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Jinsen's パイプ

study: バージニア「カッターグレード葉」

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 マクレーランドのダークスターを書いたとき、2035との比較で「カッターグレード葉」の話がでた。
 この葉は2035のレビューですでに書いたが、ぼくの知識が生半可で、「バージニア葉の先端から下のほう、根に近いほうの葉を指すらしい」というていどだった。ダークスターのレビューではザバディ氏の引用で、2035はこの葉を使っているがダークスターには入っていないと紹介した。
 自分で書いておきながら、はて、この葉はどんな葉なんだろうとずっと気がかりだったが、ようやく判明した。アメリカのあるたばこ葉販売会社のサイトのカタログに掲載されていた。この会社はたばこ葉を葉っぱのまま販売している。キュアリングまでは済ませているが裁断も加工もせず、葉っぱのままである。

「熱風乾燥バージニア・ライト」
 この葉はバージニア葉のもっとも下部の葉を最初に摘んだものです。この部分は上部の葉ほど太陽の光を浴びず、そのため厚みが薄く、ニコチン含有量も少ない。このたばこ葉は2つの目的に適合します。その1は、薄い葉なので火付きと火持ちがいいこと。その2は、シガレットに使うとたいへんマイルドな味わいになること。
別名『カッター』と呼ばれるこのたばこ葉はほかの葉と混ぜると燃え易さを増強します。ただし大手のシガレット製造業者が買い占めてしまうために供給量はわずかです。
 なるほどそういうことだったのか。
 ネット上の別サイトでフィリピンの農務省の記事によると「カッター葉」は1本のバージニア葉全体の8%に過ぎず、グレードはAA、最高級品、最高値で取引されているとのこと。もっぱらシガレット用らしい。
 パイプたばこに使うときは燃焼の調整、マイルドな味にするなどの目的と想像できるがもしかしたらこの葉独特の味わいがあるのかもしれない。いまのところザバディ氏が書いた「やわらかいがやや平坦。しかしレモンバージニアと混ぜてストーブすると魔術が出現する」が唯一の証言になる。

 これはシガレットの話だが、ある人がアメリカンスピリット社にたばこの葉組について質問のメールを送った。その回答で同社の「オリジナルブレンド」の葉組は「72%がアメリカのバージニア葉。18%が海外のバージニア葉(カナダ、ブラジル、フランス)、10%がアメリカのバーレー葉とトルコのオリエント葉です。海外のバージニア葉を使うのはアメリカ産よりニコチンとタールの含有量が低いので、シガレット全体のニコチンとタール量の調整のために混入しています」とのことだった。
 たばこ葉は味ばかりでなくこのように燃焼度やニコチン、タール量の調整などのために選ばれることもあるようなのである。

# by jinsenspipes | 2014-07-01 11:16

マクレーランド: ダークスター ( McClelland: Dark Star )

