶葉の新芽の茎の部分を使ったお茶はやや硬質で独特の味わいがあり、それに似た味わい。それとやや近いが、春の野の土の香り。そしてとりわけふっくらとやわらかい味わい。そんな感じがあり、どれをとっても965の粗い感触はない。
 SGで感動したときもっと深く読みとるべきだった。しっかり熟成し、葉の味を最大限ひき出せばこのふっくらしたバラエティにとんだ味が出るし、それがもともとオリエントやラタキアの属性だったのだ。
 同時に遠い記憶が甦った。ぼくがパイプたばこを始めた頃、shopが紹介するまま買ったのが965だったが、いま考えると当時の965はマレー社製の後期のもの、まだダンヒル社のシリア製ラタキアのストックが残り、しかも職人肌のマレー社は熟成にも時間をかけて念入りに作っていたはずだ。その昔の965のオリエント+ラタキアの香りと味わい、まるで夢見心地で、ふっくらやわらかいなかに革製品の匂いと外人がいうラタキアが優雅に香った。その後しばらくしてオーリック製のいまの965をやったときはちょっと拍子抜けしたが、マ、こんなものかと思っていた。しかし、SG社のラタキア物やマクレーランドの2020を知るにつけ、ぼくは本物のオリエント+ラタキアを昔から知っていたことに気づかされた。
 しかしそれにしてもマクレーランドのたばこは驚嘆に値する。世のパイプ喫煙者が語り草にするバルカンソブラニーはこの2020を越えたブレンドの妙、熟成の妙があり、さらにすばらしい味わいがあったのだろうと想像できる。ぼくは今、オリエント葉とラタキア葉、その真価を知るほんの入り口に立ったばかりだ。

by jinsenspipes | 2013-05-22 18:01 | マクレーランド