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 前にレビューした「22」はマクレーランドのパージニアたばこでは一番素朴な味わいだったが、その対極点にあってもっともストーヴされた、つまりこってり料理されのがこのダークスターである。社の解説には、糖分をたっぷり含むバージニア葉とカロライナ葉を使い、充分寝かせ、プレスし、ストーヴする、これを3度繰り返し、このゆたかでクールな味わいを出したとある。
 ダークスターはバルク売りの2035と同等品で、そのレビューは前に書いたが、まったくおなじだった。すばらしい果実味、前にマンゴーと書いたが、まさしくマンゴーを食べているような熟した甘みがある。「22」のほうはでゑさんのいう青リンゴ味、すっきりさわやかな甘酸っぱさが身上だが、こちらはねっとり舌にからんでくる熱帯性の甘みで、そこにバージニア葉特有の青臭さがからみ、何ともいえない芳醇な味わいとなる。
 では2035とまったくおなじかというと、さて、どうだろうか。いま手許に2035はないし、記憶をまさぐるしかないのでおぼつかない。
 しかし、おなじみのザバディ氏は、両者には違いがあると書いている。
「あきらかな違いがある。2035はカッターグレード葉を混ぜているがダークスターは使っていない。この葉はやわらかい感触だが味わいはやや平坦である(イギリスのプラグカットバージニアによくある味わい)。ところがこの葉をレモンバージニアと混ぜてストーヴすると、じつに錬金術そのままの魔術が出現するのである。一方、この葉を使わないダークスターには本来のレモンバージニアの味わいをより深く感じる。一服ごとにその味わいが立ち上がってくるのである」
 ああ! ここまで深くたばこを味わえたらどんなに素敵か!
 とうてい足許にもおよびませぬ。
(カッターグレード葉については2035のレビューをお読みください。といってもぼくの知識はほんの表層だが)
 じつはたまたまSGのFVFとBBFが空いていた。このあたりはぼくの常喫たばこなのでどちらかはたいてい空いているが今は両方あった。これもまたストーヴドバージニアの傑作で、ただ製法がそれぞれ独特なので味わいも変わってくる。そこで比べてみたのだが、といっても同時に2本のパイプで比較したわけではない。ある日ダークスターをやり、つぎの日SGのどちらかをやったのだ。
 すると、漠然とした印象ではどちらも果実味の強い類似のたばこと思っていたが、かなり違うことに気づいた。まず甘さの質が違う。BBFは酸味が強く、マンゴーよりオレンジ風味に近いか。さらに甘みの裏のバージニア味になるとかなりの違いがある。
 このあたりは文字で書けない微妙な味わいだが、やはり違う。BBFとダークスターはかなり似ていると感じたが、FVFはずいぶん違った。甘みの裏にたちあがってくるバージニア味が青臭さ、ときにお花の香り、樹木の肌のような味わい、じつに複雑多岐である。そして、喫煙がじつにクール、清涼、まったく熱さを感じさせない。世界のパイプスモーカーが理想とするクールスモーキングの極致がここにあった。
 しかし、そういう微妙な味わいに違いはあっても、とろんとした甘み + バージニアの芳醇な味わい、その方程式はこの3者に共通する。人口の甘味料でなく、天然の熟したマンゴーのような甘さ、その裏にたちあがる濃いバージニア葉の味わい、それがほしいときはきっと手がのびるのがこの3つのどれかである。バージニアの味わいの違いについてはその日の気分しだいということになるか。

# by jinsenspipes | 2014-06-13 15:37 | マクレーランド

マクレーランド: 22 ( McClelland: 22 )

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 メアリー・マクニール女史自身が語るマクレーランド社の秘史を読むと、創立時、1977年、最初に発売したたばこは10種で、茶色ラベルの5種の熟成バージニアたばこと緑ラベルの5種のオリエンタル(イングリッシュ)ミクスチャーだった。これはすべて現在も発売されている。
茶色ラベルの5種は、「22」「24」「25」「27」「Navy Cavendish」
緑ラベルの5種は、「1」「6」「8」「12」「14」
(茶色ラベルの「Navy Cavendish」は近年再発されたものでもともとこの名称で発売されていたかどうかはわからない)
 裏話があり、初回のたばこ缶はまわりを紙でくるみ、鑞のシールで留め、いかにも高級感をだしていたが、じつはこれはカモフラージュだった。発足当初の小さな会社は缶詰の技術に乏しく、いまのようなプルトップ缶(缶の上のブルトップを引っ張れば開缶する)は使えなかった。他の会社のたばこはどれもプルトップ缶で簡単に開けられるのにマクレーランドの缶は缶切りでゴリゴリ切らないと開けられない。それを隠すために紙でくるんだというからおかしい。マクレーランド社がブルトップ缶になったのは80年代になってからだそうだ。
 さて、またぞろポール・ザバディ氏が登場するが、氏によるとマクレーランド社の数多いバージニアたばこのうちこの「22」はもっとも「ブライト」なたばこという。バージニア葉にはイエロー、レモン、オレンジなど色によって種類があるがこの明るい色の葉を総称してブライト・バージニアと呼んでいる。バージニア葉の特徴をもっとも保持する葉で、甘み、酸味、わずかの青臭さがある。
 ブライト・バージニアを熱処理すると赤みが増し、レッド・バージニア、ブラウン・バージニアになり、さらに進むとストーブド・バージニアとなる。マクレーランド社のもっともストーブされたバージニアは「2035」で、「22」の対極にあると氏は書いている。ここまでくると青臭さは消え、かわりにねっとりした甘みがでてくる。SG社でいえばFVFだし、昔のダンヒル・オリジナルでいえばロイヤルヨットであのミルク味はストーブドバージニアの傑作といわれた。
 ぼくはこのストーブドバージニアが好きですでに「2035」は試しずみ。なのでその対極にある「22」を吸い、バージニア葉のストレートな味とこってり料理された味、両極端を味わいたいと考えた。ついでにマクレーランド社の初発売たばこの実力を知る知識欲も満足できる。
 缶をあけるとおなじみのブロークン・フレーク、というかこれはケーキから切り出したものだろう。マクレーランドのバージニアたばこはすべてイギリスの伝統製法を踏襲している。つまり、まずプレスしてケーキを作り、じっくり熟成させてから切り出す。デンマークやオランダはこのケーキを作る工程を省略するから味わいがまったく変ってくる。
 ケーキを切り出すといっても最初は板状にスライスするからフレークたばこの製法とおなじである。しかしマクレーランドは板状のフレークでは発売せずかならずブロークンにしている。これは吸いやすさを考慮するからだろうか。マクレーランドのブロークン・フレークは他社の板状のスライスより火つきや火持ちがよく、吸いやすい。
 いい甘さがある。それとかすかな酸味。これがまったく果実の甘みと酸味にそっくり。自然な風味そのままである。わずかに青臭さがあり、それらが一体となってじつに爽やかな気分になる。「2035」あたりになるとねっとり重厚な味になるからやはり対極にあるたばこである。YouTubeでパイプの吸い方を紹介しているでゑ氏は前にこのバージニアの青臭さを青リンゴのようだと書いたことがある。じつに適切な形容なのでぼくも使わせていただく。「22」の味、香りはまさにでゑ氏のいうリンゴのよう、それに比べて「2035」はマンゴーのようである。
 じつは今、オーリックのゴールデンスライスドが手許にある。ぼくはこれとか、マクバレンのバージニアNo1、ダンヒルのフレークなど、デンマーク製の廉価版たばこをかならずどれか切らさないようにしている。マクレーランドやイギリスのSG、GH社のたばこはやや湿り気があるので乾かしてからでないと吸えない。それも30分だったり1時間だったりするからちょっと手間がかかる。デンマーク製たばこは紙巻きとおなじでひょいと手軽に吸えるので便利である。
 オーリックはいい酸味が特徴で心地よい。少し吸うとペリクの自然な甘みもくる。よくできたたばこだが、マクレーランドやイギリスたばことは決定的な違いがある。つまり味がすべて表面に勢揃いしている感じで、ちょっと深く吸いこんでもそれ以上の深みはない。いっぽうマクレーランドなどは味が底のほうからわき出してくる。深く吸うと、これまたいろんな味がきたりする発見がある。この違いはたばこの熟成にある。いっぽうはじっくり熟成し、複雑な味が出はじめてから出荷する。いっぽうは右から左、チャチャッとプレスして切り出して出荷する。おのずから違うのだ。酸味や甘みもいっぽうは人工調味料で出しているが、いっぽうはバージニア葉の自然な甘みで、それが出るまで熟成を続けるのである。
 しかしこれは優劣ではない。姿勢の違いなのだ。どちらもバージニア葉の基本風味はある。その上でいっぽうは人工調味料で味を濃くし、燃焼剤で火つき、火持ちをよくし、吸いやすくしている。シガレット感覚で、火をつければすぐ味がくるようにしている。もういっぽうは30分くらい乾かし、それでも火つきはやや悪く、しばらく格闘しなければいけない。そのかわり順調に燃えはじめればそこから先はそれこそ天国に遊ぶ気分になれる。
 マ、ぼくは閑人だから、そちらが好きですけど。

# by jinsenspipes | 2014-03-24 17:06 | マクレーランド

study: ザバディ氏に学ぶ(フレークの吸い方)

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 バージニア・フレークたばこについて、ポール・ザバディ(Paul Szabady)氏はニュースグループASP(alt.smokers.pipes)に多くのコメントを残している。無類の健筆家でその発言はわかりやすく勉強になるのでいくつか抜き書きを紹介したい。

「バージニア・フレークの喫煙をマスターするにはほとんど芸術的といえるスキルが必要だが、しかし努力の甲斐はある。習得すればするほどバージニア葉の知らなかった秘密があらわれてくる。バージニア葉の湿り気と喫煙温度はたいへん狭いレンジに収まり、その範囲で吸えば完璧な栄光があらわれる。湿り気が多すぎれば、煙は湿り、香りが失われる。乾きすぎるとヒリヒリするし、舌焼けする。乾き気味のほうが適しているとはいえきわめてデリケートだ。フレークたばこのほとんどは湿り気味にパッキングされているので、喫煙に適した湿り気にするには乾かさなければいけない。」

 バージニアたばこの喫煙には湿り気(逆にいえば乾きぐあい)と喫煙温度がかかわることは体験で感じていたが、こう書かれると、なるほど、味と香りがあらわれるレンジが狭いせいだと納得する。よくいわれるが、バージニアたばこは消えかかりがおいしい。熱くすると味わいはほとんど消える。

「ブライト、ゴールデン、レモン、イェローなどのバージニア葉はもっとも微妙でデリケートなバージニアの香りを味わえるが、それをリボン・カット(あるいはさらに細かい紙巻き用カット)にしてしまうと冷静かつ熟練したベテランでも手にあまる。それをフレークにしたものだけがゆっくり燃焼するクールスモーキングできるし、さらに熟成により、また他のバージニア葉とブレンドすることにより、鋭さをメローにできる。フレークのほとんどは多種のバージニア葉−−−おなじブライト葉でもさまざまな品種のもの、またレッド・バージニア、ストーブド・バージニア、さらにバージニア葉の下部の葉など−−−をブレンドしている。」

 フレークたばことリボン・カットのミクスチャーはおなじパイプたばこでもまったく別物である。ミクスチャーは細かく裁断したバージニア葉、ペリク葉、ラタキア葉、オリエント葉などをミックスし、その混ぜ具合、あるいは熟成による調合をたのしむがバージニア葉そのものの味の深さは曖昧になる。バージニア葉が内包する、ほとんど宇宙的とさえいえる味わいの深淵を知るにはフレークたばこ以外にない。

「クールに吸えば吸うほど香りはゆたかにくる。厚いフレークはゆっくり燃やさなくてはいけないし、たいへん、たいへんゆっくりした喫煙技術がいる。人が休んでいるときのかすかな呼吸に等しいほどである。着火や再着火の際は深く吸いこんではいけない。炎をたばこに近づけるためのほんの2、3回の吸いこみで充分である。軽く吸い、火種をボウルトップのたばこに広げる、必要ならまた火をつけ、トップのたばこがくすぶりだしたらつぎに火種をゆっくりボウルのなかに下ろしていく。ボウルの2/3ほど吸ったら灰を捨てるがわずかな灰色の灰は残すようにする。かならずボウルの最後まで吸いきること。最後の1センチほどが交響曲のクライマックスである。ボウルの半分だけ詰めて吸うか、小さめなボウルのパイプで吸うことで絶頂感を得られる。」
 ぼくが昔、フレークで苦労したのは吸いすぎるせいだった。ミクスチャーはマッチを近づければめらめらと燃え上がる。枯れ草を燃すようなものだ。ところがフレークは板状の固形物だから、いわば材木に火をつけるようなもので、よほどの火力(つまり強く吸う力)がいるもんだと思いこんでしまった。実際は逆なのだ。フレークは軽く火を近づければ、ポッと火がつく。じつに簡単に火がつく。そこでこんどはそれを吹き消さないていどのおだやかな空気を送りこむと火がゆっくり広がっていく。ミクスチャーを吸うときの半分くらいの空気量で充分である。むしろむつかしいのはふつうの呼吸の空気量では強すぎて、ポッとついた火種を吹き消してしまうことだ。前回ザバディ氏の「呼吸喫煙法」を紹介したが、やはり呼吸と、たばこの喫煙はわけたほうがいい。呼吸は鼻で続けておき、それより一段ゆっくりした吸い吹きで口のなかの空気を送りこんだり吸いこんだりする。
 誰もが指摘することだが、バージニアたばこはボウルの底の最後のところが一番おいしい。だからかならず最後まで吸いきるようにするのがいい。それがなぜなかはわからないが、ザバディ氏は長時間吸いつづけることでバージニア葉がストーブド・バージニアのように熱処理されるからではないかと推測している。

 さて。ザバディ氏が推奨するフレークたばこの詰め方である。

「フレークは揉みほぐして吸ってもよい。しかし揉みほぐすことで繊維を破壊するとフレークたばこの素晴らしさは半減する。ほぐさずそのまま吸うか、わずかにほぐすていどがベストである。そのための2つの方法がある。
1: フレークを鋏で小さな4角形に切りわける。大きさはパイプのボウルの内径くらい。それをパイプのなかに積みあげていく。吸いやすくするために小片2つをよく揉みほぐし、1つをボウルの底に収めて燃えかすを作らないようにする。もう1つはボウルトップに置いて着火を容易にする。
2: フレークを適当にちぎり、手のひらを合わせてよく揉みほぐし、だんご状にする。大きさはボウルの内径にちょうど収まるくらい。このだんごをいくつかボウルに収めていく。上から軽く抑え、ちょうどいい吸い心地の固さにする。」

 1は、スリーナンズの詰め方である。ザバディ氏はスリーナンズの愛好家でこれは直径1cmほどの円板。それをボウルに積み上げて吸った。ただしこれは昔の、つまりロープたばこをカットした製品でペリク入り。いまのスリーナンズは板を海苔巻き状に丸めたものだしペリクは無い。ぼくは今のスリーナンズは未体験だが外見はやはり1cmの円板のようだ。それに似せて板状のフレークをカットして吸う方法である。
 しかし、ぼくも試してみたが、うまくいかなかった。昔のスリーナンズは湿り気が多く、むしろベチャベチャした感じだったのでうまく吸えたがいまの乾き気味の板だと隙間が多すぎてうまく吸えないし、鋏で切るのはやや手間である。
 2は、いまぼくはほとんどのフレークをこれで吸っている。ダンヒルやオーリックはやわらかいので簡単にだんごにできるし、あまり繊維を破壊することもない。SGもBBFはこれで吸えるが、FVFは固いし厚いのでだんごにしようとすると割れてしまう。これはまた別の工夫がいるようだ。

# by jinsenspipes | 2014-02-14 16:47

study: 呼吸喫煙法 ( Breath Smoking )

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 ポール・ザバディ(Paul Szabady)氏の「呼吸喫煙(Breath Smoking)」を読んだのはいつだっただろうか。たぶん10年ほど前、G.L.ピースのサイトで読んだはずだ。もともとは1998年、ザバディ氏がニュースグループASP(alt.smokers.pipes)に投稿した記事だった。当時のザバディ氏はASPの人気者でその投稿は争って読まれた。
 初めて読んだとき感動した。当時のぼくは自己流の吸い方で舌焼けもひどいしパイプも焦がした。さっそく試してみたが、手強くて途中で投げ出したようだ。それが最近思い出し、読み直してみた。
 気がつくと、いつ頃からか、ぼくの吸い方もこれに似たものになっていた。投げ出したけれど心のどこかに残り、少しずつ実践していたのだと思う。有名な喫煙法だし、G.L.ビースが彼のサイトに引用掲載しているくらいだからみなさんご存知だろうが、ぼく自身の再認識のために訳出してみた。
 原文はASPでも読めるが、G.L.ピースのサイトにそっくり転載されているのでぜひお読みください。

「呼吸喫煙法」
 これは私のハイプ喫煙の師匠から教わった。ひどく不機嫌で気むづかしい老人だがパイプ喫煙を知り尽くしていた。
 老人はこれを「呼吸喫煙(Breath Smoking」と呼んでいた。どのたばこにも役立つ吸い方だが、とりわけバージニア・フレークには効果がある。
 くつろいだ気分で、できれば椅子にかけ、ゆっくり穏やかに呼吸する。パイプを口にくわえたまま、呼吸は鼻でする。鼻からの呼吸をゆっくり2、3回くり返したあと、ハイプからちょっと吸いこみ、煙を口に含み、つぎにゆっくり、ほんとにゆっくり煙を吹き戻す。ボウルからかすかに一筋の煙があがるていど、そしてまたもう一度。煙はけして肺に吸いこまない。これがうまくいけばパイプから吸うまでもない。鼻から息を吸ったとき口内に真空ができ、それがパイプからかすかな煙を引きこむからだ。吸いと戻しは交互に行うが、ほんのわずかな動作なので(水をすすったり、キスしたりするていど)呼吸そのものの如く、自然で、規則正しく、安らかである。
 きっと喫煙者のみなさんはこの技術、あるいはそのバリエーションをそれぞれに身につけていらっしゃるだろう。これを習得すればクールで味わい深い喫煙ができるし、ゆっくり規則正しい呼吸のおかげで心は平穏に、明晰になり、たばこの最良の味わいを感じとることができる。
 ポール・ザバディ 1998/12/9
 この吸い方の要点はまず呼吸と喫煙、二つをわけることにある。呼吸は鼻から、喫煙は口で。
 昔のぼくはこれを一緒にしていた。上の文章で、吹き戻しは「ゆっくり、ほんとにゆっくり」「ボウルからかすかに一条の煙があがるていど」とあるが、呼吸で吐き出す息はかなり急速で、強いから、一緒だと吐く息ををたわめて細く、遅くしなくてはいけない。つまり、呼吸を早めたり、遅くしたり、不均等にしないといけない。その結果、呼吸が乱れ、心の平穏が破れる。
 一方、ザバディ氏の吸い方は、呼吸は鼻から自然に継続しておき、たばこは口のなかの空気量を増減することにより吸い、吹きする。呼吸はつねに一定であり、心は平常心を保てる。そこで「心は平穏に、明晰になり、最良の味わいを感じとることができる」のである。
 しかし、鼻からの呼吸、口での喫煙、二つをわけるのはむつかしそうに思える。実際はなんでもないことである。食べる、飲むという動作では呼吸のことなど忘れて自然に継続しているし、ちょっと練習する、というかコツがわかれば直ちに実行できる。ぼくも最初はむつかしいと思ったがいつのまにか自然に実践していると気づいた。
 要点の第二は吸いこむたばこの煙がごく少量ということである。「鼻から息を吸ったとき口内に真空ができ、それがパイプからかすかな煙を引きこむ」というくらいだからほんとに微量である。昔のぼくはそれどころじゃない、どッと吸い、どッと戻していた。それにつづいて、第三になるが、吸いこんだ微量の煙を口に含み、ひと休みしてから戻すということ。そこで味わうのも大事だが、同時にひと休みすることで口内を冷やす効果がある。
 それまでぼくは舌焼けと口内の荒れに悩まされたものである。これは軽い火傷で、原因は熱い煙を口のなかで動かすことにある。大量の熱い煙を早く動かせば、火傷はひどく、広域に広がる。ごく微量の煙をゆらゆら動かし、さらにいったん止めるようにすればそのあいだに熱は冷め、火傷にはならない。
 いまのぼくの吸い方はほぼザバティ氏のを元にしているが、さほど規則的でなく、おおざっぱになっている。少量の煙を口に含んだまましばらく味わっていたり、吹き戻しも短かったり長かったり、しかし、そのあいだも呼吸は乱さない。規則的にゆっくりくり返している。長くこの吸い方をしていると、呼吸のことはほとんど意識にのぼらなくなるが、けして乱れることはない。
 この吸い方を実践すると、吸い終わったとき舌焼けはなく、口内はさわやかである。また呼吸を乱してないので頭もすっきりして爽快そのもの。適度のニコチンがまわるから吸い終わるとじつにいい気分になる。

 当時のザバディ氏の投稿にはフレークたばこの独特な吸い方もあり、これが評判で一時、ASPの常連のみなさんがそれを真似たこともあるようだ。その紹介は、また、いずれ。

# by jinsenspipes | 2013-12-15 21:56